双極性II型障害の治療目標は、波の上下の振り幅を小さくし、維持することです。
図を見て解る通り、下からの持ち上げが大変です。
またラピッドサイクラーの方は、速い波を、穏やかな波へとスピードを緩めることも治療目標になります。
みなさんご存知だと思いますが、波は消えません。健康な人でも波はありますしね。状況に反応して気分が変動するのは当たり前です。そして長い人生において、一定した状況は続かないものです。必ず気分の波は残ります。
双極性障害の方のブログを拝見していると、よく「フラット」という言葉を見かけますが、おそらく下記の図の、中心辺りをフラットと呼んでいるのだと思います。
波の中の一部ですよね。
生きている限り、フラット(平坦)が永遠に続くことはないと思います。長い目で見ると、波の中の一部に過ぎません。
ただ双極性障害の場合は、社会生活に支障をきたす程の大きな波ですが、目指すのは社会生活を無理なく送れる、穏やかな波です。
もうひとつ書いておきたい事があります。
双極性障害の治療について「低めの安定を目指しましょう」という言葉を見かけますが、それは志しが低いというか、ヤブ医者の言い訳だと思います。
軽躁状態を本来の自分の姿で、それが普通だと信じて疑わない人に対して、「低めの安定を目指しましょう」と言うのは仕方ないかもしれません。しかし本来は彼等にきちんと心理教育をし、それは軽躁状態だという自覚を持たせるべきです。ただ中には学習しない人もいるかもしれないので、そこは目を瞑ります。
しかし躁転させたくない余り、安全策としてそのように指導し、実際患者に軽いうつ状態を抱えたまま一生を過ごせというのは、あまりにも酷な話です。
やはり目指すのは、ちょうどいいレベルでの安定です。健康な人に比べると多少の行動制限はあれど、社会生活を苦痛に感じることなく過ごせるレベルの気分です。
楽しいことを楽しいと感じられる、辛いことがあれば落ち込む。けれど時間経過と共に自然回復する、そういった人間本来が持ち合わせている心の動きに近づいていくことが目標です。