ご無沙汰しております。
今回は個人的に好きな戦前の歌について。
高校時代、日本史の授業で先生が日独伊防共協定を称賛する歌を歌ってくれました。
家の倉庫に蓄音機とその歌のレコードがあったらしく、先生は興味津々にそのレコードを聴いて覚えたんだそうです。
私は授業中その歌詞をノートの隅にメモし、インターネットで調べたのですが全く出てきませんでした。
ありそうなキーワードで調べるうちに「歴史的音源ライブラリ」の存在を知り、そこにデータとして載っていた「日独伊防共の歌」である可能性に賭けてみました。
歴史的音源ライブラリとは、昔の貴重なSPレコードの音源をデータ化し公開してくれている画期的なものです。
配信提供に参加する全国の図書館と国会図書館のみでアクセスすることができます。
http://rekion.dl.ndl.go.jp/
偶然にも今住んでいる近所の図書館がその参加施設でした。
興奮気味に図書館に駆け付け、ライブラリ利用の受付をしてもらいました。
普段その音源を利用する人がいないのか、職員さんに変な顔をされましたが気にせず「日独伊防共の歌」を聴いてみることに。
見事、それは先生が授業中に歌っていたあの歌でした!
感動しながら聴くも、軍国主義的な言葉遣いの知識に乏しく、全ての歌詞を聴き取ることはできませんでした。
先生の家にあったレコードは母親に捨てられてしまったそうで、もはや日本に現存するのはビクターが所蔵してる物のみなのではとさえ思えてきました。
先生のお母さま、なんてもったいないことを・・・
歴史的音源ライブラリはSPレコードの音源であっても、高音質で聴くことができます。
動画サイトに上がっている粗悪な音源の曲も、ここで参照すればしっかり歌詞も聴き取れるので、古い曲をお探しの場合はおすすめです。
さてほとんど情報がない「日独伊防共の歌」について。
作詞:佐伯孝夫 作曲:橋本國彦 編曲:岡村雅雄
歌唱:久富 吉晴・日本ビクター男声合唱団
伴奏:日本ビクター管弦楽団
レーベル:ビクター
出版:1937年
日独伊防共協定調印を記念した歌のようです。
作詞の佐伯孝夫さんは恐らく、ビクターレコード専属作詞家で「有楽町で逢いましょう」「いつでも夢を」「銀座カンカン娘」などを作詞されている、その方で間違いないと思われます。
当時は戦争色の強い曲の作詞もさせられていたんだなぁ…と。
佐伯孝夫・橋本國彦ペアの歌謡曲としてはかの有名な「チェリオ!」があります。
橋本國彦さん作曲の唱歌「スキーの歌」は私の音楽の教科書にも載っていたような。
詞・曲・歌ともになかなかの面々がお揃いです。
ですが政治色が強いせいかほとんど情報が残っていません。
今の認識から言えば賞賛できない曲のため表出って取り上げられないのでしょうが、政治的理由で音楽が忘れ去られてしまうのは寂しいですね。
この曲、軍歌っぽいといえばそうなのですが、なかなかキャッチ―なメロディです。
(授業中に一度聞いただけで覚えられたくらいなので)
辛うじて聴き取った歌詞は著作権の関係上、部分引用で考察
「見よ 防共の旗は強くなびき」
防共協定を示す旗があったのか、それとも日独伊の国旗がなびく様なのか…
詳しい方がいたら教えてください。
「くろがねの○○ 固く組まれたり(?)」
くろがねの…と来ればこの言葉!みたいな知識があれば予想しながら聴き取ることもできるかもしれません。○○の部分は「海路」「櫂は」とも聞こえます。
全体として、
東京・ベルリン・ローマを結ぶ防共協定で正義は栄え、希望と緑の理想郷が生まれる
といったことが歌われています。
希望と緑の理想郷・・・今振り返ればなんとも皮肉な。
それでは今回はこのへんで。
追記:
この記事を読んでくださった方がツイッターでご指摘をくださいました。
「くろがねの〇〇 固く組まれたり」
この〇〇は「かいな(腕)」ではないか、とのことでした。
前後の文脈からしても、ご指摘の通り「かいな」で間違いないように思われます。
貴重なご意見に感謝いたします。
