さて、照明の世界で「ハード(技術)とソフト(生理・心理とデザイン)を取り持つような仕事をしたい」と、漠然とした希望を持っていた私。

そんな仕事は少なくとも日本の照明業界にはない、そう分かった時ちょっと落ち込みました。

 

これからどうしたものかと電気工学科の就職担当をしていらしたK教授に相談すると、素晴らしい提案をいただきました。

「うーん、それは残念だね。でも、それならばランプの会社はどうだろう? ランプは照明の一番元になるものだから、この仕事を経験しておくと将来役に立つはずだよ。ついては、この会社を訪問してみたら?」

と勧められたのがOSRAM(オスラム)という西ドイツ(当時)のランプメーカーでした。

 

正直に申し上げると、当時私は日本の照明メーカーの情報しか持っておらず、OSRAMなどという名前は聞いたこともなかったのです。

 

会社訪問をしてみると、東京のオフィスは社員が30名弱ほどの小所帯。

小ぢんまりしたオフィスのアットホームな雰囲気と、光そのものを専門的に扱っているらしいという業務内容に興味を持ちました。

それに、日本では一般的にはほとんど知られていないというのも面白かったですし・・・(私は結構天邪鬼です)

世界的には結構大きな会社だということを知ったのは、入社後のことでした。(汗)

 

 

入社して初めての仕事は、産業用光源(注:光源とはランプのことです)の営業と技術サポートでした。

「ハード(技術)とソフト(生理・心理とデザイン)を取り持つような仕事」からはず~っと遠い仕事です。

でも、この仕事はとても楽しかったですし、何より、光に関する知識を深める大変良い機会となりました。

 

 

この仕事でお目にかかるのは、光学機器や電気機器メーカーのエンジニアの方々です。

先端技術の開発をされているような方ばかりでしたので、私の中に僅かに残るエンジニア魂が刺激されました。

 

お客様からは

「◯◯nmから△△nmまでの光を平行照射できるランプはない?」

とか、

「☓☓nmの電磁波だけを◇◇の強度で照射する光源を作って」

といった実現可能か不可能かはお構いなしの、細かくて奥深い、本音を言えばとても面倒なご要望が寄せられます。

このようなリクエストを承るうちに、自ずと光の勉強をするようになっていきました。

 

先方は先端技術のエンジニアです。

そんな方々が当方を光の専門家として頼っておられるのですから、生半可な勉強では足りません。

自分では学生時代に照明工学だけ(!)は結構勉強したつもりでいましたが、量・質ともに、そんなものをはるかに凌駕する勉強を必死にすることとなりました。

 

このようにして、様々な分野のエキスパートであるお客様から、また社内の技術者たち(博士クラスの方もたくさんいらして、かなり高度な内容まで根気よく教えて下さいました)から、双方から鍛えられ教えられて、光に関する知識が面白いように増えていったのです。

 

当初の希望とは遠くかけ離れた仕事でしたが、実はこの経験が、今、私の光の仕事の礎になっています。

私は光を評価するとき、まず物理的な側面から価値を探ります。

この際に、あの時に培った経験が活かされるのです。

別の言い方をすれば、あの経験がなければ、光を見極めるスキルは得られなかったでしょうし、今の私は存在しないと思うのです。

 

 

さてそんな、どちらかと言えばハード寄りの仕事を続けていたある日、会社から興味深い仕事のオファーを受けます。

「待てば海路の日和あり」

 

 

(つづく…あと一回だけお付き合い下さい)