私の名は、ダージリン。

エクシード・マウンテンの麓一帯に広がるサザーラント平野の一角、
ストーニア国寄りの小さな村シェファードに、騎士(ナイト)の3娚として、生を受けた。
パール・クオリテリカ山と言えば、千目戦争(サザン・アイズ・ウォー)や2巨頭盛衰記にも出てくる、
バール山の合戦において、イズリール少将が、騎兵四万五千で、
敵方ファン・メイ・シェンの軍勢十万の大軍を、「蝸牛の計」で、一夜にして、打ち破った有名な戦場だ。

この付近は、高天ヶ原朝廷以来1,000年に渡って、北国要衝の地として、
何世代にも戦場になる古くからの軍事上の起点だった。

自然は、富み、山河は、美しく、北国特有の景観を、現在に、残している。
300年ほど前には、貴族のパール・バティが、華やかな都から、赴任してきて、
厳しい風土に対峙しながらも、その風光明媚な土地柄に、絆されて、数々の詩を残している。
その彼の詩の大半は、わずか5年間の赴任中の詩であったという。

私の生まれたのは、そんな歴史的にも、景勝地ともいえる地であった。
だれでも、そうであろうが、故郷というのは、ホントウに、思い出深いものであろう。

少年時代に、駆け回った野山やその頃の友人、知人たちに会える欠け涯のない地だ。
いつも暖かく迎えてくれる、幽冥らしさの残る人々の伝統を、携えた地でもある。

この物語は、辺境の地でもなく、都会でも、ない、そんな中継地点をスタートラインとする、
ある英雄の従者の物語である。