タイート、ユーク、ルゥ-シュ。
三人は、何かに導かれるようにどんどん距離を縮めようとしていた。

しかし誰一人としてこの出会いを予想している者はいなかった。
いつかは・・・とタイートもユークも思ってはいたがこんなに近くに捜し求める人がいようとは思いもよらなかった。

そしてもう一人、ルゥ-シュ。
まさか自分が今追っているエルンゼの二人と自分に、密接な関係がある事をルゥ-シュは知らなかった。
いや・・・エルンゼでの全ての事を、忘れるように操作されていた。
ルゥ-シュは今度の計画を成功させ、オルグ王に自分の実力を認めさせたかった。
そしてやがてはビスクールでの地位を駆け登り、オルグ王になり代わり自分がビスクールを意のままに動かしたいと考えてた。
そのためにはこの計画をなにがなんでも成功させなければならなかった。

ルゥ-シュは目の前を走る車にいるニングを奪い返し、エルンゼの戦士二人を始末するためウ-サナとュグーニラを引き連れて1台の車を追っていた。


そこへマクビテクスからの通信が入った。

「マクビテクス様、何か?」

「ルゥ-シュ様、今どちらに?」

「今は・・・日本です。」

「なんと・・・日本に行かれたのですか?」

「はい。二人の様子を見に来たのですが。いけませんか?」

「いえ、いけなくは・・・」

マクビテクスはルゥ-シュには一歩引いた立場で接していた。

もちろんそこにはマクビテクスの思惑があるからだった。
ルゥ-シュは本来はビスクールの正統な王位継承者の一人だった。
現にビスクールではルゥ-シュの事を知るものも少なくない。
今はオルグ王に仕えているが、いつかはルゥ-シュがその地位を継ぐべきだと考えていた。

もともとビスクールの正統な継承者はルゥ-シュ・ノーブルだった。
ノーブル家は昔からビスクールを治めてきた。


戦前からヨーロッパの中央にあった小さな古い国だったが、核戦争によって世界が荒廃した時もただ一つその戦争には参加せず中立の立場をとった。
しかし戦争は嫌でも全ての国を巻き込み、地球全体へと広がって行った。
そして核戦争によって放射能は地球全体を蝕んだ。
ビスクールも例外ではなかった。


かろうじて生き残った人達は、比較的放射能の影響が少ないところに自然と固まっていった。
そこには今までの人口とは比べ物にならない数の人間しかいなかったが、それでもある意見があればその意見に反対する者たちがいた。

こうして奇跡的に残った人類も二手に別れ、互いに対立を深めていった。
中でもビスクールの人達はノーブル家を中心にまとまっていた。

やがてビスクールの中から独立しようという一派が現われた。
ノーブル家は押さえようとしたが、独立の波は大きくなっていった。

当主だったフェオーレは争う事が嫌いだった。
愚かな人間のために地球は放射能にまみれた。
学ぶべき事は人類の歴史には数多くあったが、人類は未だ学んでいなかった。

再び奇跡的に生き残った人達もまた同じ道を歩もうとしていた。
独立派の旧先鋒だったのがオルグ王の祖父だった。
オルグ王の祖父はノーブル家とは縁籍にあたる。

名前こそノーブルを名乗っていたが、フェ-オーレとは人間としての器が違っていた。
本人がその事を自覚していたかどうか・・・
いや、自覚していたからこそフェオーレを出しぬく時を狙っていたのかもしれなかった。


                つづく