不確かさの中を 〜私の心理療法を求めて〜
というタイトルの本を読みました。
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不確かさの中を 私の心理療法を求めて
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久しぶりに心理系の本を読んだよ。
この本は読後感がとてもよくて、読んでよかったなぁという気分になったよ。
精神科医の神田橋條治先生と、臨床心理士の滝口俊子先生の対談をまとめた本なんだけど、2人の間に流れる空気感が、穏やかで優しく自然体で、それが読者側に伝わってきたのかなと思った。
2人の生い立ちから、精神分析を目指したきっかけ、学会紛争などの過去の話しから、現在に至までの経緯やその時の心情、臨床や教育をする立場からみたお互いの見解など。精神分析を中心とした対談内容だった。
その中でも私が面白いなと思ったのは、神田橋先生の特殊な生い立ち。時代背景とか地域性とかあるんだけど、私にとってはとても不思議な生い立ちに感じた。興味がある方は、本を読んで確かめて欲しいな。
あとは、お二人が語る天才の話しも面白かった。
滝口先生が語る河合隼雄先生の話は読んでいるだけで、心が癒される。対面している人を包み込む河合先生の優しさが伝わってくる。また久しぶりに河合先生の本が読みたくなっちゃった。
それから神田橋先生が語る中井久夫先生の話。
私から見れば、神田橋先生はかなりの天才なんだけど、そんな神田橋先生からみた中井先生はさらに天才らしい。そのエピソードも面白かった。
それから最後に。
私が常々思っていることを、神田橋先生がとても上手い表現をされていたので少し引用させて頂くことに。
治療して、母親への恨みが消えるというのは、これは本当は過去の恨みが消えるのではないのよね。現在が変わることによって、恨みとは違うありがたさの部分が、記憶の中から呼び覚まされてきて、そして、恨みもあったけれど、ありがたいときもあったというふうに、過去がかわるんだよ。過去の見え方がね。だから現在によって変わるわけ。また未来にどのような目標を立てるかによって現在の生き方が変わってくるから、未来によって現在が変わる。
メンタルヘルス系のブログを読ませてもらっていると「アダルトチルドレン」という言葉をよくみかけるのね。
もちろん、その人が機能不全家族で育ったり、過去に辛い出来事を経験したのは間違いないと思う。それが心の傷や考え方の基礎になってしまっているんだろうと思う。
でもね、そうやって過去を恨んでいる人も、今が幸せになれば、恨んでいた過去への解釈が変わるんだ。だから過去に囚われていないで、今を精一杯生きてほしいなって思ってるんだ。
もちろんみんな頑張って生きているのはわかってるし、それでも上手くいかなくて四苦八苦しているのもわかる。私もそうだったから。でも、もがきながらも、幸せを感じられるよに、色々と経験を重ねて欲しい。失敗しても大丈夫。またやり直せばいい。疲れたら休めばいい。必要なら薬の力を借りればいい。それでもまた元気が出てきたら前向きに行動を起こして欲しい。
あなたが今、どう行動するかで未来は変わるから。そしてそれによって過去も変わるから。
どうか過去じゃなくて、今を、そして幸せな未来を生きて欲しい。
この本を読んで私は自分の中にある、そういう想いを伝えたくなったんだ。とてもいい本だったよ。