1. 価格のランダムウォーク(正規分布)
  2. 収益率のランダムウォーク
  3. 収益率のファットテール分布
  4. ギャンブル研究から金融への応用: 勝率に基づいて「いくら」賭けるか
  5. オプション価格
  6. カオス理論の応用と予測
  7. 暴落の予兆検知
  8. マクロ経済への物理学の応用 - 経済マンハッタン計画(投資への、ではない)
 
  1. 株価は正規分布でランダムウォークする(ルイ・バシュリエ, 1900)
    1. それまでの歴史
      1. ジェロラモ・カルダーノ(1526 出版は1663): サイコロの出目確率論
      2. ブレーズ・パスカルとピエール・ド・フェルマーの往復書簡: サイコロの出目確率論
      3. ヤコブ・ベルヌーイ: 大数の法則(試行が増えれば結果は確率に近づく)
    2. グランゼコールをあきらめ、パリ大学でアンリ・ポアンカレの下で執筆
    3. バシュリエはここから、オプション価格理(売り手と買い手の損益ゼロとなる価格)を導出
  2. 株式の収益率は正規分布でランダムウォークする(i.e. 株価は対数正規分布する) - 株式市場のブラウン運動(モーリー・オズボーン, 1959)
    1. 歴史的背景
      1. DuPontのナイロン開発(1939)→基礎研究が儲けを生む
      2. マンハッタン計画(1942-)
    2. 海軍研究試験所(NRL)で音響や爆発、空気力学などを研究
    3. 投資家心理からも説明: 刺激の感じ方は変化の絶対量($)ではなく相対量(%)で決まる(心理学のウェーバー・フェフィナーの法則)
  3. 綿花その他あらゆる市場の収益率の動きはファットテール(ブノワ・マンデルブロ, 1964)
    1. 酔っぱらった銃殺隊の銃弾の分布(コーシー分布): 正規分布より背が高く(尖度高)、裾が厚い(ファットテール)
      • 大数の法則該当せず(次の一発で、大きく平均値が変わる)
    2. レヴィ安定分布(アルファ安定分布): 分布のランダムさはα(小さいほどランダム、ファットテール)で表される。正規分布やコーシー分布を包括
      • 正規分布: α=2、コーシー分布: α=1
      • α<=1→大数の法則不成立、σは定まらず、期待値も出せない
        1<α<2→平均値はあるがσは定まらない(i.e. 期待値は定まるが、推定が困難)
      • 尚、現在は、収益率はレヴィ安定分布ではないという考えが主流
        (ファットテールは合っている)
    3. グランゼコールの高等師範学校(ENS)に入学→内容が浮世離れしていて合わず→より実践的なエコール・ポリテクニークで博士号→IBMの研究員
       
  4. ギャンブル研究から金融への応用: 勝率に基づいて「いくら」賭けるか
    1. エドワード・ソープ(ディーラーをやっつけろ!)
      1. クロード・シャノン(情報理論創始者)にMITで学ぶ
      2. ワラントのショートで稼ぐ ヘッジファンドの走りに
        • ワラントの適正価格は、かけの勝率が五分五分になる価格の筈
           
  5. オプション価格
    1. ブラック・ショールズモデル(フィッシャー・ブラック、マイロン・ショールズ、ロバート・マートン, 1971)の開発と広がり
    2. エマニュエル・ダーマンによるファットテールベースの修正@Goldman Sachs(1994)
      • 実は、オコナー&アソシエイツが既にこれを知っていて、1987年Black Mondayを生き延びている
         
  6. カオス理論の応用と予測
    • ジェームズ・D・ファーマーとノーマン・パッカードのヘッジファンド(プレディクション・カンパニー)
      • エドワード・ローレンツによるカオスの発見(初期値に対する鋭敏な依存)
      • e.g.バタフライエフェクト
      • ブラックボックスモデル(いくつものアルゴリズムにデータをぶち込んで、最もうまくいくアルゴリズムを採用)
      • 上記オコナー&アソシエイツがスポンサー
         
  7. 暴落の予兆検知
    • ディディエ・ソネット: 破壊(rupture)現象(eg. 風船が割れる、地震)の専門家(ソネット自身は多分野に興味を持ち、多作)
      • 小さな破壊(eg. ヒビ)が自己組織化し、破壊(=「臨界現象」eg. 破裂)に至る場合を特定する兆候を発見
        • ケブラーという化学繊維で作った(宇宙船の)高圧タンクの破壊兆候を特定する実績を上げた
        • その他の臨界現象でも同様の統計的な「普遍的特性」が観察される
          eg. 雪崩、山火事、ストライキ、てんかん発作
      • 臨界現象の兆候: 小さな出来事の起こる頻度が増す。時間の対数になる形で起こる間隔が短くなってくる(対数周期)。
    • 1997年10月27日、アジア危機時の暴落を8月時点で予測。Far OTMのPut買いで、400%の利益を実現
      • その後、29日には値を戻した
         
  8. マクロ経済への物理学の応用 - 経済マンハッタン計画