戦略と行動 その 8(マトリクス解説 結語) | 芸能の世界とマネジメント

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ついにこのマトリクス解説も最後となってしまいました。最初から読んでいただいた方々、お付き合いいただき誠にありがとうございました。、これを読んだからといって得することは何一つありませんし、そもそも私の欲求を満たすだけのために行っただけですから、今回も読み流していただくことをお勧めいたします。

さて、このマトリクスの全体的な説明ですが、このマトリクスは近年において成功している企業の戦略を調べてみた結果、4つの形態に類型化されております。ですから4つのうちの一つに外れくじが隠されているということはなく、どの戦略も企業を成功へと導く意思決定の方法の一つとしてカウントできるのですが、どこに自分を配置するかについては企業の生い立ちとか、文化とか、環境などの要因によって異なってきます。LinQが破壊的イノベーション戦略で成功しているからといって、Tick tikが成功するとは限りません。ここが難しいところ。さらに、どの位置をベンチマークしているかによっても変わってくるので本当に難しいですが、その難しいところをこのマトリクスによって答えを出しやすくしよういうのが狙いです。

ところで、原文でゲイリーが述べているよいうに、ある一つの戦略だけを選択するだけではなく、戦略の組み合わせが重要であることも述べております。とりわけ、慣習的イノベーション戦略との組み合わせが重要であると述べております。例えば、私たちのバンドは新設計イノベーション戦略で進んでおりますが、常に新しいものを作り、しかし、作り上げたものを捨てて、さらに新しいものを作り続けるというのではなく、せっかく作り、ある程度の成功を収めたのであれば、それをさらに育て、発展させることも必要であると述べております。これには私も賛成で、ある程度は「育てる」ということをやっていかないと資源の枯渇につながりますので、慣習的イノベーション戦略以外の戦略で歩んでいる企業は、いったんは該当する戦略を軸とするのですが、その後は慣習的イノベーション戦略の枠に収まり、そして、そこからさらに新しいイノベーション戦略へとつなげていくというサイクルが必要となると思います。

となると、最初から慣習的イノベーション戦略を選択する企業はかなり長期にわたり慣習的イノベーション戦略の枠に収まることになるのか?ということになるのですが、これはそうならざるを得ないと考えます。例えばフランク永井先生を例にすればよくわかると思います。源流はジャズなので昭和歌謡のマーケットに参入しただけでも厳密的には慣習的イノベーション戦略ではないのですが、永井先生の場合、もともと持っている資源をそのまま使用することができたので別のイノベーション戦略から慣習的イノベーション戦略に向かったわけではなく、もともと慣習的イノベーション戦略の道を歩んだことになります。これが成功へのカギとなるのですが、しかし先生は自殺という道を最後に選んでしまいました。

ゲイリーのいうイノベーション戦略のサイクルについてはお分かりいただけたと思います。しかしながら、永井先生の例でお分かりのように、慣習的イノベーション戦略から新しい戦略で勝負しないといけないとき、人によっては「自殺」ということにもなるほどに2巡目は困難を極めることになります。「永井先生の自殺は戦略に悩んだからではない!」とおっしゃる方も大勢いるかと思われますが、私は職業柄、非常に多くの経営者の方とお会いするのですが、この戦略に関する部分で回答を出せず自殺する経営者が非常に多いことを問題視しておりまして、この点を何とかすることも私達、政府関係者の仕事の一つでもあります。このようなこともあり、永井先生の自殺については動機が語られないままですが、経営学的に永井先生の自殺を考えてみると、昭和歌謡からポップスの時代に移り変わりつつある歌の世界で、とりわけ昭和歌謡の帝王の存在が確実に薄れていく中、次なるステップに踏み出せなかった結果であろう、というのが仮説となります。

これにてゲイリーのマトリクス解説は終わります。大事なことは、何か一つ軸になる戦略を持つこと、そして、それを開発していき、また次に新しい戦略の道筋をつけることです。非常に難しいことでありますが、皆様方の参考になれば幸いです。

長い間のご高覧、深謝いたします。