「今日は少し肌寒いので白湯をお入れいたしました」

…と言って眼の前にほどよく冷めた白湯の入ったグラスが置かれた。
なんと気遣いの行き届いた店だろうと感心して、大層気分よく時間を過ごした。

…なのだが、それがどこの店だったか、思い出せない。
どんなに考えても、一晩寝ても三日経っても、ちっとも思い出せない。
どんな店内だったか、一人だったか連れがいたのか、何を食べたのか。

最近こういうことが多すぎる。
確かに実体験した覚えがあるのに、それがいつだったか、どこだったか。

本を読んでいて軽く心に止まった言葉があり、後でまた読み返そうととりあえず
先に進むと、その言葉はもう見つからない。
確かにこのへんにあったのに、この本の中にあったのに。
ページをメモしておくべきだった。

ふと思い出して頭の中で無限にループする場面がある。
これはどのドラマで見たシーンだったか。
思い出せない。日本のドラマであることは確か。
でも主演が誰か、どういうストーリーだったか、思い出せない。
確かに見た覚えがあるのに、どんなに考えても考えてもたどり着けない。

思い出せないからって別に何も困らないんだけどさ。
しかし明らかに脳の機能の衰えを感じる。
以前はこんなこと、なかったような気がするし。
現実と妄想の境目がだいぶぼんやりしてきているのか。
なんといっても「あ〜思い出せない!」っていう状態が気持ちわるいんだよなぁ。

そんなこんなのある日。
とあるカフェで出てきた水は持ってみるとほんわりと温い。
(これは本当に体験したこと。写真がその証拠)
はっ!妄想(もうそういうことにした)の中の白湯は確かこんなグラスに入っていたよ!
もしかして、これがデジャブというものか…。

とすると、そのうちドラマのシーンも、どこかでばったり出合うかも。
思い出そうとするのは止めて、その日を待つか。