茶の木は丈夫な木で、温かみのある白くて可愛い花を付けます。遠慮がちにうつ向き加減に咲く白い花の真ん中の黄色い花粉に鼻を近づけると、仄かな甘い香りがします。なんだかとても心が癒されて、懐かしい気持ちにさせられます。
私は以前からお茶の花が好きでした。どことなく母に似ているからかも知れません。派手な事を好まず素朴で誠実で、いつも周囲に気配りや思いやりを忘れなかった母。優しく温かくそこに母が居るだけで、安心していられました。私達はいつも母の愛に包まれて生きてきました。
丈夫で風邪一つ引かない母だから、このまま ずっとずっと元気で居てくれるものと信じていました。
年を取るに従って母は軽い認知症を患うようになり、その後 脳梗塞で倒れて長い入院生活を余儀無くされました。私達は母に少しでも長生きして欲しくて胃ろうを選択しました。その為3年10ヶ月の間 何一つ口から物を食べる事も出来ず、お腹から胃に栄養を直接チューブで送るという、ただ生かされいるだけの可哀想な日々でした。母はきっと延命措置など望んでいなかった思います。
それでも私達は、母が頑張って生きていてくれる事を有難く思って見守ってきました。
11月6日朝 母は旅立っていきました。93歳でした。
「お母さん あちらにに行ったら 好きな物を思う存分食べてね。そして私達の事 絶対に忘れないでね」

