逆光

  


  アラームが鳴った。あと5分だけ寝ようと、目を瞑った。スヌーズは、ほんの数十秒後に鳴ったかと感じられる。毎日を縮小したという風な朝は憂鬱にまみれる。


  すり減る踵を気にするも無く、電車に飛び乗った。息が荒くなっていることを隠そうと俯くと、革靴の爪先は知らぬ間に剥げていた。

あぁ。まだ3ヶ月しか履いてないのに


  印刷した紙をプリンターから取り出すと、またサイズが違った。気づけば1つも仕事をこなせずに、昼休憩でオフィスには誰もいなかった。


  仕方がなく、会社の食堂で1人、安い牛丼の食券を買う。窓際の端の席に着いて、急いで口に運ぶ。水で流し込もうと、箸を置くはずがコップに箸が当たって、床に落ちる。


  気づくともう窓の外は暗くなっている。既に少しずつ空席がちらほら見え始めている。早めに上がる理由が家庭にあって、奥さんと、よたよた走って玄関までで迎えに来る息子か、娘か。

  あぁ。早く帰る理由さえもない。


  電車には俯いて、疲れきったスーツ姿の人が頼りなく揺られている。あそこまで僕は落ちてないよな。と勝手に他人を見下して、自分を保とうとしていることからも目を逸らした。

  あぁ。何がしたいんだろうな。何してんだろうな。


  静かで真っ暗な玄関を上がる。靴紐もそのままに、無理矢理に剥がされた靴が、情けない顔をしている。



  スマホの通知音が鳴る。高校時代の友達だ。


  廃校になるという知らせであった。それを聞くとやはり寂しいもので、カメラロールにまだ少し残っていた写真を見る。


      修学旅行。文化祭。体育祭。


 

 眩しすぎるあの日々が、思い出されて自然と目が潤んでしまう。

 戻りたいけど、戻れないことを頭で分かっていても、やっぱり戻りたい。

 あの忙しくて騒がしくて、なんでも笑えたあの日々が。 



   変わりない日々を送る自分に、最後のエールだと感じる。

  

  

   変わらない日々に、変わらない過去が僕の背中を優しく押した。

 


     


     最後まで読んで頂きありがとうございます!