北陸の冬特有の、鉛色の空が今日も窓の外に広がっている。

湿り気を帯びた冷たい風が、家の隙間から入り込んでくるような気がして、僕は思わずカーディガンの襟元を正した。

結局、次男もインフルエンザだった。

昨日から熱っぽかったけれど、検査結果を聞いた瞬間、家の中に漂っていた張り詰めた糸が、ぷつりと切れる音がした。

日常という名の戦場、蚊帳の外の僕

これで家族のうち、僕以外の全員がインフルエンザに倒れたことになる。

長男が幼稚園から持ち帰り、妻がうつり、そして生まれたばかりの次男まで。

家の中は、消毒液の匂いと、子供たちのぐずる声、そして妻の荒い鼻息で充満している。

妻はフラフラになりながらも、母性という本能だけで動いているように見える。自分だって高熱があるはずなのに、次男を抱きかかえ、長男の水分補給を気にかけ、家の中を這うようにして動いている。

「代わるよ」

その一言が、どうしても喉に引っかかって出てこない。

いや、正確には言ったのだ。でも、妻の耳には届いていないのか、あるいは「あなたには無理」と無言で拒絶されているのか。彼女の視線は一度も僕と合わない。

彼女の瞳に映っているのは、愛する子供たちの命だけだ。

そこには、夫である僕の存在はない。

「家族」という単位からこぼれ落ちる感覚

僕は、心療内科でもらった薬を飲み込みながら、リビングの隅で立ち尽くしている。

本来なら、こういう時こそ夫が支えるべきなのだろう。男として、父親として、どっしりと構えていなければならない。

でも、今の僕には、その自信が微塵もない。

2人目が生まれてから、僕たちの間に横たわる「レス」という名の深い溝。

肌を合わせることはおろか、指先が触れることさえ避けているような彼女の拒絶に、僕の心はもうボロボロだ。

「触れ合えない」という事実は、僕にとって「愛されていない」と同義になってしまった。

どれだけオシャレな服を新調しても、どれだけ髪型を整えても、彼女は僕を「一人の男性」として見てくれない。今の僕は、彼女にとって「便利な同居人」か、あるいは「視界の邪魔になる置物」でしかないのではないか。

看病でクタクタになっている彼女を抱きしめて、「大丈夫、僕がいるよ」と言いたい。

でも、今の僕が彼女に触れれば、きっと「汚いものを見るような目」をされるだろう。それが怖くて、僕はただ、自分に買い与えたばかりの少し高い革靴を、玄関で虚しく眺めることしかできない。