七時限目の化学が終わった。
今日は珍しいことに実験。
なので移動教室だった。
そして今はその帰り道。
「あーやっと帰れるわー」
「ノート取らなくていいから楽勝楽勝」
クラスメートの会話が聞こえてくる。
俺もあんな風に騒ぎながら教室に帰りたいものだ。
俺は広峰良平。
成績的に見れば一般的な高校生。
しかし人間的に見れば異常がある。
いや、狂気に満ちている訳ではない。
世間一般で言う『コミュ障』なのだ。
人と話すときに言葉が出なくなったりする。
そのせいなのか俺には友達らしき人はいない。
教室に戻り席に着く。
すぐに担任が入って来てHRが始まった。
「…だから……だ。…じゃ、解散。」
HRが終わり俺は教室を出る。
そこで俺は少し違和感を感じた。
鞄がいつもより軽いのだ。恐らく400g。
中を確認すると筆箱が入っていなかった。
もしかしなくても理科室に忘れてきたのかもしれない。
「はぁ…。」
俺は理科室へと向かった。
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この学校は二階と三階にクラスの教室が集められており、一階に理科室などの特別な教室がある。
中でも理科室は一階でも下駄箱から最も遠い位置にあるので放課後は人気がなかった。
理科室の前に着く。俺は扉を開けた。
「…失礼します。」
中には科学部と思しき生徒達と顧問と思しき男性がいた。
どうやら実験中のようだ。それにしてはかなり禍々しい雰囲気だが…。
「何かな?」
生徒の一人が尋ねてくる。
「…忘れ物を取りに来ました。」
「そう。なら早く探してくれ。」
素っ気ないな、などと思いつつ授業で使った机を探る。
筆箱はすぐに見つかった。
ダッシュで扉へと向かう。
そこで俺はあることを思い出した。
この学校には部活が無駄に多いが理科部に類する部活は存在しない。
ではこの人達は…
「…この学校って理科部も科学部も生物部もありませんよね?」
ギクリ、と、音が聞こえそうなくらいに場が固まった。
「あぁ。しょうがないかぁ…。」
男性が悔しそうに声を出した。と、思ったのもつかの間。
「八時限目にようこそ!!」
ハイテンションに語り出した。
・「駄作臭がする。」とか、「どこかで見たことある展開。」とか言わないでね☆