最近読んだ漫画の感想です。

どちらも山岸涼子さんですが。



◎「黒鳥 ブラック・スワン」

黒鳥―ブラック・スワン (白泉社文庫)/山岸 凉子
¥550
Amazon.co.jp

短編集です。

この一冊には「黒鳥 ブラック・スワン」「貴船の道」

「緘黙の底」「鬼子母神」の4作品が収録されています。

どれも皆、人の悲しみや憎み、妬みといった負の感情

が、静かに重くかつ熱く描かれていて、ニヤニヤしながら

読・・失礼しました。人として失礼しました。面白かったです。


「黒鳥 ブラック・スワン」はバレエの話です。

主人公マリアは、ニューヨークのバレエ団に属するバレリ

ーナ。マリアはバレエ団を率いる天才振り付け師ミスターB

に苦手意識があった。「もう少し贅肉を落とすように」「彼女

は黒鳥(オディール)より白鳥(オデット)むきなのさ」ミスター

Bがマリアにいつも辛辣といえる程の言葉をかけるからだ。

けれどマリアは、才能のあるミスターBに次第に惹かれて

いく。

ある日、ミスターBの妻が稽古場に来て、マリアを侮辱する。

傷つくマリア。けれど後にそれは嫉妬だったのではと疑うよう

になり、また後日、彼女とミスターBの離婚を知って・・・・・・・


書いていくと全部書いてしまいそうなので、この辺で(^_^;)

嫉妬と悲しみの連鎖がたまりません。うへへへ(最低です)

そして「今ならブラック・スワンを踊れる!」と決意する

マリアのコマにはドキリとするほどの憎しみの解放を感じ

ました。良かったです。うへへ(すみません・・・)

他の作品もそれぞれ面白かったです・・・が。「鬼子母神」は

笑えない・・・・・・。とても笑えない・・・・・・・・・。(´д`lll)


◎「鬼」(潮漫画文庫  潮出版社発行)

この一冊には「鬼」「肥長比売」「着道楽」の三作品が

収録されています。


「鬼」は、民俗学を研究する、不思議を追う等々言いながら

結局旅行が目的の大学サークル「不思議圏」の7人が、

合宿に行った先で気味の悪い出来事に巻き込まれていく

話です。

山奥のお寺で子供の泣き声が聞こえたり、柵の向こうから

冷た~い風が吹いてきたりしますよ~。わくわくしますね~。

うふ・・・ふふふふ(気味悪いのはお前だ)

と、同時に並行して、天保八年の貧しい農村の話が進行

します。飢饉により人減らしの目的で深い穴に捨てられた

子供達。一人、また一人と弱り死んでいく。空腹に耐えかね

死んだ仲間の体を食べる子供達。そして最後に残った二人

は・・・。

淡々と描いてあるので最後まで読めますが、酷い状況が

いくつもいくつも・・・ああ、人間て何だ?とか絶望してみたく

なったりして・・・。人間が鬼になるのは、人間の業と人間が

人間であろうとするための優しさ?・・・ああ、もうそれが辛い。

でも、最後が少し救われる感じで良かったかも。

「許す」「許される」というのは・・・大変です。


「着道楽」は最初手法についていけなくて、「意味分からん、

これ」とか思ったりしてたんですが、最後まで読んで好きに

なりました。最後のページ怖い~!自分がそうなることを

想像すると怖い~!


あ、そうそう。

最後の方の山岸涼子インタビュー、「私にとっての『神』

とは何か?」の冒頭三行がガツンときました。


「何もしてはくれない神 

 頼ってもいけない

 侮ってもいけない」 


・・・かっこいい・・・!!

私もその境地に達してみたいものです。