小説

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現代的な魔法世界の話…。SFもどきです。

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1)
 如月咲は、後悔していた。
 この子は、どなたですか?と訝しがる今日の客に、先に、彼女と同席していたイオのことを、咄嗟に、マネージャーですと紹介していたことにだ。
 
   ( 今さら、にせマネージャーとか言えない......。 ) 
 

 そんなイオと客は、共通の話題で盛り上がっている。 

 
   「 へぇ?お若いのに、古い漫画の事とか詳しいんですねぇ。 」
 

 とか、咲が生まれる前の漫画のコアな話題で、会話に花を咲かせている。さすが、漫画の神だなと、二人の話を聞いていると、唐突に商談になった。雑誌を立ち上げるので、連載させてほしいというのだ。
 咲は、条件付きで、受けることにした。
  
2)
 月埜宮市町居町にある丑嶋つるぎの隠れ家にて、テレビに映る剣道大会を見ながら、つるぎは、
むさ苦しい対面に立つ、元軍神だという髯面のおっさんに、一つの提案してみた。
   
         「 んじゃ、スポーツの神とかいいんじゃね?」
  
  
         「 なんだ?そのスポーツとやらは?」 

  と、スポーツという聞きなれぬ言葉に戸惑うウルに、つるぎが詳しく説明をすると、彼は、納得したように、その座に収まったのだった。

3)
 一方、月埜宮市佳街町の繁華街にあるカフェ・サンドリオンの休憩室で、巫女城詩織は、目が覚めた。いつの間にか、寝入っていたようだ。

          「  ん?毛布。」  
  
         「  あ、マスター、起こしてしまいましたわね。」
  
 対面のソファーには、逸見神酒が座って、詩織に声をかけた。
 彼女は、未だに詩織のことを、「マスター」と呼び、世話をやきたがるのだ、この毛布も、神酒がかけてくれたのだろう。彼女に礼を言うと、照れくさそうにしていた。さて、仕事場に戻らなくてはいけない。
詩織は、ソファーを後にした。

【おわり】

 
 

1)
 それは、如月咲が、自宅兼スタジオとなる自室で、漫画を描いていた午前のことだった。その日は、人と待ち合わせをしていて、午前中に来客を迎える予定が入っていたのだ。自分の世界に入って描いていて、一息つこうと台所の冷蔵庫にあるグレープフルーツジュースを飲もうとしたときに、玄関のチャイムが鳴らされていることに気づいた。
    
  「 .........。と、客が来ていたのか。待たせてしまったな。」
 

 玄関の扉についた確認用の魚眼レンズで、来客を確認しようとするが、頭に飾られたヘッドドレスと上下に跳ねるツインテしか見えない。  今日の客は、スーツ姿の成人女性だし、近所の子のいたずらかと思ったが、どこかで見たことがあるヘッドドレスでもあるし、何かひっかかるので、意を決して、どなたですか?と一言、扉を挟んだ先にいる客に対して、咲は声をかけてみた。

2)
 天界にある主人が不在の主神殿で、軍神ウルは、困っていた。
 主神決定戦が終了し、誰かが主神に収まった瞬間、ウルも他の【信仰対象】持ちの神々も、以前の【信仰対象】を持ったまま復活した。
 
今、現在、【設定の間】では、次期主神が、次の世界の在り様を設定している最中らしいのだが、彼の【軍神】という縛りが、唐突になくなってしまったのである。ただのウルになってしまいどうしようかと悩んだ彼は、下界に降りることにした。

3)
 咲が扉を開くと、いきなり、来客に抱き着かれた。
   
  「 サキ.........!ボクだよ、会いたかった。」
 

  「 えっ?イオ。なんで?」
   
 もう敵となるような存在はいない、咲を罠にかける必要もない。
 だとしたら、本物だろう。しかし、消滅した彼女が何故?
   
  「 あ、そうだね。とりあえず、説明するよ。あがっていいかな?」
 
  イオは、抱き着いた咲から距離を置き、茶目っ気のある笑顔を見せた。咲は、唖然とした表情を、柔らかな笑みに変え、イオを部屋に案内したのだった。

【月曜につづく】

1)
 いっちゃんのバーで、巳己と陽詩は、唐突に出された明日香の発言に、驚いてしまった。巳己(みき)は、聞き間違いかと思って、もう一度、明日香に尋ねてみる。
   
    「 ごめん、明日香。今、何て言ったの?
      銀の世界で暮らすって、聞こえたんだけど。」
  
    「 うん。そうだよ。あたしは、向こうの住人になる。
      もっと詳しく言えば、【朱雀の巫女】として、銀の世界を
     発展させたいの。マリアさんとも話はついているし。
  
  やる気充分な明日香に、巳己と陽詩(ひなた)は、食い下がった。
  
    「 いや、いや、いや。月埜宮市(こっち)の生活はどうするのよ。
  
    「  そうだよ。学校もあるし、親とか兄弟とかいるんでしょ。
          
  二人の説得に、明日香は、寂しそうに答えた。
   
    「 いないよ。親も兄弟も。」
  
 巳己と陽詩は、その明日香の言葉に息を呑んだ。

2)
 そういえば、巳己は、明日香の家に遊びにでかけたことがなかった。
 ほとんどが、部活を含めた学校と【歳の巫女】関係でしか繋がりがなかったことを、ふと、思い出していた。陽詩も、同じで、スマホのSNSでのチャット仲間で、同級生、【歳の巫女】仲間という繋がりしかなかった。
 愕然とする二人に、明日香は、普通の調子で、たまには月埜宮市にも遊びに行くと、諭され、明日香の移住話は、打ち切りとなったのだった。

3)
 そして、巳己と陽詩は、懐かしの月埜宮市に戻ってきたのだった。
 正確には、同市の繁華街、その路地裏に、ひっそりと占い店を構えるネムの店へと、正面に鎮座しているアナログなテレビも電源が切れて、沈黙をしている。試しに、ネムを呼んでみたが、反応はなかったので、二人はネムのテレビに一礼をして、店を出ると、猛暑にうだる繁華街の人混みの中に消えていった。

【つづく】

1)
 詩織が、気が付いたら、主神殿の大広間に仰向けになって、仲間に囲まれていた。その先には壁にもたれるようにして、ハナエルとカイアスもいる。
 詩織は、皆から、一通りもみくちゃにされた後、異空間にあるいっちゃんのバーで、ハナエルとカイアスを含めて、何があったかを語ることにした。

2)
  いっちゃんこと、逸見神酒のバーに戻ると、詩織は、人間に戻れたと、彼女に抱き着かれた。これで、正真正銘、逸見神酒(いつみ みき)になれたと感謝されたが、もう、蜂蜜酒は作れなくなってしまったらしい。
 場が落ち着いたことを見計らって、ハナエルが詩織に問いただした。
   
   「 さて、シオリに聞きたいことは、いくつかあるけれど、
   あなた、私とカイアスに主神の権利を譲ったでしょ?」
   
   「 うん。私なりに考えてさ。もし、私が主神になった後にさ、
   両親や友達や親しい人が亡くなって、五千年もたった独りで
   世界を司るなんて、私には、 耐えきれなかったから。
    それに、ハナちゃんとカイアスのほうが、慣れてるだろうし、
   これからの五千年、二人なら、寂しくないかなって思ったの。」
   
 詩織の説明を聞いて、ハナエルとカイアスは、黙考している。
 詩織の言葉を咀嚼して、納得したという表情をすると、
  
   「 なるほど、よくわかった。わらわたちに任せよ。
   
  カイアスが、まず賛同し、ハナエルがカイアスの賛同に続いた。 
   
   「 まぁ。あたしは、元々返り咲くつもりだったし。」  

  その後、どのような願い事をしたのか尋ねられたので、逐一答えて、引継ぎを終えた。あとは、二人の仕事だ。

3)
 金の世界と銀の世界も元通りだと、マリアとサクヤに告げたら、マリアは特に喜んでくれた。で、戻るのは二人だけかと思ったら、明日香も、向こうの世界に渡ることにしたという。もちろん、朱雀ことすーくんも一緒だ。
 他の三柱の聖獣も、未だに詩織ほか、それぞれの巫女についている。
   
   「 びゃっこくん。私、ただの人間になったけどいいの?」
  
  と、詩織が尋ねたら、別に構わないのだそうだ。
  とりあえず、説明することは説明して、詩織たちは、天界の主神殿を離れ、元の生活に帰ることにしたのだった。    
  

【つづく】


1)
 ハナエルにカイアス、この二つの対なる存在は、私の駒だった。
 だが、今、目の前にいるハナエルも、六感の全てが、あらゆる痛みとして伝わる私の呪いにより、気絶してしまったカイアスも、このことを知らない。自らもまた、コマであったことを知らない道具に、私は告げる。

    「  私か?私が、全ての黒幕だよ。」
 
  絶望を道具に刻むために、私はネタばらしをしよう。

    「  黒幕........???」
   
  怪訝な表情で、ハナエルが問いかえしてきた。
  
   「 さよう。我らこそは、世界を裏で操る......。」

2)   
  漆黒の闇に彩られた世界で、異彩を放っていた迷彩服の男は、自慢げに、ハナエルに、自らを全ての黒幕だと語り、さらに、世界を裏で操るとまで言ったところで、唐突に消失した。それと同時に、ハナエルに主神の力が宿ったことを感じる。痛みの世界から解放されたカイアスが、ようやく気づいたので、彼女におかしなことはないかと尋ねたら、カイアスも主神の力を取り戻したという。つまりは、主神格が二人存在することになるのだが、これは、いったいどういうことだろう?
  ハナエルが悩んでいると、カイアスは何かに気づいたように呟いた。
   
  「  ふむ、そういうことか。」

  「  カイアス、何か、わかったの???主神が二人になった訳。」
   
  カイアスは、不思議そうにしているハナエルに、確信を持って告げる。
  
  「 おそらくは、シオリだ。彼女が、【設定の間】で設定したんだ。」
  
  「  あたしたち、二人を主神とするようにって?」
 
  カイアスの説明に、なるほどと、ハナエルは思った。
  ということは、心臓がとまったかと思われた詩織だが、死んではいなかったということになる。

3)
 最後の願い事を、【設定の間】で言い終えると、凄まじい閃光がして、詩織は、天界にある主神殿の大広間に倒れていた。凍っていた時間が動き出し、他の少女も元通り蘇生しているようだった。いきなり、倒れた詩織を心配して、十一人が詩織の周りに集まっている。
  こうして、詩織の主神体験は終わったのだった。

【つづく】
  
    
   



1)
 何もない純白の世界。場外アナウンス、もとい、【天の声】さんの説明によれば、【設定の間】とかいう場所で、詩織は、次々と要望を並べていた。
   
    「 戦争のない世界にしてほしい。」
  
    「 みんなが、幸せに暮らせる世界にしてほしい。」
   
    「 紛争は、スポーツで決着をつけるようにしてほしい。」
  
 ・・・・エトセトラ、エトセトラ。
 それは、ささやかな願いだったり、大きな願いだったり、十二の設定を埋めるためなのか、自らの望みを叶えたいだけなのか、詩織は語り続けた。そして、その願いは、意外な流れを生み出す。
 
2)
 電撃を受けたかのような電撃様痛と、焼けつくような灼熱痛、あらゆる六感が痛みとなる異痛症に苛(さいな)まれながら、さしものカイアスも、気を失ってしまった。ハナエルは、たった今、起きたことに理解が追いつかない。得体のしれない男は、淡々とハナエルに語りかける。
   
    「 これは、私をうらぎった時のための、安全策だよ。」

    「  あ、安全策ですって?あなたは、いったい。」
   

  警戒した体勢で、ハナエルは、男に問い返した。 
 
    「  私か?私が、全ての黒幕だよ。」

    「  黒幕........???」
   
  怪訝な表情で、ハナエルは、男に、更に問い返すと、解答を語りはじめた。自らが、世界を裏で操ってる一団の一人だと。
   
3)
 詩織の主神としての権限を使った世界の設定は、未だに続いていた。
 つらつらと思いつくまま述べているので、設定できないものもあったのだ。その都度、やり直して、残り三つという、今に至る。
  
    「 世界を裏で操り、不要な混乱をもたらす輩を無くして。」

    「  本当のハナエルとカイアスを、主神にして。」
   
    「 最後にあたし、巫女城詩織を、人間に戻して。」
   
 その瞬間、真っ白だった世界に、ビッグバンが起きた。

【つづく】



 
  
 

 

  
 
1)
 地平線すらないモノトーンの空間で、詩織は、たった独り、残されていた。死を覚悟するほどの、普通では痛みと感じない刺激をも痛みと感じるアロディニアと、焼け付くような痛みの灼熱痛に、電気ショックに撃たれたかのような電撃様痛が、打ち寄せる波のように無限ループを起こして、死ぬまでその痛みが続く責め苦から、唐突に開放され、気が付いたら、詩織は、この場所にいた。痛みから解放されたのは、喜ぶべきところだが、まず、ここがどこなのかがわからない。
   
   「 ど、どこよ。ここ?」
   
 周囲を見回してみるが、山も海も町影も、人の姿も、野良猫や野良犬の姿もない、というか、生活感も、もっと根本的に、生命が存在している気配自体がなかった。ところが......。
   
    「 ここは、主神決定戦の勝者が、【設定の間】デス。
      十二の指示で、世界が構成されなおしマス。」
     
 場外アナウンスのような女性の声が、空間に響いた。

2)
 カイアスの攻撃を、男は素手で止め、反撃を加えていた。
     
      「 なっ。わらわの攻撃を、素手で止めた?」
    
  呆気にとられたカイアスに、詩織が味わった極限の痛みラッシュが襲い掛かった。
死を覚悟するほどの、普通では痛みと感じない刺激をも痛みと感じるアロディニアと、焼け付くような痛みの灼熱痛に、電気ショックに撃たれたかのような電撃様痛が、打ち寄せる波のように無限ループを起こして、死ぬまでその痛みが続く責め苦が、カイアスに襲い掛かったのだ。
    
      「 ぐああああああっ!」
   
   カイアスのその叫びも、とてつもない痛みとなって、彼女に地獄の
責めを体験させ、闇の中を七転八倒する。一連の出来事を、ハナエルもまた見ていた。そして、カイアスが倒れたとき、近づいて回復魔法をかけてあげて、次は私の番だと、男に対峙した。

3)
 「 じゃあ、日常を返して。世界は、以前と変わらない姿に。」
    
 モノトーンの空間で、詩織は、最初の指示を出した。

 【つづく】

1)
 別の気配がしたのは、ハナエルとカイアスが、闇以外に何もない空間で、ハナエルが気絶している間の出来事を、語り合っていたときのことである。
   
      「 誰だ ?!」

 カイアスの呼びかけに応じるように、漆黒の闇に存在感を示すような輪郭の人影が現れた。しかも、色彩の無い世界で、しっかり、迷彩色に彩色されている。傲慢の末に、暗黒竜に喰われた男が、そこにいた。
  
     「  アレス私設軍指揮官。名は、どうでもいいだろう。
        見てのとおり、普通の人だ。」
  
  普通の人も何も、人が、この場所にたどり着ける訳がなかった。
     
2)
 本来なら、私がこの場所にいるはずだったなどという世迷言を、目の前の迷彩服の男が、話し続ける中、カイアスは、邪魔でしかない、目の前の男に攻撃を始めていた。
  
     「  邪魔だっ!
  
 これから、どうすればいいのかわからないときに、また問題を重ねられたらたまらない。カイアスは、男を始末にかかった。

3)
 あぁ、私は、苦しみながら死ぬのかと、詩織が、痛みに囲まれながら、諦念していると、急に痛みが軽くなった。気が付くと、そこはネムが作った世界に似たモノトーンの世界だった。四方を確認するが、誰もいない。
 いったい、何が起こっているのだろう?と、疑問を呈していると、場内アナウンスのような声が、空間に響いた。

【つづく】

 

 
1)
    「 なんだって、そんな?」
 
 それは、マリアが、詩織に覆いかぶさったサヤカのために、不可能となった心臓マッサージの手をとめ、カイアスに尋ねていたときに、起きた出来事だった。
 
    「 おそらく...。ん?」
 
 マリアの問いに対するカイアスの説明が、話す早々で止まってしまった。
 
    「 おそらく...。ん?どうした。マリア。」

 それは、カイアスの見つめるマリアの開いた瞳孔が見入る視線の先。
 すなわち、カイアスの背後にあるということだ。カイアスは、何事かと思い、振り向くと同時に、とさっという何かが倒れる軽い音が、最初は降り始めの雨音のように、やがてゲリラ豪雨のように、大広間に鳴り響くと、
カイアスは、絶句することになる。
 
    「 こ、これは、詩織が死んだ影響か?」

 カイアスの背後には、今まで共に戦っていた少女たちの死体と、崩壊しつつある世界。それらが、風景ごと窓ガラスが割れるように破壊された。
  
2) 
 天も地も東西南北も無く、色彩もない漆黒の無の世界に、カイアスとハナエルは居た。最初に気が付いたのは、今の今まで、気絶していたハナエルだった。呆けた顔で、起き上がり、闇を見渡しながら、つぶやいた。
 
     「 ここは、どこ?」
 
     「 やっと、起きたようじゃの。」
 
  声がしたほうに、顔を向けると、途方に暮れたカイアスがいた。
 
     「 カイアス!」
 
     「 まぁ、待て。今は休戦しようではないか。」
 
  ハナエルは、カイアスの姿を見るなり、臨戦態勢をとったが、カイアスに戦う意思はないようで、落ち着いた声で、白旗をあげる。
 
     「 休戦?だって、貴女とあたしは......。」
 
     「 うむ、敵どうしだ。それを、水に流そうとは言わん。
       ただ、今は見てのとおり異常事態じゃ。
       互いの立場は隅に置いて、協力しあうべきだろう?」
 
  カイアスの提案に裏はないか、一瞬、ハナエルは疑ったが、言われれば、彼女の言うことは正論なので、ハナエルは、カイアスの話を聞くことにした。何せ、気絶してからこっち、何が起きたか解らないことが多すぎるのだ。カイアスの対面で、カイアスに向かい合って、ハナエルは事のあらましを聞くことにした。
 
   「 わかりました。では、私が気絶した後の話を聞かせてください。」
 
  
 3)
  カイアスから、話を聞き終えたハナエルは、嘆息した。
  ハナエルが気絶なんてしていた所為(せい)で、面倒くさい事態になっているらしい。事態の収拾は、ハナエルの手で行おうと、腹をくくったところで、カイアスに協力を仰ごうとすると、二人以外の誰かの気配がした。

【つづく】