空腹で目を覚ました。
何か食べるものはないかと冷蔵庫を開ける。
重量感のある取っ手を引くと
淡いバックライトと一緒に冷気が頬を撫でた。
いつもより冷えた感じがするのは、
中に殆ど何も無いからだ。
野菜収納ボックスに得体の知れない赤い液体が溜まっていたけれど、
私はそれを一瞥するだけで、ボックスの上の鋏を凝視する。
そういえば、
昨日は食べ物と調理器具を買おうとして
大きな鋏を買ったら金がなくなったから、食べ物が買えなかったのだ。
よく冷えた鋏を手に取り、
冷蔵庫を閉めて、
私は自分の手を食べることにした。
ちょうど、左腕が痛かったところだ。
一気に大きな部分を切るのには抵抗があったので、
手のひらの中央部分にばっさりとスリットを入れた。
よく切れる。
残り数センチをさらに切り進めると、
私の人差し指から小指はまとめて4本とも根元から落ちた。
綺麗に掃除された台所の三角コーナーに
小気味の良い蛋白質の音が響く。
血は出ない。
切断面から覗く内容物には白い骨も赤い筋繊維も無かった。
ただ肌色の肉が詰まっているだけ。
「なんだ…夢か」
私は何も無い天井を見上げて、夢を見てる私に向かって言った。
「せめて皮の裏側くらい白く着色しておくべきだな。
…君は実際に見たことがあるじゃないか」
言い終えた刹那。
私の視界は暗転して自身の身体を飛び出し、
床を突き抜けてどこまでも落ちていく。
落下。無重力感。不安。
恐怖は無かったけれど、酷く不快を感じた私は…
そこで目を覚ました。
今朝は最悪な夢だった。