なぜか気になったシニアひとり旅の世界🙄


コロナの呪縛から解放され、ようやく気兼ねなく旅に出られる日々が戻った。長い休みにはどこへ行こうかと胸弾ませるが、若い頃は未踏の地を探していたのに、最近はかつて訪れた土地への思いも。サ旅では新たな出逢いに惹かれるが、懐かしい思いに浸るのも悪くない。

海外貧乏旅行のルポで多数の作品がある著者も、コロナ禍と加齢により身近な土地を巡る日々を過ごしていた。花巻のデパート食堂から始まり、往年の思い出を辿りながら、日常に横たわる慎ましい時間を旅する。若い頃には気づかなかった世界が、シニアには広がるようだ。

若者は通り過ぎたがシニアの域にはまだ遠い自分。かつての著者のバイタリティも理解できる一方で、滋味あるこの感覚に共感できる思いも。身近な旅は再現性が高く、より緻密な彷徨いが楽しめる。懐かしさに浸る時間の旅ができるのは、まさにシニアの特権ではないだろうか。

著者の作品はいくつか購入したが、積読からすべて手放してしまった。それを後悔してしまう思いに。遠い未知の土地や、夢心地の豪華な世界にも惹かれるけれど、身近で気取らぬ細やかな旅にも思いを馳せる貴重な時間がある。そんな良さに気づかされた一冊だった。