「病状は今の所安定しています。先週と同じ薬でいいと思われますので
 同じ薬を出しておきますね。今日の診察は終わりです。あ、そうだ。来週も来るように。」

俺は軽く主治医に返事をしてから処方せんを貰って診察室を出た。
 俺のかかっている病気はヒューマンエラー。
全国に4人しか患者のいない難病だ。
この病気にかかると他の様々な難病にかかりやすくなったり、命の長短が狂ってしまう。

俺が処方せんを手に、薬を貰いに行こうと道を歩いていると後ろから先程の主治医が
追いかけてきた。

「あー、良かった。博明くん足速いからどんどん先に行っちゃって焦ったよ。」
「……で、なんですか?」
「手首につけている『ライフタイマー』の整備を忘れてた。」
「それ、俺の前だから許されますけど、他人の前だったら医師免許剥奪ですよ…。」

主治医が言っているのはヒューマンエラーの患者の手首に取り付けてある
『ライフタイマー』と呼ばれる時計のような形をしたタイマーのことだ。
しかし、このタイマーは他のタイマーと違い時間が『72:00:00』で止まっている。
つまり72時間前に設定されているのだ。
これはヒューマンエラーの患者の命が残り72時間になったら動き出す仕組みになってる。
このタイマーの整備をきちんと行っていないと正確にタイマーが起動しなくなってしまうので
毎週の整備が規定事項に記されている。

「うん。整備終わり。これでちゃんと作動するよ。おっと、僕はそろそろ病院に帰らないと……
 君達の病状についての報告書を院長に提出しないといけないから。じゃ、気をつけて帰ってねー」
「どーもです。」

 薬局に入り薬剤師に処方せんを手渡すと薬剤師はふと思い出したように言った。

「そういえば、君以外の患者3人の薬もなくなるんじゃないかなー?持って帰ってくれる?」
「主治医の診察なしに薬剤師が薬を処方していいんですか…?」
「あ、そっか。ダメじゃん。…うーん。君達の主治医に電話して聞いてみるからそこらへんの
 椅子にかけて待ってて!……あ、ご無沙汰しております、薬剤師の水基 雫です。
 ヒューマンエラー患者の主治医の守原 明良先生いらっしゃいますか?
 …あ、先生でしたか。えっとですね……」

……どうやら話は長くなりそうだ。
俺は椅子の側にあった雑誌を手に取り読み始めた。

15分程経っただろうか。
水基先生は俺を呼ぶと4つの薬袋を手渡してきた。
「神原先生が他の子の分も持って帰っておいてって言ってたから渡しとくね。
 この『神凪 博明様』って書かれたのは君の薬。
 あと、『秋乃原 メグ様』 『瀬戸内 康弥様』『伊集院 蒼炎様』って書かれたのは
 それぞれの子に渡しておいてね。」
「了解です。んじゃ、ありがとうございました。」
「はーい、お大事に。」

 薬局を出て、ヒューマンエラー患者専用に作られた『家』に帰る。
いつでも病院に駆けつけれるように、逆に主治医の守原先生がすぐ駆けつけられるように
という配慮のもと病院からそこまで離れていない場所に作られた一軒家だ。
そこで俺以外の患者3人と共に生活している。
「ただいま。」
「お、やっと帰ってきたな。おかえりー」
「あぁ、蒼炎の薬も貰って来た。」

 4つの薬袋の中から『伊集院 蒼炎様』と書かれた袋を取り出し、蒼炎に渡した。

「ありがとさん。……そうだ、昼食今日はインスタントラーメンだぞ。」
「……うちの料理人、瀬戸内 康弥は何してるんだ?」
「〆切り明けだからな、自室で爆睡してるよ。」
「あー。昨日まで終わらない、終わらないって嘆いてた漫画の原稿か。爆睡と聞いた所、
 原稿終わったんだな。」

 机の上に山のように積まれたインスタントラーメンを見る。
現在は午後1時を回った所なので少し遅い昼食だが食べないよりはましなので
インスタントラーメンを食すことにした。
俺のお気に入りはシーフードラーメンなんだが……

「博明、ゴメン。俺が最後の一つのシーフードラーメン昼飯に食っちまった。」

……はぁ、そんな事だろうと思ったよ。