◎「蒲公英草紙 常野物語」

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)/恩田 陸
¥500
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書物や人々の記憶を自らのうちにしまいこむ能力や、

未来のことを見通す能力、

遠い場所で起きていることを知る能力など

不思議な力を持った常野一族のシリーズ二作目。


この「常野物語」のシリーズは、恐らく三作まで出ていて、

順番としては「光の帝国」、「蒲公英草紙」、「エンド・ゲーム」

だと思われます。

ですが、どの作品も独立した話になっているので、

特に順番を気にしなくても楽しめます。


実際、

「『光の帝国』、『蒲公英草紙』と読んだから

次は『エンド・ゲーム』に挑戦だー!」

と思ってネットで調べてみたら、

「あれ・・・?これ読んだことある・・・?」

なんて事が私の身に起きたりしました。

う~ん。みすてり~。

しかも更に不可思議なのが、

「エンド・ゲーム」を読んだことは確かなのに、

内容を全く覚えていない

という・・・ね。

みすてり~~~!!

はい。記憶力がヤバイだけですね。



まあ、そんなことはさておき。

この「蒲公英草紙」ですが、時は20世紀初頭、

東北の農村が舞台です。

その村には中心的存在の名家・槙村家があり、人々は

その一家を慕って暮らしています。

人々は槙村家を慕い、槙村家は人々を守り、理想的で

穏やかな農村の暮らしが営まれています。


主人公は、その村の医者の娘・峰子で、彼女が槙村家の

病弱なお嬢様・聡子様と友達になるところから話が

始まります。

生まれつき病弱で家から出ることの出来ない聡子様。

いつも一人の彼女の友達にと頼まれた峰子は、

槙村のお屋敷に出入りするようになり、色々な人と

知り合います。

病弱ながら聡明で気品のある聡子様。

聡子様の兄で、やんちゃで何かといたずらしてくる廣隆様。

お屋敷の客人達。

日本画嫌いの西洋画の絵描きや、仏を見失った仏師や、

よく分からない実験に明け暮れる先生など。

そして、ある時ふらっと訪れた不思議な一家、春田家。


様々な人と知り合い、色々な事を経験し、

峰子の少女時代が次第に終わりを迎えていくお話です。





読んだ後の感想としては・・・・・・

とても柔らかな印象の作品だと思いました。

九割位は。

残りの一割は・・・まあね。うふふ。

穏やかで優しく温かい生活。

小さな悩みはあっても幸せな毎日。

峰子の輝く少女時代が少女らしい目線で描かれています。


が。


そんな生活の裏にどうしても見え隠れする

時代の不穏な流れが。

人々の心の急激な変化が。

恐ろしい不安の予感が。


堪りませんでした。

ふっふー。


優しい物の後ろにある不安とか、

正しさの持つ怖さとか、

毎日の向こうの波乱とか、

そういったものを感じさせるからこそ、

この作品はこんなにも柔らかく切ないのだと思いました。




黒いものを隠した温かさって素敵だと思います。

うふ☆