では『軽躁』とはどんなものでしょう?
DSM-5の診断基準を、簡単な日本語に変換して(笑)、書いてみましょうか。
A
- 超・高揚した気分。
- 超・開放的な気分。
- 超・イライラした気分。
- 超・活動的でやる気満々。
…などの気分が日がな一日、4日以上連続でつづく。
B
Aの時に、下記の症状が3個(イライラだけの時は4個)、あきらかに当てはまる。
- 自分がとても偉く感じる。
- 寝なくても平気。全然眠くない。
- おしゃべりが止まらない。
- 色々な考えが高速で駆け巡る。
- 色んなことに気が散り、ひとつのことに集中できない。
- 意識高い系の活動を始めたり、やらなくてはと焦ってしまう。
- 普段なら後で後悔するとわかっている快楽行為でも、衝動がおさえられず熱中してしまう。(無駄使い、分別のない性行為、無謀な投資など)
C
その行動は、全くその人らしくない。あきらかに普段と違う。
D
他人からみても、いつもと違うことがわかる。
E
仕事などの社会生活を続けられ、入院する程ではない。
A〜E全ての項目があてはまると軽躁だそうです。
私も色々と思い当たる節があります。
でも一番のポイントは、最後の「仕事を続けられ、入院をする程ではない。」というところではないでしょうか。
いつもより気分が高揚し、その人らしかぬ思考や言動があったとしても、社会生活を送れる程度にはまとまっているので、余程の綻びが出ない限り「最近、調子いいね!」と周囲も本人も思ってしまうことが多いのです。
それが、軽躁は本人も気づかないと言われる理由です。
実際、私も軽躁状態の時は、仕事がはかどり、良いアイデアが次々と浮かび、作業効率を上げる提案をし、採用され、社内の賞を頂いたこともあるのです。
もちろん、散財したり、自尊心の肥大により対人関係のトラブルを巻き起こしたりと、悪い面もありますが、場合によっては良い結果をもたらすこともあるのです。
では、軽躁の何が問題か。
それは軽躁とセットになって次にやってくる、うつの波です。
双極性II型障害は、『軽躁』と『うつ』という2つの極の間を行ったり来たりする精神疾患です。軽躁の後には必ず『うつ』がやってきます。これは避けられません。しかも軽躁の波が高ければ高い程、落ちる深さがより深くなってしまうのです。
もしもの話ですが、もしうつ状態がない、軽躁だけの人が居たとします。
こんな感じの人。
この人はきっと精神科を受診することはないでしょう。軽躁状態がその人の普段の姿ですから、それすら問題になりません。もしかしたら、周囲の人は少し迷惑と感じるかもしれませんが、いつも元気な人として生きていくでしょう。もしくは成功者として名を馳せているかもしれません。
やはり問題は、浮き沈みのある『波』なのです。