この物語はフィクションです!
『殺す』などの過激な言葉、
グロテスクな内容やショッキングな内容が
たくさん含まれてるかもです!
やっぱり『裏側』ってのが存在する。
処刑人達や暗殺一家などが蔓延る…
ま、要するに割と死と共同生活している世界だな。
なんでいきなりそんなことを言い出したって?
そうだな…そこから明確にしようか。
俺は黒百合 雛乃(くろゆり ひなの)。
『黒百合一族』と呼ばれる殺人鬼一族の1人だ。
殺人鬼としてはまだまだ経験値が足りないが、
殺しの技術なら一族の1位2位を争うと自負出来る。
これは『黒百合一族』がメインの話なんだ。
恐らくこれを見ている人はいないだろうけど、
俺の住んでいる世界がどんな世界なのか、
わからない人のためにも
しっかり明記しようと思ってさ。
ほら、俺ってば超親切な殺人鬼だから。
読み手なんかいないはずなのに、
ちゃんと読み手を考慮してるかんな。
そして、明記したのは俺の為でもある。
現実を受け入れるために、言い聞かせておくんだ。
義妹の死を受け入れるために。
だからガラでもないのに、文字を綴っている。
ほんと、こんな姿を兄貴や義妹が見たらどう思うか。
きっと茶化されるんだろう。
『らしくない』って笑うんだろう。
それでも、
俺達の義妹で
俺が生まれて初めて愛した女の子を……、
黒百合 煉屠(れんと)が生きた証を
少しでも残そうと思ったんだ。
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『黒百合一族』は『一族』なんて呼ばれているが、
実際は血の繋がりはほとんどない。
『黒百合一族』という集団は
殺人鬼としての『才能』…
否、『性質』を持った人間が
なんとなく集まって集団化しているだけ。
そして、なんとなく『兄』や『妹』などと
慕ったり、可愛がったりしているだけだ。
しかし俺は『ほとんど』に含まれない人間だそうだ。
黒百合と黒百合の間に生まれたらしい。
『~だそうだ』、『~らしい』、というのは
俺だって両親に聞いたことないし、
そもそも物心ついた時にはすでに
両親は失踪していて会ったことがない。
さらにその頃には、
こちら側の世界に足を踏み入れていたし、
生まれも育ちも殺人鬼な俺は、
殺し以外に興味が無い。
つまり自分の生い立ちとか全く興味が無くて、
どうでもいいと思っていた。
ちなみに当時の俺は
『兄貴』と慕っている内の1人である
黒百合 柚流(ゆずる)を殺そうと
日々努力していた幼気な少年だった。
(そう、誰がなんと言おうと俺は幼気な少年だったぜ、うん。)
さて、そんな俺が煉屠に初めて会ったのは
今から大体10年前くらいのことだ。
当時の俺は小学3年生。
兄貴達のおかげで義務教育を受けられている時だ。
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いつも通り俺が学校から帰ったら、なんかいた。
なんかいた。
テーブルの上に置き手紙がある。
『可愛い子見つけたから
連れてきたよー。
私は用事があるから出かけるねー。
その子のことヨロシク☆
by 柚流お兄ちゃん
P.S.おやつは冷蔵庫にあるよー。』
おいおい兄貴、ロリコンもいい加減にしろよ…。
誘拐は立派な犯罪だぞ…。
なんて殺人鬼に言うのはおかしいか。
だけど、同い年くらいの彼女の身なりを見ると
ただの女の子を拾ってきた訳ではないようだ。
全体的にボロボロだ。
身体もそうだけど、心の部分も全部。
衰弱しているらしく、
俺を警戒してるのか殺気が含んだ目で
睨めつけることしかしていない。
逃げることも、襲うこともしない。
そんな彼女の殺気を肌で感じて
『なんだ、コイツも黒百合なのか』なんて思った。
根拠なんてない、直感だ。
同族くらいなんとなくわかる。
「…お前、何?
殺気すら隠せてない上に、
衰弱した状態で俺に喧嘩売るなんていい度胸じゃん。」
挑発するように言った。
特に理由はない。
もし、強いて言うなら、
『そうした方が反応してくれそうだったから』
っていうのが、一番しっくりするだろう。
案の定(挑発しなくても答えてくれただろうが)、
彼女は掠れた細い声でぽつりと言った。
「…そんなの、私が一番知りたい。」
そう言って彼女は俯いた。
もう、殺気も感じられない。
俺はてっきり、
名乗ってくれたりしてくれるのだと思っていたから、
酷く拍子抜けした。
そして同時にちょっと好奇心が出てきた。
「名前は?」
「知らない。」
「記憶が無いって訳じゃねえの?」
「記憶はある。
だからたぶん名前は元から無いと思う。」
「親に付けてもらってないのか?」
「少なくとも呼ばれた記憶は無い。」
「じゃあ、なんて呼ばれてたんだよ。」
「主に『お前』『これ』『あれ』『それ』。
あとは『忌み子』とか『人形』とか。
他にも、いっぱい。」
「それを親に呼ばれていたのか?」
「親とか先生とかクラスメイトから。」
「んー、虐待とかいじめってやつか?」
「知らない、どうでもいい。」
身体の生傷とか傷痕とか痣とかから察するに、
なかなかにハードな人生を送っていたみたいだ。
そして兄貴は
『保護』という名の『誘拐』をして来たんだな
という事も察した。
うん。
俺ってば、なんて察しのいい義弟なんだろうな!
「しかし、名前が無いって不便だな。
呼ぼうにも呼べないだろ?」
「……どうでもいい。」
彼女は吐き捨てるように言った。
その顔は心の底から思っているのだと
わかるくらいに歪んだように見えた。
まあ、彼女は終始無表情だから、
多分目の錯覚だったんだろうけど。
「そんなこと言うなよ。
お前は黒百合に来たばっかりみたいだからな。
黒百合の名前もまだ無いんだろ?」
「ない、けど…」
「じゃあ、付けなきゃなー。」
…とは言ったものの、
名前なんて早々思いつくものじゃない。
そして、なんで俺はこんなに張り切ってんだ。
ただなんとなく、
コイツに興味があるってレベルじゃない。
まあいい、俺はやると言ったらやる男だ。
考える時間が欲しいな…。
「んー…それじゃ、まずお前は風呂入ってこい。
傷口とか痛いだろうけど、
そのままだと化膿するだろ?
入っている間に決めるからさ。」
「え」
「なんだ?
もしかして、風呂に入った事ない?
虐待されてたんなら有り得ない話じゃないし…。」
「………大丈夫だと思う。」
「そうか。
着替え、出しておくからな。
背格好ほとんど変わらないだろうし、
俺の服で十分だろ。」
脱衣場と風呂場を案内して、
兄貴が畳んでくれたであろう俺の服と
その辺にあったタオルを渡した。
…しかし、小腹が減った。
時計を見ると午後3時、おやつの時間か。
考え事は甘い物を食べながらするのが、いい。
何より甘い物が食べられるのが一番いい。
今日のおやつは…プリンか。
さっすが、兄貴はわかってらっしゃる。
…そういえば、アイツは何か食べたのか?
聞いておけばよかった。
ま、俺の半分くらいは残してやるか。
プリンなら消化しやすいだろうし、多分。
さて、名前なあ…。
*************************
アイツの名前をようやく決めた時、
タイミングよくアイツが風呂からあがった。
ドライヤーで髪を乾かして梳かしてやる。
かなり伸びきっているから
後で兄貴にでも切って貰った方がいいな。
とりあえず邪魔そうだから
高めのポニーテールに結っておこう。
…我ながら上出来。
「…で、名前の事なんだがな。
『れんと』ってのはどうだ?」
「……『れんと』」
「そう、『れんと』。
かっこいいだろ?
ま、漢字は兄貴にでも考えてもらえ」
「…………なんで?」
「ん?」
「なんで……そんなに良くしてくれるの?
意味がわからない…。」
…疑心暗鬼とかいうやつか?
多分、今まで良くしてもらった事がないから、
困惑してるんだろうな。
…なんで、か。
なんでなんだろうな。
理由を上げるとしたら一つだけ。
「家族だから、だろ。」
「…か、ぞく?」
「ああ。
お前は黒百合なんだろ?
殺人鬼としての性質を持っているからな。」
「………」
「黒百合は、家族を大切にする。
家族のために何かするのが黒百合だ。」
「家族を…大切に……」
「別にこの『家族』ってのは何も実の親とか
黒百合一族だけを指している訳じゃない。
例え一方的だとしても、
自分が家族だと言える奴らを指しているんだぜ。
ま、逆に家族だと思ってなければ、
そいつは自分にとって家族じゃないんだがな。」
「…よく、わかんないな」
「ま、そんなもんだ。
俺だってよくわかんねぇし。」
多分、黒百合じゃなくても
家族ってそういうものなんだろうと思う。
でも、あえて言おう。
これは殺戮以外に興味の無いはずの
『黒百合一族』の特性だ。
「ま、とにかく。
俺はれんとを家族と思ってるぜ?」
俺が食べて半分になった
おやつのプリンをれんとにあげる。
「言っとくが、
俺が甘い物を誰かにあげるって相当だかんな?
存分に味わって食べろよ?」
「…………あ、りがと」
れんとはまだ優しくされることに
困惑してるっぽいな…。
ま、俺自身もれんとに優しくしてる事に
酷く困惑してるが。
柚流兄貴が帰ってくるまであと5分。
この事で兄貴に散々茶化されることになろうとは、
この時の俺は思ってなかった。
つづく…