赤鬼の信号発信器
科学で全てが説明されても、

大切なものはその輝きを失わない。
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赤鬼の物語 第一章 第十三話


 はじめから読む方は、こちらからどうぞです→「赤鬼の物語 第一章 第一話」


☆☆☆☆☆☆☆☆

 彼は知っていた。まっしぐらにこちらへ突進してくるあの青い鬼すら、もとは人間だったかもしれないこと。破壊すら本意で無いかもしれないこと。しかし、今レオナルドには、亡き友のためになさねばならないことがあった。初めて自分の事を解してくれた、優しい国助のために・・・
 もといこのまま、この鬼を放っておけば被害は拡大する。
 -体内転送装置ドライブアップ。装備の伝送ダウンロード準備を開始。物理媒体を選択。-
 足元に落ちていた、握りやすそうな木の枝を拾った。
 -物理媒体ターゲット確定。伝送ダウンロード開始。-
 木の枝が、燃え盛る炎にも勝る青い光を放ち、瞬く間に太刀に姿を変えた。
 -クイックダウンロードスロットへ登録。登録名=...-
 「御護国助(みまもりのくにすけ)。」
 -登録完了。待機ミッション再開。ターゲット、最大危険因子:青鬼。排除開始。-
 国助、僕を護ってくれ・・・・・・・・・
 どしん、どしん、どしん、
 と、巨体を繰り突進してくる青鬼。レオナルドは刀身が青白く光るその刀を両手に握った。右肩を前に出し、刃を上に向けた刀を胸の左側に構える。そこから体勢を低くし、刀を顔の真横に。レオナルドの視界で、青い刃の切先が青鬼に重なる瞬間、レオナルドは風になる。目にも止まらぬ速さで、青鬼へ跳ぶ。一瞬本当に、彼は消えたかのように。
 特殊合金鋼製の金棒を後ろに引き、レオナルドに叩き付けようとした青鬼の胴体を、一筋の閃光が瞬き通り過ぎる。そして青鬼の背後に、レオナルドが現れる。数メートル、勢いを殺しきれずに地面を足の裏で滑走した。
 青鬼が次の一歩を踏み出そうとした時には、上半身は頭から地面に落ちていた。 下半身も、バランスを崩して転ぶ。
 ごすん
 といって金棒が地面を叩く。”御護国助”の一閃によって真っ二つに両断されてしまった青鬼は、体内で炭化水素化合物を生成していたようだった。すぐにそれが引火し、爆発を起こした。一瞬赤い火と、黒々しい黒煙が盛り上がる。なんとも言いがたい不快な臭いと、
 んもがぁぁぁぁぁ!
 という叫びが辺りを包む。

 太刀は木の枝に戻っていた。レオナルドは振り向いて
 「必ず戻る。」
 と、毛むくじゃらにつぶやいた。
 -最大危険因子の排除を完了。最優先救出対象を捜索。-

赤鬼の物語 第一章 第十二話


 はじめから読む方は、こちらからどうぞです→「赤鬼の物語 第一章 第一話」


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 『そうだ。きっと以前は人間だったんだ。おぬしの心にあった暗い部屋の記憶・・・その記憶は拙者が熊にされたあの部屋と同じ場所の記憶だ。青い鬼の心からも、人の心のかけらが残っていた。暗い部屋の記憶も残っていた。われらは、同じ場所で同じ者に何かされたんだ。』
 国助に、自分と似たものを感じたのは、それで?・・・空の果て、冷たい場所、恐ろしい暗い部屋。
 『おぬしが夜空を見上げると、寂しい気持ちになるのはきっとそのせいだ。』
 僕が人間だったかもしれない・・・こんな鬼の姿は本当の姿ではないのかもしれない。
 『鬼であろうが、人であろうが、関係ないさ。レオナルド。言っただろう、お前とあの青鬼は違う。あの憎悪に満ちた心。壊すことしか知らない心。まさに鬼そのものだ。でもお前は違うだろう。優しい鬼よ。』
 僕は、やさしい、鬼?
 『自分の姿かたちに惑わされるな。他人の視線や言葉など、おぬしを何も知らない者の戯言だ。
 拙者はおぬしが人間でも鬼でも良い。ただおぬしの、優しさが好きだ。』
 僕は・・・人になればいいのか?鬼になれば良いのか?
 『おぬしが決めるんだ。何になるか、何をすべきかを。』
  
 ほとんど止まっていた周囲の時間が、だんだんと動き始めていた。
 
 『空の果てを目指すのもいい、人との溝を埋めるのもいいだろう。おぬしがなりたい者になるんだ。』
 何に、なりたいか・・・
 『もうすぐ、刻だ。熊の体ともお別れだ。』
 国助!
 『最期におぬしに逢えて良かった。レオナルド。おぬしは息子によく似ている・・・』
 だめだ!国助!

 レオナルドは、今知りうる限りでたった一人の、自分を認めてくれた者を失いたくない、その一心だった。

 『奈子を・・・頼む・・・』
 ・・・・・・・・・・・・

 はためく炎。はぜる火の粉。燃える村。時間は完全に動き出していた。
 助けなければ。助けなければ。地面に横たわったままのレオナルドはそれだけを考えた。鬼の力、知らない言葉、早すぎる思考。何でもいい!奈子を助けなければ!
 -時空穴転送回線を開設。専用回線安定化。体内制御装置、緊急稼動。-
 青白い粒子が、レオナルドの表面を覆い始める。 赤いはずのレオナルドの肌が、青白く輝き始める。
 -時空穴転送回線より高密度分子を召喚。破損組織再生開始。-
 レオナルドを中心に放射状に空気が流れる。炎も、今は亡き国助の体毛も、青白い光を中心に外側へ、強くなびく。レオナルドはしっかりと地面を両足で捉えるように、立ち上がった。
 左腹部、左腕部の痛みは無くなっていた。それより全身の筋肉が、熱を持ったように熱かった。
 -物理身体の再生完了。脳内情報再構築開始。単位系・・・完了。複合言語系・・・完了。戦術情報系・・・・・・-
 レオナルドは、自分の中に新たな、そして多くの”力”が目覚めるのを感じた。
 -レオナルド、全ファイルリロード・適応完了。コンプリートタイム、5秒。-
 青白い粒子と風が止む。
 レオナルドの体からあふれるエネルギーが、空中で電流となり放電している。
 ぱちり、ぱちち
 と、放電による光が時折はぜる。
 頭の中に、村の地図と各家屋の詳細情報、奈子がいると推測される点が示される。可能性の高い順に、点が色分けされている。地図を把握すると同時に、正面から青いものが向かってくるのに気づいた。
 そうか。時間がほとんど止まっていたから、今まで忘れかけていた。あいつはずっと自分を追いかけていたのだ。・・・青鬼が、こちらに突進してくる。距離350メートル。
 「そこをどけ。」
 覚悟を決め、レオナルドはつぶやく。

Q&A

A.

「人生に答えは無い」というのが答えのようです。

しかし人生に答えは”無い”ので、

「人生に答えは無い」という答えも、

答えではないかもしれません。

でも本当に答えが無いのなら、

やはり答えは無いというのが答えになりそうです。


ご飯を食べるためにしているはずの仕事が、

ご飯を食べる暇が無いくらい忙しいので、

ご飯を十分食べていない私たちには、一生分かりません。
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