この短いお話は
その昔に 私が永井荷風の文章を好きになるきっかけでした
鐘の音ではなく 鐘の「声」と
荷風が記したのは その音色を愛してやまなかった証かと私には思えます
荷風は 前の住まいでは隣家のラジオの音に 随分と苦しみ悩まされていたと読んだ事があります
ラジオの音声と
しじまに柔らかく耳に届く鐘のねは
荷風でなくとも くらべるまでもなく異質なものであり
鐘の音色を「声」と表現する程に
慈しむ様に愉しんだ荷風の美的感覚がこの様に 胸に染むような文章で表したけれど これ程に鐘のねを美しく表現しているのは至高と言っても良い位に
私の中に浸透しました