Amazonにログインすると、「おすすめ商品」というページがあります。
Amazonで購入したりサーチした商品のデータを基に、ユーザーが好きそうな商品を選んで紹介してくれるという21世紀的なサービスです。
ただこれ、自分の趣味嗜好を客観的に見せつけられているわけで、見ているとちょっと恥ずかしくなります。
私は最近、レトロなSFやミステリ、イスラム関連書、中国の古典などをおすすめされていまして、イスラム関連というのは千夜一夜物語が好きなのでなんとなく分かるのですが、中国の古典というのがひどいのです。
「中国の性愛術」とか「秘本 尼僧物語—中国性奇譚」とか「中国艶本大全」とか。
一体どうすればAmazonさんの誤解を解く事ができるのでしょうか。
最近「金瓶梅」を買ってしまったせいなのでしょうか?でもあんなに直接的なエロスだとは思わなかったんです。
ちがいますちがうんです。
それはそれとして、この「おすすめ商品」がすごいな、と思ったのは、中野美代子さんの「西遊記」をおすすめされたことです。
こんな本がある事も中野美代子さんの事も全く知らなかったのに、実は私、中野美代子さんの本を既に持ってたんですね。それがこの「カニバリズム論」です。
すごくないですか。的確に好みを判断されてるような気がして、ちょっと感動しました。
そもそも存在を知らないから調べようがないという作品を紹介してくれるこのシステム、顕在化していない欲望を掘り起こして消費に繋げるという構図が、私のような心の弱い人間を破産に追い込むのではないかと不安になるほどです。
21世紀を生きるには強い心が必要なようです。
で、このカニバリズム論ですが、ちょっと気持ち悪い話でお昼に読むにはふさわしくなくて申し訳ないので、以下は自己の判断でお読みになっていただければと思います。
カニバリズムというのは、いわゆる食人のこと。宗教的・文化的なもの、フェティシズム的なもの、極限状態でのやむにやまれぬ行為など、色々あります。
日本でも「骨噛み」という風習があったそうで、これは文字通り親しかった故人の骨を噛むことで愛情や追悼の意を表すものだそうです。
また、中世ヨーロッパあたりでは「没薬(ミルラ)」という高級珍奇な薬が珍重されていたそうですが、これはエジプトなどで発掘されたミイラの破片や粉末のこと。南蛮貿易で日本にも伝わっており、「ミイラ取りがミイラになる」という言葉はここから生まれたとか。
これもカニバリズムといえばカニバリズムなんでしょうか。
「カニバニズム論」では中国のいわゆる残虐史や、古今東西の歴史・文化、事件、フィクションを織り交ぜたエッセイ集。
それほど生々しくなく(多分)、興味深くて面白いです。
(編集:宮)
西遊記〈1〉 (岩波文庫)/中野 美代子

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