おれはネオソウルというジャンルの音楽が好きで、前にも紹介したけど特にD'Angeloが好きなのである。中でもセカンドアルバムのVoodooはベースのPino Palladino、ドラムのQuestloveとの徹底したレイドバックが絶妙で、ともすればアンサンブル崩壊寸前までそれは徹底されている。

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ネオソウルにジャンル分けされるアーティストは様々いるが、おれの中ではD'Angelo≡ネオソウル、みたいなところがあり、このジャンルにおいて彼を超えるアーティストはいないと思う。その証拠に、ネオソウルを語る上でもD'Angeloを中心に話を展開する書籍が複数出版されている(どっちも持ってる)。




ちなみにおれは今までD'Angeloのライブに2回行ったことがあるが、初めて行った2015年のサマソニのライブは圧巻だった。まさに本物の中の本物、キングがそこにいた。これがD'Angeloなんだ、これがネオソウルなんだと、まじまじと感じさせられた。soundcloudにライブ音源が公式でまるっと上げられているので、一聴の価値あり。


以下ではつべで聴ける代表曲を上げてみる。まずはこの曲。



タイトルからも「褐色肌の女性」への愛を語っていることがわかるが、一方でBrown Sugar = ヤクの意味も込めているらしい。比喩というか、ダブルミーニングというやつか。



セカンドアルバムの中で一番のキラーチューン、たぶん。イントロからドラム、ギター、ベース、ボーカルの順に曲が展開されるが、とにかく全部縦がズレズレ。でもアンサンブルは揃って聴こえる不思議。というより、これがアンサンブルが成立するギリギリなんじゃないかと思う。まともにリズムを取るのも難しいくらいのレイドバック。

次はライブ版を聴いてみよう。さっきのBrown Sugarはライブでは必ず演奏するが、ツアーごとにアレンジをガラッと変えている。もはや歌詞以外ほとんど同じところがない。


2000年前後、Voodooをリリースした時の音源。途中までは原曲に沿っているが、ボーカルが入るところからまったくフレーズが(それどころか調性すら)変わっている。実はこれは、A Tribe Called Questの曲のトラックをそのまま使っているのである。



ちなみにATCQの曲も、元々はAverage White Bandというバンドの曲からサンプリングを行いこの曲を作っている。



こちらは2012年から始まった、3rdアルバム「Black Messiah」リリースに合わせたツアーのバージョン。サマソニに来たのもこのツアーの一環だった(と思う)。これはこれでまたバッキングがガラッと変わってるのが面白い。



これも元ネタがあって、今度はP-Funkのバンド、Parilamentのこの曲である。アップテンポにすることで原曲とまったく違うノリを出している。

以上のことからわかるように、ライブでのD'Angeloはこんな風にいわゆる「クラシック」と言われる過去の名曲からトラックを拝借して、自分の曲に使ったりしている。そこには過去のアーティストに対するリスペクトが感じられるし、それを知っている人にとっては思わずニヤリとする演出、また知らない人にとってはそれらの名曲を知るきっかけになる。このように過去と現在の橋渡し的な存在であり、そんな音楽活動を続けてくれるからこそ、D'Angelo は多くのリスナーから支持されるのではないか、とおれは思っている。

まぁ今回の話は、ことブラックミュージックに関して「〇〇の影響を受けた」とか「〇〇の系譜の延長にいる」みたいなのが良しとされる風潮がある、という前提に沿うものなのだが、それを敬遠する人や興味がない人もいるだろう。でもおれはそんなブラックミュージックの風潮が好きだし、そんな風にしてどんどん古い音楽を掘り下げ、またそこから繋がるアーティストを見つけることができるという楽しみ方もある。それはインターネットを使って自発的に探すこともあれば、たまたま人から教えてもらって見つける場合もあったりする。そんな風にして、自分の好みの音楽を探していくのは楽しいし、単純に好みの音楽を探す手段として手っ取り早いのである。


中途半端だけど今回はここで終わり。