化学療法と不妊の問題
入院して、病気が確定して、
治療方針が決まると、
インフォームドコンセント(IC)というものがある
”これからどんな治療をするのか”
”どういったスケジュールでやるのか”
”なぜこの治療が必要なのか”
”治療による効果 と副作用 は”などなど…
もちろん私もばっちり受けた
そこでもろもろの説明の後に出た話…
「妊孕性(にんようせい)」
つまり「妊娠のしやすさ」の問題
白血病のような血液疾患では、
(がん患者さんも もちろん)
治療に化学療法(抗がん剤治療など)や
放射線療法が必要となる。
白血病細胞をやっつけるには、抗がん剤治療が必要。
骨髄移植などをするには、移植の前段階として、
大量の抗がん剤や全身への放射線照射が行われる。
(移植する造血幹細胞とケンカしないように、
移植前に自分の骨髄を破壊する必要があるため)
抗がん剤は種類によって、
(種類によってはリスクのないものも もちろんある)
全身放射線照射は特に強く、
性腺(男性では精巣、女性では卵巣)に
影響が出てしまう
精巣への影響としては、造精障害が、
卵巣への影響としては、無月経が起りうる。
もう少しいうと、
女性の場合、”無月経=排卵がない”ということだけれど、
”月経があっても、排卵されていない”ということがあり得る。
この対策の一つとして、
「配偶子凍結保存(はいぐうしとうけつほぞん)」がある
治療の影響を受ける前に、
精子や卵子を採取して、保存しておく方法だ
(精巣や卵巣の組織を取り出して保存する方法もあるけれど、
まだ一般的ではないそう…)
現在、最も多く行われているのが、
「精子凍結保存」と、
「胚(はい)凍結保存」
まだ一般的ではないけれど、
これから広がっていくであろうのが、
「卵子凍結保存」
”胚”とは”受精卵”のことで、
あらかじめ受精させた状態で凍結保存をする
なので、あらかじめパートナーがいることが第一条件
他の2つも、保存をするには適応があって、
その条件を満たさなければ、行うことはできない
安易にできるものではないので、
この保存に関しても、
事前に十分なICを受ける必要がある
私もしっかりと説明を受けて、
「卵子凍結保存」をしてもらうことにした
時間に余裕のある場合は、
事前にホルモン検査を受けて、
月経や排卵のタイミングに合わせて、
1ヵ月~1か月半ほどかけて、
準備・採卵を行う
1度にたくさんの卵子を採卵するため、
排卵誘発のための筋肉注射を毎日受けて、
卵胞(卵子の育つ袋のようなもの)を、
婦人科のエコーで定期的にチェックして、
卵胞が十分に成熟したら、
排卵日に合わせて、排卵を促す注射をして、
ようやく採卵だ
ただし、私の病気のように、
治療を急ぐ場合は、もちろん治療が優先
化学療法なりの治療が、ひと段落したところで、
タイミングを合わせて採卵を行うこととなる。
あとは、採卵の合併症の問題もある。
私のALLで最も問題になる合併症が、
「出血」と「感染症」だ
(血小板減少、白血球減少、赤血球減少)
あとは、排卵誘発によって起こりうる、
「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」
(これは、排卵誘発で卵巣が必要以上に刺激されて、
膨れ上がってしまった状態)
(腹水や血栓が問題になる)
私は、もちろん即入院・治療開始だったのだけれど、
本格的な化学療法を開始する前に、
1週間、ステイロイドの投与が行われた。
その間に、婦人科の先生から説明を受けて、
運の良いことに
ちょうど排卵の近いタイミングだったので、
卵子保存を即決
(もちろん計画的ではないので、
この時点で採卵できる確率は10%ほどと言われた)
(でも、やらずに後悔するのは絶対にイヤなので…)
その日から、排卵誘発の筋肉注射を開始
(ホルモン検査は時間がないからスキップ)
またまた運の良いことに、
ステロイドの効きが良く、
かなり状態が落ち着いていたので、
化学療法の開始を1日遅らせてもらえ、
(それでも、まだ卵胞の成熟は完全ではなく、
採卵できない可能性もあるとのことだった)
本当にありがたいことに、
ばっちり採卵をすることができて、
卵子を凍結保存することができた
もちろん、現時点で合併症もなし
(採卵前に、予防的に抗生剤の点滴と、輸血をした)
ただ卵子を保存できただけだし、
現在、凍結卵子から妊娠・出産に至った例は、
数えるほどしかいないらしいけれど、
(そもそもの症例数が少ないため)
それでも、何だか心の支えになる
初めに、妊孕性について話が出たときは、
「まぁ、そうか。」
「子供ができないなら、それはそれで仕方ないかな…」
なんて、それほど気にしていないつもりだったけれど、
実際に、凍結保存についてのICを受けた後、
いざ、”採卵できる”となったとき、
そして、”無事採卵できた”と聞いたとき、
涙が自然に溢れてきて、止まらなかった
病気を告知されたことよりも、
赤ちゃんが産めなくなるかもしれない事の方が
心のダメージは大きかったのかもしれない…
今日は、経過のチェックと一緒に、
採れた卵子たちの写真ももらえた
まるまると、可愛い卵ちゃんたちだった
(不気味がられるので、もちろん人には見せない)
(ひとりで時々見てはニヤニヤしたいと思う)
”妊孕性”、”不妊”は特に女性にとって、
とても重要な問題だ
もし万が一、そんな立場になってしまった時は、
しっかり正しい情報を集めて、
正しい判断ができるように、
病院側も、正しい情報提供で、
正しい判断をサポートできるように、
が大切なんだと、心から感じた
私は本当に恵まれている…
(もしや、ドクターイエローの効果)