あの星に帰りたい

あの星に帰りたい

フリーエイリアンとして、地球の日本国内に生息する在日異星人の研究観察をしています。

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今日は夕方のデパ地下でエイリアンを見かけた。
白髪混じりの短髪、ヨレヨレのパーカー、ジーンズ姿の中年男性。

調査のためしばらく尾行する。
彼はフロア中の試食品を片っ端からつまみ歩き、何も購入するそぶりもなくモグモグ。
すでに小さなビニール袋を下げていた。形状から察するに、おそらくタイムセールのいなり寿司。
それから30分後、彼は腹を満たしたらしく、何も購入しないままデパートを後にした。

ドギー。彼らの特徴を地球の生物に例えると、犬に一番近い。
私たちは仮に「ドギー」と呼んでいる。

ドギーは太古の昔から地球に住み着いているエイリアンだ。
猿人が現れた頃から地球に移住し、多くの遺伝子を原種のヒトに提供してきた。
生命力が強く、歴史上の人物として地球名を広く知られている者も多い。

彼らの一番の特徴は「自らの欲望に忠実」であること。
基本的に理性の働きが弱く、食欲や性欲、物欲、睡眠欲を我慢する能力が低い。
そのため、一般的に知性が劣っているように見られるが、とんでもない。
生物としての本能に忠実だからこそ、数多く生き残っているのだ。

遠慮がちな遺伝子は、この宇宙では勝ち残れない。
ドギーたちは、エイリアンの中でも優秀な種族といっていい。

日本で彼らに会いたければ「パチンコ店」か「食べ放題の店」に行けばよい。
店内の6割がドギーと思って間違いない。

目の前の物を我慢できない彼らは、その特徴から集団の中でしばしば敬遠されがちだ。

同席している相手にかかわらず、出された料理や飲み物を遠慮なくどんどん平らげてしまう。
妻が隠していたオヤツを見つけた記憶があれば、その引き出しを毎日確認する。
子供の分だろうと客の分だろうとおかまいなし。
過去に食べた美味しいものの記憶が鮮明に残るので、同じものを繰り返し買ってくる。
一度でもご馳走してくれた人間には用がなくても付いて行く。
満員電車で、魅力的な女性の体が密着していると、つい触れてしまう。

彼らに悪気はない。
ドギーにとって、己の欲望を満たすことが何より大切なのだ。

昨今「草食男子」と呼ばれるヒトが急増しているが、それにともないドギーたちがじわじわと増殖しつつある。
人類史上、幾度も繰り返されてきた言わばお約束の現象。
文明の発達とともに、生活が便利になり、知性が向上するとヒトは本能より理性優位な「草食系」になる。
欲望の希薄な種族の衰退とともに、繁殖力の強いドギーが勢力を拡大する。

数百年後には、地球上にドギーの子孫のみが残る仕組みだ。

ヒトという器を借りて生き残る最強エイリアンの遺伝子は、今ごろ近所の公園で安いいなり寿司を貪っている。