「タイート。タイート。」
「ルゥ-。」
「ちょっと。ちょっと起きなさいよ。」
ルゥ-シュではない声が聞こえてきた。
「え?」
タイートは目の前にユークの顔がある事に気付いた。
「あれ?」
「あれじゃないでしょ。夢見てたんでしょ。ほら。」
そう言うとユークはハンカチを差し出した。
やっとタイートは泣いていた事に気付いた。
「ありがと。」
ユークから借りたハンカチで涙を拭いたが、とたんに恥ずかしくなった。
またユークから何を言われるのかと思っていたが、ユークは何も言わなかった。
陽が落ちて、辺りは真っ暗になった。
田舎の夜は早く、7時を過ぎると人通りはめっきり減った。
ましてここは村でも山奥の人里から、はずれたような場所だ。
時折、鳥の声が静かに響くだけだった。
今屋敷の中にはニングとウ-サナがいた。
ュグーニラは、さっきワゴン車で出かけて行った。
一人少ない今がチャンスの時だった。
ユークとタイートは、裏口からそっと家の中に入って行った。
部屋の中は薄暗かった。
庭先から入る月明かりが、ぼんやりとタイーとの足元を照らしていた。
奥に入って行くと広い畳敷きの部屋に、誰かが転がるように寝ていた。
タイートはゆっくりと人影に近づいて行った。
ぴくりとも動かない人影の肩に手をかけようとした時、その影は素早く動いた。
ユークが警告する間もなかった。
タイートは、その影に足元をすくわれた。
バランスを崩したタイートだったが、エルンゼの中でも有数の使い手だ。
左手で身体を支えたかと思うと、一瞬の後には見事な宙返りで後方にくるりと飛んだ。
「やはり来たな。待っていたよ。」
薄暗い部屋の中に、可愛い女の子の声が響いた。
ウ-サナだった。
そして隠れていたのだろう、ュグーニラもいつの間にか姿を見せていた。
「のこのこと現われるとはね。エルンゼの戦士がこんなに間抜けだとは思わなかったよ。」
ウ-サナが唇の端を少し上げて、美しい顔に笑みを浮かべて言った。
「何言ってるの?馬鹿じゃないの?あんたたち相手に私たちが脅える必要なんてないわ。あなたたちが待っていると思ってきてあげたのよ。」
答えるユークもまた高慢な表情だった。
女同士の戦いに呑まれたわけでなないだろうが、タイートとュグーニラは動けずにいた。
どちらも防衛軍有数の武術の使い手であり、戦う事にかけては自信がある。
それだけに相手の出方を見ながらの睨み合いが続いていた。
膠着した空気に我慢しきれず、先手を打ったのはュグーニラだった。
手元から短刀のような剣をシュッと抜き、タイートの胸元に突き出した。
ュグーニラの攻撃を軽くかわしたタイートも、懐に忍ばせていた剣を手にしていた。
二人の手元にある剣は、乳白色の光を帯びてほのかに光っていた。
剣はぶつかり合うたびに火花を散らしながら、薄暗い部屋の中を蝶が舞うように踊っていた。
タイートは剣の扱いには長けていた。
やがてュグーニラの剣が床に転がった。
ュグーニラの右腕からは一筋血が伝い、床に数滴落ちて行った。
「くそっ。」
「そこまでだ。」
タイートの背後で声がした。
振り返ったタイートが見たものは、ニングのこめかみに銃を突きつけているウ-サナの姿だった。
そしてじりじりと下がってくるユークだった。
眠っているニングを除いた4人が固まったように立ちすくんでいた。
ウ-サナに向かって一筋の光が走った。
そしてウ-サナの声が響いた。
「あぅっ!」
銃が床に落ちて、カタンと音を立てた。
4人とも未知の敵らしきものの出現に、どうしたものか戸惑っていた。
1分ほどの時間が過ぎた。
ただ4人には1時間にも思えるほどだった。
しかし未知なる敵はそれ以上動く気はないようだった。
ウ-サナは腕がしびれて、動けなくなっていた。
我に帰ったユークはウ-サナに蹴りを一つ入れ、部屋の隅に倒れていたニングを取り返した。
ウ-サナは少しうめいていたが気を失ったのだろう。
やがて静かになった。
その頃にはタイートがュグーニラを、どこから見つけてきたのか細い紐のような物で拘束していた。
「ああ、ルワを持って来ていたのね。」
「これは便利だから。」
ルワというのは、細いバンドのようは形で自由自在に伸縮し固定する事も出来る。
小さな蓋のような形の物がついていて、鍵の代わりになる。
こうして敵を拘束したり忍者が使う鎖釜のように投げてロープとして使う事も出来る。
「結構用心深いってわけね。さあ行きましょう。もうここには用がないわ。」
「ああ。」
タイートがニングを抱き抱えた。
「慎重にね。知らない誰かがまだいるかもしれない。」
「誰だ?」
「さあ・・・でも油断出来ないわ。誰かがいる事だけは事実なんだから。」
「そうだな。」
「でも今のところは動く気はなさそうだから早くここを出ましょう。」
「うん。行こう。」
こうしてユークとタイートはニングを連れて古い屋敷を出た。
つづく
「ルゥ-。」
「ちょっと。ちょっと起きなさいよ。」
ルゥ-シュではない声が聞こえてきた。
「え?」
タイートは目の前にユークの顔がある事に気付いた。
「あれ?」
「あれじゃないでしょ。夢見てたんでしょ。ほら。」
そう言うとユークはハンカチを差し出した。
やっとタイートは泣いていた事に気付いた。
「ありがと。」
ユークから借りたハンカチで涙を拭いたが、とたんに恥ずかしくなった。
またユークから何を言われるのかと思っていたが、ユークは何も言わなかった。
陽が落ちて、辺りは真っ暗になった。
田舎の夜は早く、7時を過ぎると人通りはめっきり減った。
ましてここは村でも山奥の人里から、はずれたような場所だ。
時折、鳥の声が静かに響くだけだった。
今屋敷の中にはニングとウ-サナがいた。
ュグーニラは、さっきワゴン車で出かけて行った。
一人少ない今がチャンスの時だった。
ユークとタイートは、裏口からそっと家の中に入って行った。
部屋の中は薄暗かった。
庭先から入る月明かりが、ぼんやりとタイーとの足元を照らしていた。
奥に入って行くと広い畳敷きの部屋に、誰かが転がるように寝ていた。
タイートはゆっくりと人影に近づいて行った。
ぴくりとも動かない人影の肩に手をかけようとした時、その影は素早く動いた。
ユークが警告する間もなかった。
タイートは、その影に足元をすくわれた。
バランスを崩したタイートだったが、エルンゼの中でも有数の使い手だ。
左手で身体を支えたかと思うと、一瞬の後には見事な宙返りで後方にくるりと飛んだ。
「やはり来たな。待っていたよ。」
薄暗い部屋の中に、可愛い女の子の声が響いた。
ウ-サナだった。
そして隠れていたのだろう、ュグーニラもいつの間にか姿を見せていた。
「のこのこと現われるとはね。エルンゼの戦士がこんなに間抜けだとは思わなかったよ。」
ウ-サナが唇の端を少し上げて、美しい顔に笑みを浮かべて言った。
「何言ってるの?馬鹿じゃないの?あんたたち相手に私たちが脅える必要なんてないわ。あなたたちが待っていると思ってきてあげたのよ。」
答えるユークもまた高慢な表情だった。
女同士の戦いに呑まれたわけでなないだろうが、タイートとュグーニラは動けずにいた。
どちらも防衛軍有数の武術の使い手であり、戦う事にかけては自信がある。
それだけに相手の出方を見ながらの睨み合いが続いていた。
膠着した空気に我慢しきれず、先手を打ったのはュグーニラだった。
手元から短刀のような剣をシュッと抜き、タイートの胸元に突き出した。
ュグーニラの攻撃を軽くかわしたタイートも、懐に忍ばせていた剣を手にしていた。
二人の手元にある剣は、乳白色の光を帯びてほのかに光っていた。
剣はぶつかり合うたびに火花を散らしながら、薄暗い部屋の中を蝶が舞うように踊っていた。
タイートは剣の扱いには長けていた。
やがてュグーニラの剣が床に転がった。
ュグーニラの右腕からは一筋血が伝い、床に数滴落ちて行った。
「くそっ。」
「そこまでだ。」
タイートの背後で声がした。
振り返ったタイートが見たものは、ニングのこめかみに銃を突きつけているウ-サナの姿だった。
そしてじりじりと下がってくるユークだった。
眠っているニングを除いた4人が固まったように立ちすくんでいた。
ウ-サナに向かって一筋の光が走った。
そしてウ-サナの声が響いた。
「あぅっ!」
銃が床に落ちて、カタンと音を立てた。
4人とも未知の敵らしきものの出現に、どうしたものか戸惑っていた。
1分ほどの時間が過ぎた。
ただ4人には1時間にも思えるほどだった。
しかし未知なる敵はそれ以上動く気はないようだった。
ウ-サナは腕がしびれて、動けなくなっていた。
我に帰ったユークはウ-サナに蹴りを一つ入れ、部屋の隅に倒れていたニングを取り返した。
ウ-サナは少しうめいていたが気を失ったのだろう。
やがて静かになった。
その頃にはタイートがュグーニラを、どこから見つけてきたのか細い紐のような物で拘束していた。
「ああ、ルワを持って来ていたのね。」
「これは便利だから。」
ルワというのは、細いバンドのようは形で自由自在に伸縮し固定する事も出来る。
小さな蓋のような形の物がついていて、鍵の代わりになる。
こうして敵を拘束したり忍者が使う鎖釜のように投げてロープとして使う事も出来る。
「結構用心深いってわけね。さあ行きましょう。もうここには用がないわ。」
「ああ。」
タイートがニングを抱き抱えた。
「慎重にね。知らない誰かがまだいるかもしれない。」
「誰だ?」
「さあ・・・でも油断出来ないわ。誰かがいる事だけは事実なんだから。」
「そうだな。」
「でも今のところは動く気はなさそうだから早くここを出ましょう。」
「うん。行こう。」
こうしてユークとタイートはニングを連れて古い屋敷を出た。
つづく