今の時代で、とりわけ日本に住んでいると、「人種」のことを考える機会はほとんどないかもしれません。
現在の世界では、名目上とはいえ国家と人種は対等である、というのが当たり前だからです。


初めに言いますが、私自身は人種的優越など信じていません。品位に欠けた「劣等人種」などという表現は馬鹿げていると思っています。
ナチスドイツのスラブ人やユダヤ人に対するそれも然りです。

話を戻しますが、今から三四半世紀前、第2次世界大戦の時代まで、「有色人種は先天的に劣っている」というのが一般的の見方でした。
有色人種とは、基本的には「アジア人」と「アフリカ人」と考えればいいと思います。


世界でいち早く産業革命を起こして日の沈まぬ帝国を築き上げたイギリスを筆頭賭したヨーロッパ諸国がアジア、アフリカの大半を植民地とする中で、アメリカの学者が「マニフェスト・デスティニー」というものを唱えました。



これはつまり「白人とは、世界を正しく指導するために神がつくられた人種であり、征服と支配は神の意志である」というものです。


イギリス人ウィンストン・チャーチルも「野蛮なインド人をイギリスが統治してやるのは当然だ」と話しています。

全く馬鹿げていますね。

そういった世界で、力のないアジアとアフリカの大勢の国がヨーロッパの支配下となり、第1次大戦から第2次大戦までで、征服されなかった国は10国もありません。
一世紀前までは白人こそが第一で優等人種であり、黒人含めたそれ以外の人種は劣等という見方だったのです。
これを「白人至上主義」と言います。


白人至上主義のKKK(クー・クラックス・クラン)という過激組織すら存在していました。

因みに、白人の国の中で先進的な工業力を身につけ、世界に強い影響をもたらす力のある国を、当時の言葉で「列強」と言いました。ヨーロッパのこれは「欧州列強」または「西欧列強」と言います。
その欧州列強の支配から逃れた、中国と日本を話に上げます。


まず中国ですが、厳密にいえば支配から逃れたわけではありません。
17世紀から20世紀初めまで存在した清(当時中国を支配していた満州族の国)は、列強との戦争に敗北を重ね、アジアでの影響力、存在感を急速に失います。
朝鮮をめぐって日本との戦争にも敗北した清は、20世紀初めにとうとう斃れ、紆余曲折を経て漢民族主導の「中華民国」ができました。
ですがその後も内戦は続き、欧州列強のように産業発展はできませんでした。




日清戦争の図。日本勝利の結果、世界ではこのような認識が生まれたといいます。
「アジアに君臨していた中華帝国の時代は終わり、日本がアジアの第一国家となった」



中国は併合はされませんでしたが、国土は何分割もされていました。


次に日本です。
どれほど歴史に疎い人でも、江戸時代に「ペリーが黒船で日本に来た」ということは知っていると思います。
この流れの中で、日本は欧州の強大な力を前に驚愕し「早急に力を持たねば、待っているのは国家の滅亡のみ」という結論に達しました。

長くなるので明治維新の過程は省きますが、日本は維新を成功させ、内戦にもならず、後に列強への仲間入りを果たします。
江戸時代という前近代的社会から、先進工業国へのシフトを成功させるというアジアで唯一の偉業を成し遂げたのでした。
つまりヨーロッパに侵略されていたアジアで、日本は侵略されるどころかヨーロッパと対等の力を持つことに成功したのです。


内戦の続いた中国と内戦を終わらせた日本は何が違うのか論じたいですがそれは省きます。


清を倒し、ロシア帝国すら押し返した日本の力を欧州列強が認める一方、「白人の世界支配に抗う存在」、「白人の世界支配を脅かす存在」として日本は警戒されていきました。

「黄禍論」と呼ばれたもので
「一大帝国となった日本と中国が手を組んで欧州列強に牙をむく」という危機感によるものです。もちろんこれは空論となりましたが、欧州は日本への警戒を強めることとなります。


また、一方では「白人より劣るはずの日本人が白人より優れた兵器を作れるはずがない」という何ら根拠のない論がアメリカとイギリスで支持され、反日強まるアメリカでは「日本人は先天的に脳に欠陥があり、我々の脅威足りうる兵器など作れない」という荒唐無稽なものまでありました。

それは第2次世界大戦で覆され、日本と戦いを始めたアメリカ・イギリスは、日本の航空機の性能、航空技量が世界最高水準であることを認めざるを得なくなり、「日本人は有色人種だから劣っている」という考えの過ちに気付いたと言います。
実際、開戦初期は日本の帝国海軍は連戦連勝でした。



日本の最大進出範囲。開戦当初は破竹の快進撃を見せたものの、これが限界でした。

しかしながら、日本は(中国を除けば)大戦唯一の有色人種国として奮戦しましたが、敗北しました。
ですがこの大戦によって「有色人種が劣等である」こと、「白人が神である」という2つの幻想は破られ、大戦後はアジアとアフリカでは植民地に甘んじていた国々が続々独立を果たしていくこととなりました。(この辺の詳細はそのうちに)

SFの作家として有名なHGウェルズは

「この大戦は植民地主義に終止符を打ち、白人と有色人種との平等をもたらし、世界連邦の礎石をおいた」

と述べ、更にアメリカの公民権運動指導者W・E・B・デュボイスは

「有色人種が先天的に劣っているという誤解を日本が打破してくれた。
日本が有色人種を白色人種の奴隷から救ってくれるので、有色人種は日本を指導者として従い我々の夢を実現しなければならない」


と話しています。
もちろん植民地の国々が独立したのは日本のお陰ではなく、現地人自らの力によるものですが、日本の戦いによって、白人の植民地帝国が劇的に衰退したことは紛れもない事実です。
我々日本は敗北したが、この敗北は決して無駄ではなかったし、また今を生きる我々自身も大戦の意味を考え直さなくてはなりません。