余談の時間(クリステンセンと日本市場) | 芸能の世界とマネジメント

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ところで、具体策の概要はいかがでしょうか。アンソフのいう集成的多角化は考慮しておりませんので、その場合は自由にやっていただいていいのですけど、アイドルをアイドルとして売っていくには前回のようにするのがいいのでは?ということです。内容については後日に続きをやっていきます。

ところで今回は少し休憩をいれまして、アイドル市場というものを考えてみたいと思います。アイドル市場での主たる収入源はやはりCDでしょう。この時代にCDが売れるわけですからアイドル市場というのは相当な威力を持っているといえます。かといって音楽市場の全体をけん引するかというとそうではなく、全体からするとやはりCDの売れ行きは落ちているのは現状です。

ここでクリステンセンのいう破壊的イノベーションという議論からこの状況を見ていくと、面白いことがわかります。アイドルというのは団塊の世代が若かったころ、今から約50年ほど前から既に存在しております。しかしながら、今現在のようなアイドルの形態は90年代の後期からで、そう考えるとそれまでなかった市場を形成させたというのが正しい見方であると考えております。そう考えると新市場を形成し、少数の支持層を時間をかけながら大きな市場へと成長させたアイドル市場は破壊的イノベーションか?ということですけど、これは実は違います。

クリステンセンの議論では新市場を形成させたうえで、それは既存の市場を凌駕し、新しい常識を作っていくことですが、アイドル市場はアイドル市場として大きく成長し、それ以外の音楽の領域を侵食していないのが大きな特徴です。どう説明していいのか難しいところですが、たとえば、ロックンロール全盛の時代にチェッペリンがでてきて、ロックンロール市場を凌駕し、ハードロックがポピュラー音楽業界の主流となったというようなことではなく、ロックンロールはロックンロール、ハードロックはハードロックの市場を別々に形成させるという形態です。ロック市場の歴史的背景は前者の事例なのですが、どうも私が唱える完熟音楽論とクロスする部分ですが、日本の音楽市場は新しいものが出てきたとしても主流が入れ替わるといったことはなく、新しいものは新しいカテゴリーで成長と発展を遂げている可能性が高いです。ゆえに今でも演歌がここ数年でまた人気が出てきたりするなど、主流を変えて市場を育てる欧米に対し、棲み分けによって市場を「拡大」していくのが日本型であり、ゆえに全く新しいものというよりはこれまでの前例の中で、完熟音楽が熟しきった時に細胞分裂を起こすかの如く、アメーバのように分裂した結果としての「アイドル市場」というものができたとすると、日本の音楽業界においてはクリステンセンの議論は当てはならないということになりますし、また、破壊的イノベーションの命題に疑問符がついてきます。

ということで、音楽業界の皆様方、大変貴重な事例を本当にありがとうございます!と言いたいところですが、それなら新しい仮説を出せよ!!ということにもなりますので今後もLinQを通じて実践的な研究を継続します。ただし、クリステンセンの理論の全てが間違っているいっているのではありません。ローエンドに関してはLinQが既にデビューして5年経過しているので、事例そのものに無理があることがありますし、新市場に関しては新市場は事実、できていることまでは確認できますが、その市場のでき方と成長と発展の実際がクリステンセンのケースとかなり異なるということがあり、日本の音楽市場では部分的にあっているが、日本の音楽市場の実態にそぐわない部分もあり、その部分が新たなる発見の部分として今後も研究を続けていくというものです。

今回もご高覧、ありがとうございました。