需要を考える 序論3 | 芸能の世界とマネジメント

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音楽の需要なるものを定義し、その需要への対応を考えていくシリーズを試みているのですが、存外、需要と供給という経済学の基礎の話が聞きたいとの声が多く、このあたりから論じていってほしいとのそれこそ「需要」がありますので前稿から需要と供給について解説しております。前稿においては「需要が供給をよぶ」経済構造を解説しました。需要が見えているからこそ供給が可能となり、経済成長を数学的に計算し、そして立証できたがゆえにマクロ経済の成長が可能となったということができます。これは多くのマクロ経済学者は反対する意見だと思います。なぜなら、これではまるで「計画経済」だからです。計画経済が破綻してかなりの年月が流れておりますが、心理学者でもある私からすると、資本主義経済といえども、需要が見えている状況の中で物事を進めることは計画的に物事が進めることが可能であり、いわんや供給量にかんしても調整できる可能性も高く、例えば、過労の国民が多い中で甘口の日本酒の流通量を5から7へ上げる根拠は「需要」であります。これを調整といわず、なんと表現すればよいのでしょうか?

 

話がそれましたが、今回は供給が需要をよぶ経済構造を解説していく準備を行おうと思います。

 

高度成長期もおわり、その後にオイルショックや何度かの好景気と不景気を経験した後、バブル時代が到来します。まじめに働いていればマイホームに高級車が簡単に手に入る時代でありました。インターネットもこの時代から徐々に広まりを見せ、少なくとも私が小学生のころから既にインターネットは存在しておりましたが、つまり、パソコンなどの精密機器が一般家庭に入り込んできたのがこの時期であり、この頃の人たちが非常にあこがれていた「自動化」への期待が非常に高まった時期でありました。つまり、この頃になれば米や酒などの食料品の需要は減少傾向にあり、逆に減反政策などで田畑が消えていくようになっていき、代わりに建物が立っていくのをこの当時の人々は目の当たりにしていました。しかし、それが経済成長であると認識している人も多かったせいか、田畑が消えていく現象よりも高級マンションが建設されることの方に大きな関心があったように記憶しておりますし、その時のツケが現在に回てきていることはいうまでもありません。

 

何がいいたいのかというと、バブル期において人間の生活においての基盤が完成したことより、「自動化」という、日常生活にあってもなくてもよいものについて需要がシフトしたことです。食べるものがない時は生活費必需品が需要されるわけですが、全国民へ一通りのものがいきわたると次なる需要が生れ、それが「自動化」にかんするものであるわけです。その第一段階としてパソコンが代表となる精密機器であり、その需要に沿って様々な開発がすすめられたので「IT革命」と呼ばれるようになったのであります。

 

さて、IT関連のモノは需要がはっきりとしているのでマーケットは拡大したのですが、日本のマクロ経済はバブル期から成長はするものの、発展がないという非常に不安定な時期に入ります。わかりやすくいいますと、マクロ経済の成長率が鈍い状況となるのです。マクロ経済の成長は右肩上がりであるものの、その上げ幅が「小さい」わけです。これはやばいですね、皆様方。これは何を意味するかというと、端的にモノが売れなくなっていることを意味します。売れていたら上げ幅は横ばいないし上昇となりますから、IT分野以外のマーケットが大きく縮小しているから上げ幅が少なくなるわけです。

 

これは前述している生活必需品のように、ある程度マーケットに浸透するとそれ以上は望まないという人間の心の問題があります。トイレットペーパーが不足する時代にはトイレットペーパーに大きな需要がおこり、トイレットペーパーマニアでもないのにトイレットペーパーを大量購入する現象が起こります。オイルショックの時がまさにその時でした。いつでもトイレットペーパーを購入できる状況の時はどういうわけか「必要最小限」となる生活必需品でありますが、物がないときは「大量(過剰)購入」となります。面白いですね、人の心なるものは。そして、この例でもわかるよに、一度マーケットに浸透したものについて、需要を予測することは不可能であることです。この分野においてはマクロ、ミクロともに経済予測は不可能となり、それゆえに計算できるような状況へ物事を運ぼうとする経済学者が現れたり、ステルスマーケティングが行われたり、どういうわけか「予測可能」な状況を作り出そうと躍起になる経済構造へと変化させようと努力する人が増えます。これがまた心理学的には面白いのですが、それはまたシリーズを改めるとして、まずはマクロ経済が成熟するとこのような状況となることをご理解いただきたいのです。

 

しかし、世間はそのような作られた世界を「作っていこう」とする人々だけで構成されているわけではありません。非常にクリエイティブなことを行いブレイクスルーした事例もあります。それがコンビニのおにぎりであります。しかも「ツナマヨネーズ」などは衝撃的な具体事例であり、これをもとにして理解ある経済学者たちは「供給が需要をよぶ」と考えるようになりました。シュンペーター派からすると「今頃か!!」となったわけですけど、「米+ツナ+マヨネーズ」について、まさにその当時においては「新結合」でありますし、それまでは昆布と梅干が主流であったおにぎり業界では流通面も改めなければならなく、ましてやおにぎり屋さんがマヨネーズ業界に本格的に参入していくわけで、これぞ新結合、否、イノベーションであるのではないでしょうか。ただし、プロセスイノベーションの気配を排除することはできませんが、それでも私は評価するべき事例であると考えております。

 

本稿においては需要が供給をよぶ経済からその変遷を経て、供給が需要をよぶという入り口部分までを解説してきました。次回から供給が需要を呼ぶについての具体例に入っていきます。ご高覧、ありがとうございました。