たいへんにご無沙汰しております。
多忙になったことから自詠のまとめ活動を著しくさぼっておりました。
さて、
【2023年2月】
2/2
颪さへ楽しき朝や旅の空
浜松にいたのですね。
2/3
鬼やらいこれは清めの吟醸酒
おそらくは帰りの新幹線。
2/4
春立ちぬ山宿跡の湯花かな
春立つ日びんの蓋までやはらかし
春立つを告ぐる我が目の痒きこと
立春ということで。
2/8
薔薇芽吹く吾が母指からも紅き珠
余寒続く音楽は好きだったのに
このときの私が言うには、「もっと自分の外界に寄っていく訓練とか、である自分を見下ろしたり横からみたりする訓練が要るような気がする。それもきわめて視覚的に。」だそうですが、たいしてできていないような気がいたしますな。
2/10
社用車もくすぐられゆく春の雪
大雪が降ってきた日。
2/11
夜勤明け春たちてよりあをまりぬ
2/12
百段を駆け上がる子や菜の花忌
ひねりのない「坂の上の雲」ネタ。
2/13
夜勤明けの明けの明けいや眠き春
俳号を「新樹番人(あらきのばんにん)」に変えようと決めた日。
この日短歌も一首、短歌からの抽出俳句も一句。
顔本の突き付けてくる九年前国家試験と交友関係
闊々と雲はねぷたの冬夕焼カーラジオ切る車線そのまま(1/30)→冬夕焼ねぷた雲闊き車線かな→アクセル踏む雲はねぷたの冬夕焼
2/14
荷解きして部誌現るや蕗の薹
聖ヴァレンチノ忌守れよ全指向
2/15
堅雪や吾が右鼻も風なき夜
薄氷学生宿舎はソ連式
文字キーは溝鼠色あさき春
消火栓ランプや薔薇の芽のひかり
2/16
河原鶸鳴くや高めのホ長調(一句一遊木曜日)
獺の祭靴下ペア探し
沈黙は無芸のしるし春の泥
薄氷割れて待ち合う異つ世便
いざという証書があれだ寒皮煮
公魚をたたきつけたる紅さかな
薔薇の芽は誰かが刺した指の色
家中の白壁罵声のごとく春
この句群、酔ってできたもの。白壁と薔薇はわりと気に入っている。
2/17
春幾番お茶淹れて待つ再発射
H3点火せずの報に接して。
2/18
心臓にカンナがたがた安吾忌
味噌漬けの肉焼けた香や花菜漬
夜風冴返る予報の通知を出し抜いて
2/20
短歌。
春宵のダンサーたちは駐車場そう悪くない音のスピーカ
2/23
狆二匹応挙のごとし春の夕
2/24
雨水より五日頬濡れるルサルカ
宇露戦争開戦1年。
傘すてて溶けてゆこうか春の宵
仕事家事春の雪こそ穢けれ
眠気てふ低き電位の報おぼろ
寒戻り酒で焚きたる精気かな
通勤に庭脇見すを梅見とす
谷の香やこの山里の花は梅
若白髪殖えし主治医や梅二輪
たくさん詠む日はたいてい酔っている日。
2/28
八十億みな飯は食ふ寒卵(俳句ポスト365・中級並撰)
【2023年3月】
3/3
外輪差振ってひらけよ春の海
トラックやバスなど大型車運転の句のつもり。実はヒマラヤで平謝りさんレスペクト。
3/5
麦踏みや微積分など誇りし日
3/6
啓蟄へ細雨のにほひはじむなり
研究の話は酔へば楽し春
雨についてはにおいを繰り返し題材にしてしまう。
3/7
鶯の声の一滴二滴かな
鶯やまた白線の老ひし道
3/8
黄砂見下ろす指令破壊が餞の
ロケット。
龍天に登る鼻炎に耐えかねて
目も喉も胸の奥もの痒し春
3/9
風光るほど背の丸む会計課
上咽頭取って洗はむ春霞
3/17
薔薇剪れど枯枝剪れど雲卑し
春はゴミ捨て場の旬やペアグラス
3/22
床に朝陽、卒業証書、瓶、お前 (一句一遊・水曜日)
龍天にエースで主砲のスライダー
3/23
春嵐雨の香かなあて無き旅
3/27
また二軒町会去りぬ彼岸過
3/28
鳥雲に入る死ぬまではこの体 (俳句ポスト365・中級並撰)
【2023年4月】
4/1
打ち上がる九回二死やあゝ春日
ポップフライ。
4/7
雪代や長靴を海へ黒海へ (一句一遊虎の巻・たぶん「や」は雪代は長靴を、などとすべきだったのでしょう)
4/19
人待ちの春を挽いてるダイヤミル
4/22
同居者に言はぬ飲み会弥生草
【2023年5月】
5/2
春驟雨開きやすいなレジ袋
5/4
夏近し窓といふ窓あけはなて
5/6
夏立ちぬ惑星なほ引き連れる藍
5/17
コンビニの麦茶も値上げの夜勤明け
5/19
米糠よ猛れ筍飯のため (一句一遊・天)
Taの押韻を頑張ってグツグツやるアレの勢いを表現できたこと;情景としてはあく抜き。「筍飯はまだ目の前にないのですが」という夏井先生の仰ったことが私の中でも懸念点だったわけですが、結果として、これは筍飯しかない、という季感をとらえることに成功した。
逆に言えばきちんと成功したのは数少ないということになろうか。
5/21
露台水掃いて湖底の香や裸足
ちょっとごちゃごちゃしすぎるかもしれない。
【2023年6月】
6/17
夜に甘き香や知らぬ樹は梅雨晴間
【2023年7月】
7/11
遠雷も遠く影なき家路風
7/13
まだ降らぬ雨の香昏し山繭蛾
多忙もあって俳句にまったく目の向かない日々。かろうじて一句一遊の投句だけはできつづけているが、なかなかうまくいきません。俳筋が落ちたかもしれない。