letheiteles1971のブログ

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昨年の初夏、隣組の旅行で駒ヶ根の温泉に行ったとき光前寺に立ち寄った。光前寺は光苔と霊犬早太郎伝説で知られたお寺だ。私の通った高校が駒ヶ根にあったので、光前寺は高校時代、駒ヶ根の友達の家に遊びに行ったついでに何度も訪れたことのあるお寺で、懐かしい想いを抱きながら見物した。私の高校時代には観光客などまばらだったのが、その日は空がどんより曇り、時々小雨がパラつく肌寒い日だったのにもかかわらず、駐車場には観光客の乗用車や大型バス数台が止まっているし、昔は一軒もなかった土産物屋までできていた。光前寺の参道には、今パワースポットとしてブレイク中の戸隠神社に匹敵する杉並木がある。光苔はその参道の石垣にあるのだが、あいにくその日は光苔の光っている様子は確認できなかった。杉並木の参道を歩くと、私が20代の時に祖母と二人で光前寺を参拝した時の記憶がよみがえってきた。

私は20代半ばには伊那に住んでいた。伊那から車で30分ほどの駒ヶ根には仲の良い友達がいたので、時々遊びに行く機会があった。ある時祖母に「駒ヶ根に行くなら光前寺にお参りしたいので連れて行け」と言われ、祖母を助手席に乗せて光前寺に向かった。車から降りると、光前寺の境内は大木の杉林に囲まれ、シンとした静寂の空気が漂い、観光客など一人も見あたらず閑散としていた。駐車場から本堂を目指して参道を歩き出すと、80歳を超えた祖母も曲がった腰を杖で支えながら私の後をついてきた。しかし5歩あるいて一休み、また5歩あるいて一休み…といった状態で、これでは本堂にいつ着くのか分からないと思い、途中から私が祖母を背負って本堂に向かう事にした。
祖母は昔の女性としては大柄な躯をしていて、若いとき桑を背負っている姿を後ろから見ると、まるで男が桑を背負って歩いているように見えるほど体力があった。近所の人からは「ジロー君のバアさんは力があって働き者だ」といわれていたぐらいで、痩せてはいたが、筋力もあり足腰も強く、そして働き者だった。しかしそのとき祖母を背負うと、まるで赤子を背負ったくらいの重さしか感じることができず、「バアさんはこんなに軽いのか」と改めて祖母の年齢を感じた。赤子のような軽い祖母を背負って参道を歩く道すがら「この姿は孝行息子の見本のような格好か、逆に姨捨伝説の老婆を山に捨てに行く姿だな」と、我ながら恥ずかしさが込み上げてきて、「どうか誰にも会わないように」と祈りながら本堂を目指した。

石川啄木の歌集「悲しき玩具」に、次のような歌がある。

 たはむれに
 母を背負ひて そのあまり
 軽きに泣きて 三歩あゆまず

母には子どもの頃から苦労ばかりかけつづけてきた。成人した今でも心配をかけるような生活から抜け出せない。たまには親孝行の真似事をしようと、母をたわむれに背負ってみたが、あまりに軽いのに涙が出てきて、「ああ、こんなたわむれはするべきではなかった」と後悔の気持ちが沸いてきて歩けなくなった。
実際に啄木が母を背負って歩いたのかは疑問だが、この歌の意味は大筋このような内容だと思う。
私もその時は啄木の心境だった。本堂の前で手を合わせながら熱心にお題目を唱えている祖母の後ろ姿は、若くして寡婦になり、女手一つで二人の子どもを養蚕と僅かばかりの田畑を元手に育て上げた明治女の老いた姿だった。もうすぐ老木が枯れて朽ちていくように、やがて訪れるであろう人生の終焉を迎える祖母。バアさんっ子だった私は、祖母を背負ってみて、あまりにも軽く感じた背中の感覚から「どうか百まで生きてくれ」と願わずにはいられなかった。
子どもを背負う事は、人間に限らず猿やチンパンジーも行う行為で、いずれも微笑ましい。しかし、逆に子が親や老人を背負うことはめったにない。猿やチンパンジーに限らず、動物世界でも、子が親を背負う映像をみた事は無いので、おそらく皆無だろう。
昔「一日一善 世界は一家 人類皆兄弟」の台詞で有名な、故日本船舶協会会長・笹川良一が、老婆を背負って階段を登るテレビCMが流されていた時期があった。私は見たことはないが、笹川記念会館、箕面市、全国の競艇場などに笹川良一が老婆を背負っている像(孝子像と言うそうだ)が存在するらしい。これは、笹川が59歳のとき、82歳の母親を背負って金毘羅参りのため、785段の石段を登っている様子を表しているとされるようだ。
親孝行を売り物にした笹川良一、老いた親にたわむれの親孝行をしようとしてためらった啄木、それぞれの人間性がみえて面白い。
私の祖母も「一回でいいからお遍路に行きたい」と時々言っていたが、祖母の願いを叶えてやる機会もなく逝ってしまった。
追記:最近老人を背負うのは、介護現場の職員達。自分の親を背負う機会は滅多にないと思うのに、他人の親ばかり背負っている職員の皆さんに敬意を表します。 ...
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