Life-plannig/生活経済情報

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   「老後に2千万円の貯蓄が必要」と聞いて、どきりとした人は小欄ばかりではないだろう。金融庁の審議会が、年金だけでは老後の資金を賄えないとして、夫が65歳え退職した後、夫婦が95歳まで過ごすための必要額を試算した報告書をまとめた

   ▶野党は「日本は老後に2千万円がないと行き詰まる国か」と政府を追及し、与党からも「誤解や不安を招き、参院選に影響しかねない」と批判が相次いだ。麻生太郎金融担当相は報告書の受け取りを拒否するという。審議会に諮問した当人だ。都合が悪くなると切り捨てる姿勢にあきれるほかない

   ▶公的年金だけで生活できると思っている人は今、ほとんどいないだろう。だからこそ、多くの高齢者が定年後も再雇用などで働いたり、生活を切り詰めたりして、蓄えを取り崩しながらつつましく暮らしている

   ▶報告書には、自宅で現金を保管する「たんす預金」を、リスクがある投資へと誘導しようという金融庁の狙いも透けて見える。ただ、本質は老後の現実を踏まえて現役時代からの自助努力を求めたにすぎない

   ▶自助努力をしようにもできない低所得者をどうすくい上げるかも含め、政府は老後の生活設計の青写真を野党と議論するべきだ。今のように逃げていては、年金不信は高まるばかりである。

 (2019/06/13)河北春秋
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中小、負担増に危機感
 厚生年金 政府が加入促進案
  パートも手取り減不安視


   政府は中小企業でパートやアルバイトなど非正規として働く人の厚生年金加入を進める方法で検討に入ったが、厚生年金の保険料は労使が折半するため、経営者側は負担増に危機感を抱く。従業員側も、将来的に年金は増えるものの、当面は保険料の支払で手取り収入が減ることを不安視うする。制度改正に幅広い理解が得られるかどうかが焦点になりそうだ。

三重打撃

   「いったいどれだけ負担が増えるのか。商売をやめる会社も出てくるのではないか」。三重県四日市市で高齢者施設向けに給食提供を手がけるシルバーフードサービスの古谷賢治社長(50)は懸念する。

   同社の従業員は25人で大半がパート従業員。現行制度で短時間労働者の厚生年金加入は「従業員501人以上の企業」が対象だが、要件が撤廃されれば十数人分の新たな保険料が重い負担となって経営にのしかかる。

   古谷氏は「最低賃金が年々上昇し、4月からは従業員の有給休暇取得が義務化された」と語り、保険料増は”トリプルパンチ”に映る。経営の行き詰まる会社が増えれば、地域経済にも打撃になると指摘する。

「難事業」

   厚生年金の短時間労働者加入拡大は、過去にも徐々に進められてきたが、経済界の大きな反発を受け曲折した経緯がある「難事業」だ。

   金融庁の審議会が参院選前にまとめた「年金以外に老後資金2千万円が必要」とする報告書が不安が高まったこともあり、政府は制度改正で将来の年金が手厚くなる利点をアピール。加入拡大に理解を求める算段だ。「年金の給付水準を確保する上でプラスであることを確認」。厚生労働省が8月末に公表した5年に1度の年金財政検証の結果説明資料には、政府改正の効果を強調する文言が並ぶ。

   高齢者の受取はじめの年金額が、現役世代の平均手取り収入に対して何割かを示す「所得代替率」は、現在61.7%。現行制度に手を付けなければ将来、経済成長が標準的なケースで50.8%まで目減りする。

   企業要件を撤廃し、短時間労働者125万人が厚生年金に加入する試算では、代替率が51.4%に上昇。加えて「収入が月8万8千円以上」となっている賃金要件をなくせば、計325万人が加
入し代替率が51.9%に。さらに条件を緩和すれば計1050万人が加わり、代替率も55.7%まで改善すると強調する。

賛否二分

   「将来受け取る年金が増えるならメリットがあるかもしれないが、今の収入から保険料が引かれると生活が厳しくなる」。福岡県飯塚市の福祉施設で週3〜4日、パートとして働く西山陽子さん(40)は複雑な心中を語る。会社員の夫と2人の子どもの4人暮らし。西山さんの収入が家計を支えており切実な問題だ。

   経営者の間には企業要件を撤廃しても、厚生年金加入の対象から外れようと勤務時間を減らす従業員が出て、結果的に人手不足が加速するのではと心配する声もある。

   制度改正を議論している厚労省の有識者懇談会でも、賛否で意見が割れている。法政大の菅原琢磨教授は「雇用される企業によって加入要件が番うのは合理性に乏しい」と指摘。中小企業に配慮して段階措置を設けた上で「最終的には企業要件をなくすべきだ」と主張する。
 

厚生年金 パート加入促進
 政府 企業規模要件撤廃へ


   政府は中小企業でパートやアルバイ度など非正規として働く人の厚生年金加入を促進するため、従業員501人以上という企業規模の要件を撤廃する方向で検討に入った。非正規の人は国民年金(基礎年金)だけに加入する場合が多く、受け取る年金を手厚くするとともに、制度の支え手を広げて年金財政を維持するのが狙いだ。中小企業への影響を考慮し、段階的に要件を引き下げて廃止する考え。複数の関係者が5日、明らかにした。

制度の支え手拡大

   企業規模要件を廃止すれば新たに125万人が厚生年金の対象となる。要件を50人以上とした場合は60万人程度が加入できると試算していることも判明した。

   非正規雇用は働く人の約4割を占め、低年金対策が急務だ。政府は月内に新設する「全世代型社会保障改革検討会議」(仮称)や、社会保障審議会(厚生労働相の諮問会議)の部会で議論し、来年の通常国会への関連法改正案提出を目指す。厚生年金の保険料は労使折半のため負担増となる企業側の反発は必死だ。企業の支援策とセットで行うことも検討するが、調整は難航が予想される。

   企業でフルタイムとして働く人は規模にかかわらず、厚生年金の加入対象。パートなどの短時間労働者は現在、従業員501人以上の企業で週20時間以上働き、賃金が月8万8千円以上などが要件となっている。労働時間と賃金の要件は維持するとみられる。

   公的年金は厚生年金に入っていないと、国民年金のみを受け取ることになる。現在、国民年金は保険料を40年間納めても満額月約6万5千円にとどまり、蓄えの少ない人は老後生活が苦しくなる恐れがある。厚生年金に加入すれば、その分を上積みできる。

   一方、厚生年金のか入社が増えれば、制度の支え手が多くなることになり遠近財政にもプラスだ。厚労省は先月公表した公的年金の財政検証の結果で、少子高齢化などの影響で受け取る年金水準は約30年後に現在より目減りするが、企業規模要件を撤廃すれば年金水準が改善すると試算した。政府は財政検証を踏まえ、制度改正に乗り出す。

 

政府税調答申
 歳入改革 道筋見えず
  消費税10%超 言及せず
   将来のつけ 膨張の一途


   3月判明した政府税制調査会の答申骨子は、社会保障と国の財政を持続可能にするため、一段の歳入改革を政府に促す内容となった。10月に消費税率を10%に引き上げても借金に頼る構造は変わらない。「歳出抑制とさらなる増税が不可避」(財務省筋)との声も強いが、安倍晋三首相は税率10%超への引き上げを早々と封印しており、改革の道筋は見えてこない。

30年で屋台骨

   政府税調が危機感を強めるのは、団塊世代が間もなく75歳以上になり始めて医療や介護費用の増加に拍車が掛かり、社会保障制度の持続可能性が危ぶまれるためだ。

   国の財政も深刻だ。2019年度予算は社会保障や防衛関係費が増え、一般会計の歳出総額が101兆4571億円に膨らんだ。これに対して税収は62兆4950億円で、歳入不足の大半を国債発行による借金で穴埋めしている状況だ。

   将来へのつけ回しは増える一方で、与党関係者からも「現役世代の老後不安や、社会保障制度への不信につながる」と懸念の声が上がる。

   消費税は1989年度に税率3%で創設されて以降、この30年間で歳入の屋台骨となるまでに育った。初年度に3兆3千億円だった消費税収は、19年度に19兆4千億円へと増え、税収全体の2割を占める見通しだ。

   所得税や法人税の税収が景気に左右されやすいのに対し、消費税は税収が安定。負担が現役世代に偏らず、全ての世代が負う特徴もあることから、社会保障の財源に適しているとされる。

   このため多くの有識者の間で、さらなる増税が必要な場合は筆頭格の候補と位置付けられてきた。

「忖度」に危うさ

   議論に重しとなるのが「今後10年ぐらいの間は上げる必要はない」と、税率10%超への増税を否定した7月の首相発言だ。消費税増税がそもそも「一朝一夕にできるものではない」(財務省幹部)のは確かだが、「野党からの批判にさらされたくない」(官邸筋)という首相の姿勢を各省が忖度し、あらゆる改革の検討が停滞しかねない危うさが安倍政権にはある。

   財政再建を訴える「タカ派」であるはずの政府税調ですら、今回の答申では消費税率10%超に言及しない見通しだ。「サラリーマン増税」との批判を一身に引き受けつつも「あるべき税制」(元政府税調委員)を訴えたかつての姿はない。

 


 

社会保障維持 安定税収を
 政府税調、答申で提言へ


   政府税制調査会(首相の諮問機関)=[?]=が中期的な税制の在り方について月内にまとめる答申の骨子が3日、判明した。現役世代を支え手とした社会保障制度や財政は少子高齢化で「深刻な課題」に直面しており、制度維持には「十分かつ安定的な税制基盤の確保が不可欠」だと指摘。10月の消費税率引き上げ後も何らかの増税策が必要との考えをにじませる。公的年金の受給水準の先細りを念頭に置き、老後の資産形成を後押しする環境整備なども促す。

   政府税調が中期答申を作るのは2012年の第2次安倍政権発足後、有識者主導で再始動してからは初めて。委員の任期満了に当たり、政府、与党に税財政改革の反発や追加増税に否定的な安倍晋三首相の姿勢も考慮しているとみられ、消費税率10%超への引き上げといった具体策には踏み込まない見通しだ。

   税調は4日の総会で本格討議に入り、文言を詰めた上で9月下旬に決定する方針だ。

   答申では、高齢化に伴い社会保障費が増大する現状に対し、現在は政府が財源を調達して公共サービスを提供する機能を十分に果たせていないと指摘。政府が月内にも発足させる新会議で取り組む社会保障改革と、表裏一体の問題を提起する。

   税制の在り方として、フリーランスの増加など働き方の多様化を踏まえ、職業によって受益に差が生まれない公平で中立的な税制の構築が必要だと強調。企業年金や個人年金で、会社員に手厚い税制優遇の見直しを検討課題に挙げ、一人一人に老後の備えを促す。

   グローバル化する企業活動については、6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)でも議論された巨大IT企業などによる国際的な租税回避への対応を要請。企業がグループ内で利益と損失を合算して法人税額を計算する「連結納税制度」で、企業の事務負担軽減などの見直しも提言する。

   情報通信技術(ICT)を活用し、納税者の利便性を向上させる取り組みも進める。インターネットを使った年末調整や確定申告の手続きの簡素化などで、納税者の負担を減らすとともに金融機関や税務当局の業務効率化も促す。

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[?]=政府税制調査会
   経済や社会の変化に対応し、中長期的な視点で税制を検討する首相の諮問機関。学者や経済人で構成する。与党の税制調査会が毎年度の具体的な税制改正内容を決めるのに対し、政府税調は今後の税制のあるべき姿について大きな方向性を示す役割を担う。中期答申は委員の任期満了に合わせて3年に1度取りまとめるのが通例だが、2016年6月の前回は時間不足を理由に作成せず、直後の参院選に配慮したとの見方もあった。

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マイナンバーカード
 保険証利用促進へ基金
  政府 システム改修など支援


   政府は3日、行政の電子化を推進する「デジタル・ガバメント閣僚会議」を開き、マイナンバーカード普及に向けた工程表を決定した。2021年3月に始まる健康保険証としての利用を普及させるための基金を設置し、全国約22万の病院や薬局にカードの読み取り端末購入やシステム改修費用を助成する方針だ。カードを活用した消費税増税関連の消費活性化策の概要も決めた。国が全国共通の新たなポイント「マイナポイント」を発行する。

   起爆剤として期待する検討保険証としての利用はどこまで広がるか未知数で、カードの普及を目指して多額の予算を投じるだけに国民の理解を得るための丁寧な説明も不可欠になる。

   増税対策では、民間のスマートフォン決済事業者と連携し、マイナンバーカード保有者が事前にスマホに入金すると、国費でポイントを上乗せする仕組み。20年10月に開始し、入金2万円に対して5千円分(25%)を1人について1回提供する案が有力だ。

   カードは政府の期待ほど浸透していない。保有するメリットが少なく、必要性を感じられないからとみられる。情報漏えいに対する不安が根強いことも一因だ。

   カードの健康保険証としての利用は、8月29日時点で13.9%と低迷する交付率を向上させる重要施策の位置付けで、22年度末までにほぼ全ての医療機関での導入を目指している。国が一定の支援を行い小規模な診療所も含めた環境整備を図る。予算規模は数百億円に上る見込み。

   菅義偉官房長官は3日の閣僚会議で「マイナンバーカードは、日常生活のあらゆる場面で行政に関わる手続きを電子化することができ、国民生活の利便性を高める」と強調した。

   22年度末にほぼ全ての住民がマイナンバーカードを保有するとの計画を実現するため、取得促進策も強化する。国家公務員や地方公務員とその扶養家族は19年度中に率先して取得する。企業の従業員向けには健康保険組合などで取得を要請する。

 


 

老後資金確保へ現役動く
 イデコ加入急増、セミナー活況


   現役世代の間で、老後に必要なお金を資産運用で確保しようとする動きが広がっている。きっかけは金融庁報告書の老後資金「2000万円不足」問題。30年後に公的年金の支給水準が2割減るとの厚生労働省試算も公表され、若い世代で将来不安が募っていることが背景にある。ただ、株式などでの資産運用は損失を被るリスクもあり、専門家は注意を促している。

   取引手数料の安いインターネット証券では、公的年金の不足分を補うため、税制面で優遇される個人型確定拠出年金(イデコ)=[?]=の口座開設申込が急増している。

   イデコは加入者が毎月一定金額を拠出し、株式や債権を組み込んだ投資信託などで長期運用、老後に備える仕組み。SBI証券では6月、イデコの口座申込件数が前月比1.5倍と急増、7〜8月も増勢が続いた。6月以降、老後資金問題が話題となり、「30〜40代の顧客層が危機感を強めた」(SBI証券)ようだ。

   楽天証券もイデコと少額投資非課税制度(NISA)を合計した口座の申込数が6月に、前月の約2倍へ急増した。7月下旬には東京都内で子育て中の女性向けの資産形成セミナーを開催。幼児を連れた若い母親の姿も見られた。

   学生の関心も高い。株取引アプリ運営のスマートプラス(東京)が8月に開いた学生対象の投資セミナーには約20人が参加。男子大学生(20)は「公的年金だけでは老後の資金は不足するので、投資の知識を学びたい」と話していた。

   上級ファイナンシャルプランナーの前田菜緒さんは長期投資の重要性を指摘した上で「家計が苦しくなった場合には、積み立て停止という選択肢がある」と話し、無理のない運用を呼び掛けている。

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[?]=個人型確定拠出年金(イデコ)
   個人が老後に備えて積み立てる私的年金制度の一種。60歳未満が加入でき、毎月一定額を払って投資信託や定期預金などで運用する。掛け金と運用益は非課税扱いとなるのが特徴。運用実績に応じ、国民年金や勤め先の企業年金に上乗せする形で年金・一時金を受け取ることができる。老後に対する国民の不安を軽減するため2017年から加入対象が大幅に拡大された。19年3月末時点の加入者数は約121万人。

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投資分散でリスク抑えて/経済アナリスト 森永康平氏

   老後の資産形成のために投資を始める人が注意すべき点は何か。経済アナリストの森永康平氏に聞いた。

   ー資産運用が注目を集めている。

   超低金利の日本でお金をただ銀行に預け入れておくのは、試算を増やす気がないのと同じ。税制優遇がある仕組みを使い、運用するのは自然な流れだ。

   ー株式投資はリスクが大きい。

   投資信託をはじめ金融商品の過去の運用実績はしっかり確認すべきだが、将来何が起きるかは専門家でも分からない。長期的な視野で、(株や債権、預金など)複数の投資対象に資金を分散してリスクを抑えることが肝要だ。

   ー金融機関選びのポイントは。

   口座の開設しやすさだけでなく、金融商品の購入時に必要な手数料の水準を比較してほしい。投資のリターンは予想が難しいが、コストの抑制は確実にできる。

   ーほかに注意点は。

   利益を再投資する「複利運用」には資産を効率的に増やす効果が期待できる半面、価格変動率の高い金融商品では損失が大きくなるリスクが伴う。正しい理解が欠かせない。
 

障害あるわか子に備えを
 「親なきあと相談室」
  ネットワーク 全国に広がる


行政書士らが不安を聞き取り

   親が病気になったり、亡くなったりしたら、障害のある子どもはー。そんな悩みに対応するため、行政書士やファイナンシャルプランナーらによるネットワークが全国に広がっている。その名も「親なきあと相談室」。複雑な福祉制度について一元的に相談できるため、親たちの「駆け込み寺」となっている。

   「今までは何が分からないかも分からない状態だったけど、話を聞いたらちょっと光が見えました」。7月下旬、横浜市にあるマンションのゲストルーム。相談に訪れた小林順子さん(50)は胸をなで下ろした。

   長男の将さん(19)は重度の知的障害があり、話すことができない。この日はファイナンシャルプランナーの佐藤加根子さん(57)が、20歳から受け取れる障害年金の仕組みや、貯金のこつについて説明した。

   小林さんは約4年前に自身の乳がんが発覚。「子どもに何かあったらとは思っていたけど、自分のことは何も。どこかで不死身だと思っていたんですよね」。入院のため、急きょ将さんのヘルパーや学校の送迎を依頼しなければならず、出費が重なった。

   退院後も服薬治療が続き、「もし夫まで倒れたら」と危機感は募った。どこに相談すれば良いか分からず迷っていたところ、フェイスブックで佐藤さんの活動を知った。

   ネットワークの呼び掛け人は、知的障害のある娘がいる行政書士の渡部伸さん(58)=東京都=。お金や住まい、福祉サービスに関する窓口が分かれているのは不便だと感じ、2014年に相談室を始めた。無料または低額で不安を聞き取ったり、他の支援期間につないだりする仕組みで、賛同者が次々と相談室を立ち上げ、全国50カ所以上に広がった。6月には「ネットワーク研修会」を開き、各地の取り組みを共有した。

   一方で国の取り組みは道半ば。国会は12年の障害者総合支援法などの付帯決議で、「親亡き後」を見据えて障害者の地域生活を支援するべきだとの内容を盛り込んだ。国は相談を受け付ける場として、自治体に「地域生活支援拠点」を整備するよう求めてきたが、18年4月時点で整備が済んだのは、全国の約1700市区町村のうち、約230にとどまる。

   佐藤さんは「一番避けたいのは、誰にも相談できないまま親子が年を取って、共倒れ状態になっていまうこと」と指摘する。高齢の親が障害がある子どもの面倒を観続ける状態は「老害介護」と呼ばれる。「準備は早ければ早いほうが良い。苦労を抱え込まずに、気軽に相談してほしい」と話した。


 

マイナンバーカード 普及促進
 ポイント付与 決定
  キャッシュレス促す
   デジタル閣僚会議


   政府は3日、行政手続きの電子化を推進する「デジタル・ガバメント閣僚会議」を首相閣僚で開き、マイナンバーカードを持っている人を対象に、スマートフォン向け決済サービスに現金をチャージすれば、全国どこでも使えるポイントを付与する方針を決めた。消費税率引き上げに伴いキャッシュレス決済の利用を促す対策の一環で、2020年度に国費で実施。普及率が13.9%(8月29日現在)にとどまるカードの交付拡大も狙う。

   付与するのは「マイナポイント」。填補でスマホを通じてQRコードで決済することなどを想定している。月内にも関係省庁や事業者による協議会を立ち上げ、制度設計を進める。付与するポイントの割合も今後検討するが、政府が経済対策として19年10月から始めるプレミアム付き商品券は購入額1万円に対して2500円分を上乗せする仕組みで、これを参考に検討すると見られる。

   政府は当初、一部の自治体が住民に付与している「自治体ポイント」の枠組みを活用する考えだったが、ポイント利用可能な填補を自治体が独自に募集するなど準備が必要。すでに普及が進んでいるスマホ決済サービスと連携した方が「より幅広い人にとって使い勝手がよい」(総務省)ため、方針転換した。

   会議では、マイナンバーカードの普及に向けた工程表も策定。現在の交付枚数は約172万枚だが、カードを健康保険証として利用できる21年3月末に6000万〜7000万枚まで拡大、23年3月末にはほぼ全ての国民が取得することを想定した。

 

FSBの常設委 議長に氷見野氏
 日本人初


   金融庁は2日、氷見野良三金融国債審議官(59)が、主要国などの金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)が設置した常設委員会の議長に1日付で就任したと発表した。日本人としては初で、任期は2年。米フェイスブック(FB)の暗号資産(仮想通貨)「リプラ」への規制の在り方などを議論する見通し。

   FSBは、2008年のリーマン・ショックを機に、世界的な金融危機の再発を防ぐ目的で従来の金融安定化フォーラム(FSF)を改組して09年に設立された。氷見野氏が議長に就いた常設委は金融システムの安定を維持するため、規制監督上の各国の協調などについて話し合う。

   氷見野氏は1983年に大蔵省(現財務省)に入省。金融庁総務企画局審議官を経て、2016年から長官と同じ次官級の金融国債審議官を務めている。

フラット35 不正105件
 住宅機構 一括返済を要求


   個人の住宅取得を後押しするため低金利で貸し出す住宅ローン「フラット35」が投資目的に悪用された疑いがある問題で、住宅金融支援機構=[?]=は30日、105件の不正と49件の不正疑い事案を確認したと発表した。いずれも東京都の不動産業者が関与した契約。借り手に融資残額の一括返済を求めるとともに、借り手と業者双方に対し法的措置を検討する。

   機構は完済分を除く全国約72万件(2018年度末時点)の契約全てを点検しており、さらに多くの悪用が発覚する可能性がある。

   賃貸に出す目的で買った物件を居住用と偽ったり、購入価格を水増ししたりして融資を申し込んでいた。業者は販売実績を上げられ、ローンの借り手はうまくいけば家賃収入で返済できる手口だ。機構は「一連の手続きは業者らの指示で進められた」と認定した。

   調査によると、借り手の多くは20代〜30代前半の単身会社員で、東京近郊の1千万〜2千万円台の中古マンションを購入していた。17年前後の融資契約が大半だった。

   機構は昨年9月、外部からの情報提供で不正疑惑を把握。この業者が関わる113件(総額約23億円)の融資対象物件について、購入目的や居住実態の有無を調べた。うち105件の不正を確認し、残り8件は調査に時間がかかっている。49件は調査過程で新たに不正の疑いが見つかった融資で、別の業者も関わっているという。

   長期固定金利型住宅ローン「フラット35」は、本人や親族が住むことを条件に、機構と提携した民間金融機構が住宅購入資金を融資する。機構が金融機関から債権を買い取る仕組み。国から毎年二千数十億円の補助金が投じられ、耐震性が高い物件の金利を優遇するなどしている。機構は悪用防止のため融資審査を強化した。


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[?]=住宅金融支援機構
   1950年設立の住宅金融公庫が前進で、2007年に個人への直接融資を原則廃止して独立行政法人化された。資本金約7015億円(18年度末)は政府が全額出資。03年に取り扱いを始めた長期固定金利型住宅ローン「フラット35」を主な業務とする。監督官庁である国土交通省のOBが理事長に就任している。
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