昇華箱

昇華箱

心の昇華箱

中学で憧れだったバレー部へ入った

なぜバレーがよかったのかは

明確には覚えていない

多分カッコいいとか

そういう漠然としたイメージがあったんだと思う

 

わたしの中学は特別強いわけではなく

普通もしくは

普通より少し弱かったんじゃないかと思う

 

わたしが入った年は

バレー未経験の新卒の先生が顧問となり

外部コーチが来てくれていた

そのコーチはお坊さんだったから

毎日来てくれるわけではなかったけど

 

同い年はわたしも含めて18人

単純計算で3チーム作れるほどの大人数だった

強豪でもないのに憧れとは恐ろしい

よくこれだけ集まったと思う

 

強烈に憧れたスパイカー

スパイカーが一番かっこいいと思っていた

絶対にエーススパイカーになりたかった

 

小学生の頃からの

ジュニアバレーの経験者は4人

 

まずは1年生の中で

誰よりも上手くなりたいと思った

 

元々の負けず嫌いと

運動神経の良さで

同い年の中では上手かったと思う

 

2年の時の夏の大会が終わって

当時の3年生が引退し

わたしは部長になった

 

もちろんやるからには勝ちたかった

練習は辛いときもあったけど

楽しかったしバレーは好きだった

 

わたしはやる気に満ちていたけど

強豪でもない学校の

思春期真っ只中

多感な時期の中学生なんて

当然他の事にも興味深々なわけで

ただ何となくやってる子たちが

ほとんどだったと思う

 

3年になって

顧問の先生が変わった

隣の中学で指導していた

バレー経験のある先生だった

その中学は近隣ではとても強くて

わたしも強くなれると期待した

夏の地区大会までたった3ヶ月だったけど

 

想像通り練習はすごく厳しかった

やる気のない子たちは

先生の事を悪く言ってたな

 

わたしもよく怒られた

「お前がしっかりしてないから負ける」

って感じの事を言われた覚えがある

その日はめちゃくちゃ落ち込んで

泣いた

 

一個上の先輩が引退してから

ずっとみんなを引っ張って

エースの証である4番を付けて

頑張ってきたつもりだった

 

自己肯定感がドン底だったわたしは

ただただ「わたしがしっかりしなくては」

と自分を責め続けた

 

そして迎えた夏の大会

地区予選1日目

今日勝てば明日も試合がある

 

新しい先生になってから導入された

レシーブ時のスプリットステップ

相手がスパイクを打つ瞬間に

軽くジャンプして

その反動を使ってレシーブに動く

 

その時のわたしはライト側にいて

コートの内側に切り込んでいくために

左足に体重を乗せた瞬間

パキッて音が聞こえた

 

レシーブはできず

ボールはコート内に落ちた

 

ジンジンと変な感覚

これはなにかおかしいと思って

先生に申告した

 

「足がおかしいです」

 

そのまま別の子と交代してベンチに座る

 

シューズやソックスを脱ぐのも一苦労

体重も乗せれない

とにかく、痛い

 

多分、今日はもう出れない

 

でも今日勝ってくれれば明日は出られる

そう信じていた

 

しかし結局試合は負け

そのまま引退が決定した

 

どんどん腫れる足

試合を見にきていた両親と

そのまま病院に行くと

診断結果は骨折

 

わたしのバレーはあっけなく終わった

当日どんな気持ちだったのか

今はもう上手く思い出せない

 

 

わたしのことを可愛がってくれていた

体育の女の先生が

「高校でもやるなら紹介してあげるよ」

と近隣の強豪校の名前を出してくれたけど

わたしの身長ではもう通用しないと思い

その申し出は辞退した

 

中学でバレーはやめるつもりだった

それがなぜかも今はもう思い出せないけど

 

 

「結果より過程が大事と言われて

子供はイマイチ納得せん」

ってハイキューで言っていたけど

わたしもそう思っていた

 

「だって負けたじゃん」

「何も残せなかったじゃん」って

 

「上には上がいる」

「どんなに上を目指しても

わたしじゃ1番になれない」って

ずっと思ってた

 

結果を残せなかった自分は

上手く部員を引っ張れなかった自分は

サーブも下手

レシーブも下手

スパイクも下手だった自分は

 

なにものでもなかった

なにものにもなれず終わった

 

 

そう思っていた

 

 

だけどそうじゃなかった

 

母が買ってくれたmoltenのボール

練習が休みの日は家で練習した

母もたまに付き合ってくれた

 

母の従姉妹が入っていた

ママさんバレーチームの

練習に参加させてもらった

スパイクが上手くなりたかった

 

基礎トレをサボる子がいる中で

絶対に手を抜かなかった

 

やってきたことが消えるわけはなかった

 

 

あの夏が終わった日から20年

ようやく当時のわたしを認められた

 

一生懸命やってたよ

上手くなりたくて頑張ってたよ

多感な時期の難しいメンバーを

よく引っ張ったよね

 

なにものでもなかったと思っていたけど

わたしなりの全力だった

 

中学生という

精神的にも肉体的にも

まだまだ発展途上の子が

ただ全力で取り組んでただけ

 

その時の精一杯を駆け抜けただけだ

 

 

全ての正しい努力ができていたわけじゃない

あの時体育の先生の申し出を受けていたら

今のわたしは違ったかもしれない

 

それでも今のわたしは

今の最善を選んでいく術は身につけた

 

あの時の努力が

負けず嫌いの気持ちが

根性だけで進んでいた道が

 

今のわたしを確実に形作っていた

 

あの時のわたし、ありがとう

 

なにものでもないと思っていたわたしは

確かに「明日のわたし」を作っていた

 

 

そんな出来事が

わたしの中に数多く残っている

 

これからも思い出すたびに

その時のわたしを

拾って集めて

 

 

そして光に変えていく