暗い夜だった。

暗くて重い、夜。




隣の旦那さんの寝息が

聞こえなかった。

寝付けないのかも知れない。

泣いているんだろうか。




肺がんと確定された日の夜。

今も記憶の底に、

張り付いている。




一番近くで私を思ってくれる人を

悲しませてしまった。

なのにかける言葉も

見つからない。





朝までまんじりともせず、

日の出を見てみた。

けれども私の背中を

押してくれることは無かった。




これから私はどうなるのか。




次の朝。

なんとかルーティンで朝食をとり、

言葉少なに過ごしていた。

二人とも仕事は休み。

昼食をつくり、TVをつけた。

東日本大震災。

日本地図が写し出され、

津波をうけた辺りが

いつまでも点滅していた。




驚き、哀しみ、恐怖、悔しさ、

理不尽という思い。

画面を観ながら、

色んな思いを味わった。







そして、思った。

私なんてただ、

病名を告げられたにすぎない。




自分の抱えていることの

なんとちっぽけなことか。

がんが見つかっただけ。

私は今、生きている。







生かされていることへの感謝。

近くにいてくれる人への感謝。

黒い不安にのまれて、

見えなくなってしまう

ところだった。



やさしさ。ぬくもり。いとおしさ。

毎日の当たり前に感謝を

忘れてしまいそうだった。

自分の悲劇に浸って。









あの震災で失われた多くの命。

そのことに思いをはせると、

暗い夜が蘇ってくる。

そして夜明けは

今度は強い力で、

私の背中を押してくれる。

前に進めと。

私は林檎を植える。







がんの宣告から6年。

7年生になりました。







東日本大震災で被災された方に

思いをよせています。

日常のありがたさに

寄り添ってくれる人の温かさに

感謝して過ごしたい日です。

そして、もう二度と

震災が起きませんように。




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