日本人観光客離れ、旅行しなくなった理由

 「最近、日本人を見かけない」観光地から聞こえる声の理由とは?

 

かつては国内外を問わず、観光地をにぎわせていた日本人観光客。 しかし、近年その姿が少しずつ消えつつあるという声が、全国各地の観光関係者から聞かれるようになっています。

「最近は外国人ばかり」「昔はこの時期、日本人団体が多かったのに」 こうしたつぶやきが、観光地の空気感を象徴しているようにも思えます。

コロナ禍を経て、国内旅行・海外旅行ともに需要は徐々に回復傾向にあります。 しかし、その一方で浮き彫りになってきたのが、“日本人観光客離れ”という新たな課題です。

なぜ、今、日本人が旅行に行かなくなっているのか? 背景にある経済事情、価値観の変化、そして観光業界の現状を詳しくひもといていきましょう。

 

 

 

 日本人観光客が減っている背景とは?

 

 

 

観光庁の発表によれば、コロナ前の2019年には延べ5億人以上が国内旅行を楽しんでいました。 しかし2020年以降は感染拡大の影響で大幅に落ち込み、2021年には3億人を割る水準に。2023年になってようやく回復の兆しが見えてきたものの、完全な回復には至っていません。

一方、インバウンド(訪日外国人観光客)は円安と規制緩和を追い風に急回復中。2024年の第一四半期には、すでに2019年比で90%以上の回復を見せています。

国内では「観光地はにぎわっているように見える」のに、実際には“日本人の姿が減っている”という不思議な現象が起きているのです。

さらに注目すべきは、若年層の旅行離れです。 特に20~30代では「旅行は高すぎる」「休みが取れない」「SNSで満足してしまう」などの理由で、旅行の優先順位が下がっているという調査結果も。

娯楽や趣味が多様化し、旅行が“コスパの悪い贅沢”と認識されるようになっているのも要因のひとつです。

 

 

 

 「旅行は贅沢品」になった?リアルな声と観光地の変化

 

 

 

X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSでは、「旅行はしたいけど高すぎる」「2泊3日で5万円とか無理」といった投稿が目立ちます。

燃料費や物価の上昇、宿泊料金の値上がりが重なり、「以前よりも気軽に旅行できない」と感じる人が増えているのが現状です。

実際に各地の観光地でも、日本人観光客向けのサービスが縮小され、外国人観光客向けの案内や多言語対応が強化される場面が増えてきました。

例えば、老舗旅館が英語メニューを前面に打ち出す、観光ガイドの案内が中国語・韓国語中心になる、などの変化が見られます。

 

 

 

 都道府県別データが示す“地域格差”

 

 

 

観光庁の統計によれば、東京都・大阪府・京都府などインバウンド比率の高い都市部では、観光客数がほぼコロナ前の水準まで戻っています。

一方、東北・北陸・四国など、外国人が少なく、日本人に頼っていた地域ほど回復が鈍い傾向にあります。

このことからも、日本人観光客の動向が観光業界に与える影響の大きさがうかがえます。

 

 

 

 観光業界が打ち出す対策と模索

 

 

 

観光業界では、「価格設定の見直し」「宿泊プランの再設計」「SNSとの連動プロモーション」など、さまざまな対応策が試みられています。

特に注目されているのが、“地元再発見”をテーマにしたツアーや、地元民向けの割引キャンペーンなどです。

また、LCC(格安航空会社)の普及と円安の影響もあり、近場の海外(韓国・台湾・タイなど)への旅行が割安に感じられ、日本人の一部はそちらに流れているという動きも見逃せません。

 

 

 

 アンケートから見る「旅行しない理由」と新しいニーズ

 

 

 

大手旅行会社が行った調査では、「今はお金がかかるから旅行は控えている」という回答が最も多く、次いで「コロナの後遺症で外出が不安」「忙しくて時間がない」が続きます。

一方で、「いつかは行きたい」「行くなら非日常を味わえる体験がしたい」といった希望も多く、決して旅行そのものを諦めているわけではないことが分かります。

つまり、これからの観光業界には「行きたくなる理由づくり」がより一層求められているのです。

 

 

 

 コロナ明けの“旅行欲”はどこへ?

 

 

 

かつて「コロナが明けたら、旅行に行きたい」と話していた人々。 その多くが、現実の物価やライフスタイルの変化に直面し、旅行を後回しにするようになっています。

それでも一部の旅行会社や自治体は、若者向けの「カジュアル旅プラン」や、ファミリー層向けの「1泊でも満足できる充実旅」など、新しいサービスを次々と打ち出しています。

「近場でも旅気分」「交通費より“体験”重視」など、価値観の変化に合わせた提案がカギとなる時代です。

 

 

 

 観光地に人は戻っているが、それは日本人ではない

 

 

 

今、観光地ににぎわいが戻りつつあるのは間違いありません。 ただし、その主役はもはや“日本人”ではなく、“外国人”へとシフトしています。

旅行の価格、内容、そして得られる体験——その全てを再設計しなければ、これからの時代、日本人観光客を呼び戻すことは難しいでしょう。

物理的な距離よりも「心の距離」が旅を遠ざけているのなら、そこにこそ解決の糸口があるのかもしれません。

これからの旅行は、“行きたくなる理由”が明確に必要な時代。 観光業界全体が、次の一手を考えるときが来ています。