学校終わりの集合場所は、商店街から外れたレコード屋。

そこでタバコを吸いながら、店長と与太話。

時には仲間が集まって、バカみたいに騒いだ。

同じ学校の先輩や後輩。違う学校の奴や、街で有名な不良から、社会人まで。

店長の人脈も凄いが、高校生の僕には刺激的な場所だった。


出会いはそこだった。


ある日曜、欲しいCDを探しに店長の店へ行ったら、近くに出掛けるからと店番を頼まれた。

高校二年の客に頼まれてもと思ったが、とりあえずレジの鍵だけは閉めさせて留守を預かる事にした。

失礼な話だが、どうせ誰も来ない店だ。実際店長の道楽で開けている店だから。
しかし留守の間に客が来てしまった。

少しぽっちゃりとした、色白の女。

余談だが僕は人一倍鼻が効く。
入り口が開く刹那に、その女が纏った咽ぶ程に甘い香水が鼻腔を貫いた。

髪は金色に近く、少し傷んでいる。
太目のスタイルにもかかわらず短いスカートにサンダル、胸元が大きく空いた上着。

今でもよく覚えている。

当時煩悩炸裂な僕の目の前に、余りに強烈でエキゾチックなインパクトをもたらしたのが、その女だった。

名前は、カナコ。

『あれ?店長は?店長~?』

仕方無くレジ裏から顔を出して不在を伝えようとするより早く、カナコはそのスペースに入ってきた。

『店長知らない?』

呆気に取られる僕を気にせず、カナコは向かいのソファにドサッと腰を下ろし、タバコに火をつけた。

『店長いないんだね。つまんないの。』

『あ、はぁ…』

目のやり場に困った。
目の前には大きく膨らんだ胸の谷間が広がり、視界を下げても、パンツのギリギリまで迫る位にさらけ出されている。

身体の芯から沸々と湧き出すムラムラとした感情を必死に堪えつつ、しかし徐々に股間の辺りに、如何ともし難い素直さが顔を出し始めた。

『童貞君なの?』

不意を突きつつ、一瞬にして僕の全てを貫いた。

同級生の男になら言われても、出会って数分の女に放たれた事によって、僕はもう頭が真っ白になった。

『ウケる(笑)可愛いじゃない。』

そう言ってカナコは僕の隣に座り、豊満な乳房をわざわざ腕に当ててきた。


『お姉ちゃんのおっぱい見たいのかなぁ?』

タバコ臭い吐息に混じりながら、味わったことの無い戦慄が五臓六腑にまでつんざぬく。
田舎は北関東の北端。

踏み出せばすぐ東北になる。

中途半端に長く続く、雪もそんなに積もらない微妙な冬と、短い夏。

うっすらと紅葉に萌える秋。

パルプの香りが咽ぶ町が、青春時代。

中途半端に頭の悪い高校で、ただ漠然と通いながら、無理矢理入れられた部活に精を出す。

目立つ紺色の学ランと、むやみに高台に建ち構える校舎。

迂だつの上がらない毎日を

それでも精一杯過ごすために。
とことんグレた奴も居なければ、抜きん出ていい奴もいない。

何でもない高校の何でもない生徒が、何でもない日常を、ただ何となく謳歌する。


しかし日常には何かしら誘惑があり、その点僕はその禁忌な誘惑に手を染めたから、今こうしているのだと思う。

全ての始まりは、そこだったから。