※中島みゆきさんの『おまえの家』という曲を聞いて、ふと、心に浮かんだ景色を書きました。

このお話にはtgmsの「あの人」が出て来ます。

もしかしたらtg担の方には気分を害される方もいらっしゃるかもしれません。
そうでなくても不快感を与えてしまうかもしれません。

私はもう思い出の中の人、という感じなので、今更彼を傷付けるつもりもありません。

ご理解頂けたら幸いです。

言い訳がましくて申し訳ございません。




思い浮かんだ風景、

そんな感じで…

どうぞよろしくお願いします(ㅅ´³`)




レオとリュウ








〈 masu side 〉





ツアーも始まり、
日々慌ただしく過ぎていく中での
久しぶりの休み。


永遠に降り止まないかと思わせた雨も
ようやく上がり

重い雲の合間から
恥ずかしそうにちらっと片目を覗かせる太陽が
金色の光を外へと漏らした



ふと、

アイツの事を思い出し

アイツの家を
訪ねてみたくなったんだ











二人で暮らしてた部屋を出て
新しい住所を知らせるハガキが届いてから
随分経つ。


顔を見るのも
声を聞くのも
誰かが名前を口にするのも
嫌だったが

何故か
そのハガキを捨てる事はしなかった。


『気が向いたら遊びに来てください。』


空々しく妙に取り繕う
丁寧な言葉に腹を立て
行くもんか!と
あの時は息巻いたが

結局ハガキは捨てられず
サイドボードの引き出しに
投げ捨てる様に仕舞ったのだった。





久しぶりに感じる
胸の鼓動の大きさは
気の所為にして
引き出しを開けた。


ここには
友人の引っ越しや結婚、出産報告などのハガキやデザインの気に入ったショップのDMなどが乱雑に纏めてある


ごっそり全部纏めて取り出して
一枚一枚トランプを切る様に捲っていく


ずっしりあるハガキの束に
逸る気持ちを抑えつつ
『整理しなくちゃな』なんて思いながら
永遠に出てこないかもなんて思いながら

もう探すのをやめようかと思った時

現れた名前


いつもより
勢いの無い文字で書かれたそれを見て
胸が熱くなった、なんて

誰にも言えない想いが
身体中を駆け巡っていた










家は意外と離れていない街だとは知っていた


地味な服を着て
薄いサングラスにマスクを付けて出掛けた。


不便な世の中だが
これだけは便利だと思う。

みんなマスクを付けて歩いているから
目立たない。


久しぶりに電車に乗った。

2駅だけ離れた街に住んでるんだな。



地球の裏側、いや、
宇宙の何処か違う星に行ってしまったみたいに
遠くに感じてたのに

あともう少しで

アイツの家











ちょっと会わなかった友人に会ったみたいに

「…おお!久しぶり!来てくれたの??」

と、軽く迎え入れてくれた。



ホッとしたというより

『…え?そんなモン??』と少しガッカリしたが

しばらく見ない間に
アイツの後ろ姿も
何処か変わったな、なんて事も
思ったりもしていた。



部屋には音楽が流れていた

二人で居た時には
聞かなかった様な
音楽が流れていて

俺の耳に投げ付ける様に
鳴り続ける


何より

ドアを開けるアイツの顔が
違う星の人みたいで、なんだか、

と言いかけたが

『まっすーもね。』と言われそうで

言うのをやめた。



アイツが連れて出た犬も

俺の足元に少しだけくんくんと匂って
不思議そうに俺を見上げ
耳をぴくりと下げた後
そこから離れソファの上に軽やかに飛び乗った



髪型も
前とは違う人に切って貰ってるんだな

それは
それなりに多分
似合ってるんだろうけど

なんだか前の方が、と
言いかけてやめた。





言いたい事も
言い出せず

聞きたい事も
聞けず

二人とも黙って

ただ

アイランドキッチンを挟んで
二人は向かい合って立ち
蒼い火を見つめて
お湯が沸くのを待つ


「何 飲む?」


と、

ぽつりとたずねる顔が
少しだけ昔の顔をしていて

胸が熱くなった












「…あ、そうだ、前にさ、よく聞いてたあのバンドの新しい曲がさ、結構カッコ良くて。
手越聞いたかなー、って。
ああいうのやりたいって言ってたからさ…」


と、
わざとらしい程
明るく話を切り出した時


目の前に立つ
手越の涙を見た



特に悪気も無い
嫌味でも何でもない
普通の会話をしたつもりだった。

でもそれは

後から考えたら
それは
鋭利なナイフの様な
切口だったかもしれない。



ぽつりと


「歌うのはやめたんだ。
やっぱ、食ってけないもんね。」


それきり
手越は
火を見ていた











肌が冷える程の沈黙の中

耳の奥を切り裂く様な
けたたましい音を
部屋中に喚き散らし
お湯が沸いたのをケトルが知らせる


「ああ。」


と気が付いた手越は
少し笑った様な顔をしたが
諦めた様な顔にも見えた



広くて
やけに整頓された部屋に
いつか手越が弾いていたギターを見つけた。


何故か俺は目を背けてしまう。

思わず、かな…


だって、

あの頃はあんなに

ギター、

磨いてなかったよね…



あんな綺麗に…

こんな綺麗に…












「ごめん!手越、俺、うっかり約束あったの思い出したわ。あんまりゆっくりしてらんなかった!」



胸を抑え付ける想いに
耐え切れず

手越の目も見れず

逃げ出す
弱い俺


まだ


「え?…そうなの?…」


無理だった…


ごめん…




そんな弱虫の俺を
少しだけ見て
また手越は
視線を手元に戻す


コーヒーフィルターに落とすお湯が
あの頃と同じ匂いを立てる



「そっか、残念だなぁ…また、
いつでも来て…くださいね。」



ポケットに入れたあの日のハガキの様に

空々しく妙に取り繕う
丁寧な言葉で

でも

あの頃の顔だった。







サングラスをかけて
マスクを付けて

予定の無い約束へと向かう。



雨上がりの西陽が
背中に照り付ける


襟元から覗く首筋が
ジリジリと灼ける様


シルバーのバングルと指輪だけが
何故か冷たい



街に流れる音楽はどれも
今日は湿っぽい




どんなにメジャーな歌も


全部。









※コメ欄閉じますーーーすみません。