人生の暗部へ執拗なまでに迫り続ける問題作だ。
松たか子と鈴木杏。何はともあれ、若手実力派女優の感情表現が素晴らしい。松が突如気を失ってバタッと倒れれば、鈴木は取り付かれたような表情で父親への一途な愛を語り続ける。あまり馴染みのない薄気味悪いキャラだ。それでも、カーテンコールでの2人の表情を見ていると、すべてを出しきったような清々しさが感じられた。
非日常的なことが、次から次へと起こるホテルに招かれた夫婦。そこに集う主人や女中、父娘は何かをひた隠しにしている。1つの部屋を舞台に、現在と過去を激しく行き交いながら、少しずつ真実が明らかにされていく。
水の使い方が実に上手かった。ずぶ濡れになって口論する男女の姿は、それだけで情緒的に感じられるもの。加えて、死の象徴とも言える彼岸花を無数に流すことで、幻想的な雰囲気を醸し出していた。見ていて辛いことが多い芝居だけに、視覚的な彩りは骨休めにもぴったりだった。
|