●マラセチア感染症


マラセチアは、真菌(カビ)の一種の酵母菌です。普通に犬の皮膚に存在する常在菌で、通常は害を及ぼすことはありません。乾燥した環境が苦手なマラセチアは、口周りや首、耳の中(耳介)、わきの下、下腹部、陰部周辺に寄生して、皮膚の表面のフケや垢に含まれている皮脂分を栄養源にしています。


犬の健康状態が良く、皮膚のバリア機能が損なわれていない状態では、マラセチアが常在していても、問題はありません。


犬が皮膚炎になると、皮膚のバリアが壊れて、角質やその下の表皮組織が傷つきやすくなります。それを修復しようとする作用が働き、新陳代謝(皮膚のターンオーバー)の速度が速くなり、それと一緒に、表皮組織の間にある脂肪分もどんどん皮膚の表面に押し出されていきます。


皮脂を栄養源としているマラセチアにとっては、エサが増える結果となるので、増殖して、さらに皮膚炎が悪化して行くことになるのです。


このように、皮膚のターンオーバーが速くなって、表皮の皮脂分が急増する皮膚炎を「脂漏性皮膚炎」と呼び、マラセチア感染症を引き起こしやすいとされています。犬に多い外耳炎も、マラセチア感染症が原因となっているケースが多いと言われます。


個体差はありますが、マラセチア感染症になりやすい犬種があります。


シー・ズーは、もともと中国のチベット高原が原産地なので、その厳しい寒さや乾燥に適応するために、他の犬種よりも皮脂の分泌が多い傾向があります。高温多湿の日本で飼われていると、皮膚がいつもベタつくような状態になりやすく、マラセチアが増殖しやすいのです。


また、パグやフレンチ・ブルドッグなど、顔や首にしわがある犬種などでは、そこにフケや垢がたまって、マラセチアが増殖しやすくなります。


マラセチア感染症の治療には、抗真菌剤が使われます。同時に、マラセチアの温床となる皮脂分を含んだフケや垢、過剰な皮脂分を取り除くため、角質溶解シャンプーなどで、洗います。


●ビクタスSMTクリーム (販売:大日本住友製薬)


犬・猫用ニューキノロン外耳炎・皮膚感染症治療剤


適応症: 犬、猫の細菌性及び真菌性外耳炎・皮膚感染症


組成 :

1g中 オルビフロキサシン 10mg

     硝酸ミコナゾール  10mg

     トリアムシノロンアセトニド 1mg


有効菌種: (犬)

スタフィロコッカス属菌、ストレプトコッカス属菌、シュードモナス属菌、大腸菌、マラセチア、パチデスマチス、皮膚糸状菌


薬剤の作用:


オルピフロキサシンの抗菌スペクトルは広く、グラム陰性菌はもとよりグラム陽性菌、マイコプラズマなどの広範囲の菌種に対して、強い抗菌力を示す。

オルピフロキサシンは、細菌特有のDNAジャイレースを阻害することにより、DNAの複製を妨げ、殺菌的に作用する。


硝酸ミコナゾールは、強い抗真菌作用を示す。低濃度では、主として細胞膜並びに細胞壁に作用して、細胞の膜透過性を変化させることにより、抗真菌作用を示す。また、高濃度では細胞の壊死的変化をもたらし、殺菌劇に作用する。


トリアムシノロンアセトニドは、合成副腎皮質ホルモン剤で、かゆみ、発赤、膨張など患部の炎症症状を速やかにしずめる。