小学生になった俺に、
親父はバットとグローブ、そしてミットを買ってくれた。
親父は言った。
「このグローブが、これからのお前の野球人生のパートナーになるんだ。
嬉しい時も、つらい時も、いつも一緒だ。
だいじに使えよ。」
今までのおもちゃと違って、本格的なグローブ。
革の匂いがする。
嬉しかったね。
練習の後はいつも脂で磨いてた。
雨の日で濡れた後は特に念入りにね。
そして試合の前の日なんかは、枕元に置いて、
明日の試合での活躍を想像しながら眠りについてたっけ・・・
それから何年か経った。
さすがにだいじにしていたグローブもかなりくたびれてきた。
ボロボロに磨り減ってるし、
もはや新品の革の匂いなんかじゃなくて、汗が染み込んでてかなりくさい。
体も大きくなってきたんで、指がかなり窮屈。
親父は言った。
「下手くそな奴ほど道具にこだわるんだ。
すぐに新品を買いたがる。
ホントに上手い奴はどんなバットだってホームラン出すんだ。
長い間だいじにしてきた、愛着のある道具をボロボロになるまで使って、
技を磨くんだぞ。」
とか言って、新しいのをなかなか買ってくれなかった。
なんか、自分だけ小さいグローブ使っててみっともなかった。
バットなんかも寸詰まっててみっともなかったっけ・・・
親父、
今考えると単なるケチだっただけって気もする。
だけど素直だった小さい頃の俺は、
親父の教え、真面目に聞いて育った。
ひとつのものをだいじにして使い倒すとか、
メカにこだわらずに技術を磨くとか、
そんなことを教えてくれた、ケチな親父には感謝している^^;
で、
それから時は流れて、
俺が子供に何か買い与えるときには、
一番安いやつだとさすがに、ケチったなと思われるので、
グレードの下から2番目ぐらいのを買い与えて、
「だいじに使って、ボロボロになるまで使い倒せよ」
なんて教育してる。
楽器とか、
上達のためには始めから質のいい楽器を与えた方がいいなんても聞く。
それも一理あるが、
そんなん言う先生は、おそらく高い楽器買わせるの目的半分やね。
もちろん音が狂ってたらまずいとは思う。
でもプロめざすんじゃなかったら、
安い楽器で、その楽器で最大限のいい音を出す努力ってのもありだと思う。
普段は子供にあまり口を出さない俺だけど、
いざ金がかかる場面では、すかさず割って入る^^;
学習書なんかも、
「本当にできる人は薄い学習書1冊を使い倒すんだ。」
「名を残した人って苦学した人が多いんだよ。
多くを与えられると、真実が見えなくなるってことがあるんだ。」
とか諭してる。
で、
こんなとき、やっぱり娘と息子じゃ反応が違う。
こんな教育が通用すんのは、
素直な男の子。
女の子には通用せんわ。
親父がケチってんのをすぐ見抜く。
「お父さんが一文無しになったらかわいそうだから、我慢するんだと。」
教育も、なかなか一筋縄ではいかんわい。
ほな