私が高校生になると、父は全く家に寄り付かなくなりました

私達としては父がいない方が遥かに良かったので、ほっとしていました

私の高校に提出する家族に関する書類は何と書いて良いのか分からなかった為、父の職業欄には「入院中」と嘘を書きました

私が進学した高校は進学校だった為に不良等もおらずとても穏やかな環境で、私は高校で初めて友達を作ることが出来、初めて学校が楽しいと思えるようになりました

中学校の頃はいじめが辛くて遠足や卒業旅行も欠席していたのですが、高校では心から楽しむことが出来、毎日が幸せな気分でした


しかしある日、学校にまた一本の電話がかかってきました

先生は私を呼び出すと、言い出しづらそうに言いました

「さっき男の人から電話があってな、名乗ってないから誰からかなのか分からないんだけど・・・お前の父親が殺人をしたって言うんだ
それで、復讐で学校に火を付けるって言うんだけど・・・・
お前のお父さんって入院中なんだよな?」

私は先生に何と言い訳して良いのかも分からず、ただただ「父は入院中なので分かりません」と言うしかありませんでした・・・
私が中学生の時、私の暮らしていた町で大きな地震が起こりました

といっても震度5程度のものだったので、普通の家に住んでいた人たちにとってはそれほどの壊滅的な被害ではありませんでした

しかし普通の家に住んでいなかった私達にとっては大変な被害で、元々半分屋根の無かった台所が、今度は壁も失ってしまいました

修理するお金など当然なく、また修理しようにも元の家自体が古すぎた為に残った壁に新しい壁になるような何かを取り付けることも出来ず、私達はその後、台所をビニールシートで覆って暮らすようになりました

それまでは雨の日の調理が大変なだけでしたが、その後は雨だけでなく、火事にならぬように風にも気をつけなくてはならなくなりました
父は調理師免許を持っていました

母との結婚前に父の両親から調理師学校に行かされ、そこで取得したらしいです

父はほとんど働いていませんでしたが、それでも時々職に就いてはいました

一応その免許を活かし毎回飲食店で働いていたのですが、いつもすぐにお店のお金を盗んだり、店主とケンカしたりで、長くもってせいぜい3カ月といったところでした

私が学校に通っている間、毎年両親の職業を書いて提出する機会があったのですが、毎回毎回勤め先が違っている(若しくは働いていない)為、母はいつも書くのを恥ずかしがっていました


一度、父がある飲食店で3カ月続いた時、珍しくというか初めて、私達に勤め先に食事をしに来いと言ってきたことがありました

母は父の仕事が今度こそうまく言っているんだと喜んで、数日後の休みに私たち兄弟を連れて遊びに行ったのですが、ほんの数日前に食べに来いと言った父はもうそこにはいませんでした・・・

店主に嫌みを言われ、私達はとぼとぼと帰ってきました