灯台の街へ行くなら、何か光る物を忘れずに。 -5ページ目

無数の透明な歯車が高速で旋回する空間の中央で、

鳴きながら叫ぶように唄う少女がいた。


その歌声は高過ぎて私の可聴域を超える。

時折、耳鳴りのような高音が響くと、

歌詞の意味を脳に直接叩きつけてきた。


「…信じたかった!」


「守りたかった…!」


「…最後に……辛くて、疑…」


「ごめんね…ごめんね…!!」


あまりに悲痛な想いに触れたような気がして、

私は彼女に歩み寄ろうとする。


だけど少女の身体は足の爪先から急速に崩れていく。

柔らかそうに見えた肌は

光る硝子と透明な歯車の破片と欠片を撒き散らしながら

歌声と一緒に周囲の巨大な歯車の狭間に消える。


私が辿り着いた時には、

光を発する事の無かった硝子の欠片しか

彼女の居た場所には残っていなかった。




…彼女の身体は無くなってしまったのに、

歌声は未だに歯車の空間で響き続けている。

それが硝子の欠片から響いてくるようで、

私は跪き、涙の色にも似た珪素の切っ先に指を触れた。


その刹那、欠片が光りだす。

指先から私の持つ色が全て奪われてゆき、

欠片は自らの身体に皹を刻みながら膨張していった。


その傍らで光を屈折させるだけの物質と化した私には、

今まで聞こえなかった高音の旋律が聞こえるようになる。


気付いたことは、

彼女の歌声が高速でもあること。


64ビートで紡ぐ声は

まるで1秒の時間を惜しむかのように

何かの想いを言葉にしようとしていた。


彼女が何だったのか、少しずつ分かりかけてくる…




…。



…ここから先が、うまく思い出せない。

起きた後、夢の記憶は急速に薄れていくもので、

今朝の夢は通勤電車の中で欠けてしまった。


会社のオフィスで記録してる日記なんて、

彼女が残した硝子の欠片ほどしかない。




…抽象的な文章であるほど、

見た人が解釈する意味が変わりやすくなる。

例えば、あの破片が私だけの色で染まってしまったように。