我が家の風景を一言で表すなら「常時、誰かが機嫌悪い選手権決勝」である。
大会形式ではないが、日々の様子を見るに、かなりの接戦だ。出場者は母・父・私・妹1・妹2・妹3。参加資格は「まだ生きていること」だけなので、だいたい毎日全員出場している。戦い故の過労死もしくは家庭崩壊で脱落者が出るまでこのバトルロイヤルは続く見通しだ。
たとえば、朝起きた時点で誰かがすでに仏頂面をキメている。私である可能性は高いが、「誰が最初に不機嫌になったか」などという議論は、幼児の喧嘩と増税くらい不毛なので誰も突っ込まない。
さて、この「機嫌悪い6天王」の中で唯一、沈黙の武器で戦うのが我が母である。怒る、というのはエネルギーが要る。つまり、怒る=課金。ならば我が母は完全無課金プレイヤーである。
代わりに彼女が装備しているのが「ハイレベル無視」だ。これが本当にすごい。何がすごいって、4年間、娘2人とほぼ会話せずに4人家族を名乗り続けた実績がある。
そんな無視職人も、唯一声を荒げる瞬間がある。それが「宗教関連」だ。
死んだ後のことを本気で心配しているのか、はたまた死後にVIP待遇を受けたいのか、「あなたたちも信じなさい」「ちゃんとやりなさい」と繰り返す。が、こちらは「死んだら終わり」派のため話が通じない。
可哀そうに、母はただ一人、「不信心な長女をどうにか浄化しようとする人」というロールを背負っている。もはや我が家の中で宗教団体をひとりで立ち上げているような状態だ。
こちらが気づいた時には「布教が完了していた」とかありえそうで怖い。私のLINEアイコンが突然、天使とかに変えられていたらそれが終末である。逃げられるうちは逃げようと思っている。
父についても触れておこう。
基本的には温厚で、いわゆる「静かに怒るタイプ」…というわけでもなく、むしろ単に常に静かでいてほしいタイプである。
家庭の平和を守りたいというより、自分の耳と神経を守りたいらしく、女ども(母・私・妹x3)がキーキー騒ぎ始めると、瞬時に耐性ゼロの赤子モードに突入する。パッパは「生後1か月の赤ちゃん(騒音耐性ゼロ)+中年男性のプライド」で構成されているので、扱いが難しい。
実際、我々の喧嘩の声が赤ちゃんの夜泣きと同じくらいのデシベルらしく、あまりの不快感に堪忍袋ではなく中年の尊厳が破裂する。父は「自分が怒鳴るのはよい」派なので、娘が同じような声量で叫ぶと、『その口の利き方なんだ』警察が出動する。そして決まって、声の勝負で押し返せなくなると、最後のカードとして武力をちらつかせてくる。「俺はまだ本気出してないだけ」を体現し続けた結果、誰も彼を本気にさせたくないという均衡が保たれている。畢竟、我が家において、父は「爆音にだけ反応する時限爆弾」であり、全員がその爆弾を起こさぬよう必死に寝かしつけながら暮らしている。本当に、全員が眠っててほしい。父も、娘も、怒りも、宗教も、全て静かに眠っててほしい。でも実際に眠っているのは、会話と理解だけである。
今日も我が家では、誰かが怒っていて、誰かが無視していて、誰かが宗教を唱えている。平常運転である。
あと随筆をかいてみるよーん。