或蜂 | Listening is Believing

Listening is Believing

RUGBY Dinner No Side Club店主/リバイアスミュージック代表 竹内方和のプライヴェート日記

$Listening is Believing-2010.2.10

仕事や読書など何かしながら聴いていると
思わず音を止めたくなる音楽には大体2つの傾向があります。

まず一つ目が、
個人的趣向の枠はおろか、
どうでも良いようなBGMにもならない音楽、
そしてもう一つが、
体全体に覆いかぶさってくる音楽の力に圧倒されてしまい、
何かしながらでは到底聴ききれない音楽。
どんな音楽にも、魂や音霊/言霊が宿っているものですが、
それは、時にそれが自分のフィーリングと
有機的に融合した時に起こる
予期せぬ化学反応とでも言えばいいのでしょうか。

久々に日本語ラップで後者の音楽と出会いました。

あるぱちかぶと "◎≠(マールカイキ)"

言葉のデリバリーと歌詞、
そして感情の琴線を揺さぶるビートとが創り出す
一大叙情詩は唯一無比。
身震いすら感じるような透き通った声で
早口に言葉を紡ぎ出し続けているにもかかわらず、
あまりに言葉=パンチラインが頭と心に入って来るので
気がついたら、仕事そっちのけで
歌詞カード片手に聴き浸ってしまってました。
特に無尽蔵とも思える語彙から弾き出される
独特の形容には、感嘆の声すら出ません。
たびたびドキッとさせられました。
本人とは過去に仕事をしたこともあり、直接知っているのですが、
それもある意味では一つのハードルになるところを
言葉という高品質のスリムな筋肉でひょいと飛んで、
ゆっくりトコトコと走り去って行ってしまった、
聴き終えた時、そんな感覚を抱きました。

「大震災」、「故障かなと思ったら」、
「或蜂」、「日没サスペンデッド」、
そしてリバイアスからの音源でもある「頭"」。

聴きどころ満載、一時間弱の言葉の小旅行。
様々な迷いを謳う吟遊詩人。

「或蜂が一番と思うことはないわけではない」

ブラボー。