デリバリーサービス。

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思いついただけの文章たち。

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「おつかれー」

扉を開けるとすでに到着していた先頭組が
にこやかに迎え入れてくれる。
各々がもうすでに手の付けられたグラスを片手に。

「じゃあ、まず生もらおっかな」



メニューも見ずに注文したアタシのアルコールは
数分と立たずに運ばれてきた。

間髪入れずに店長の乾杯のコールが響いて
ガチャガチャとグラスをぶつけあう音がする。

まだいくつか余裕のある席数。

アタシの隣にぽっかり開いたそこにそわそわしながら
水滴のついたグラスに口をつける。

仕事終わりのそれは格別ってやつで、
身体に染み渡っていくのがわかるようで。

「おそくなりやしたーっ」

一杯を飲み終えるかどうかの所で勢い良く開かれた扉。
はっと顔を上げる。もう、なんか、反射的すぎて恥ずかしいくらい。

「スダちゃんコッチーっ」

先輩が自分の隣を手で示しながら、カレを呼ぶ。
短いスカートの裾から覗く長い脚に、アタシのほうがどきどきする。
きっとそういう意味じゃなくて、あんまり良くない方のどきどき。

彼の裾を掴んで制止したい。
先輩の自由奔放さにはいつも感心するけれど
今日ばかりはうらやむというよりかは妬みに近い感じ。

「あー、はいはい」

‥あ。




アタシの意中のスダさんは頷きながら
しかしつま先はこちらを向いていて
吸い込まれるようにアタシの隣に腰を下ろす。


え、‥ちょっと。…そんなのずるい。


動揺を悟られるのが嫌で手元にあったメニューを
素早くスダさんに手渡す。
スダさんはあまりメニューを見た様子もなく生、と短く告げた。

再びドコかで見たような乾杯がなされると
何事も無かったかのように、さもはじめからみんなそこに居たかのように
打ち上げは再開されていた。

先輩の顔はすぐには見ることができなかったけれど。




「今日あんまり飲んでなくない?」

帰り道、あたしと須田さんは方向が一緒なので2人で並んで歩いていた。
それなりには飲んでいたし、聞かれる節が見つからなかった。

「え、飲んでましたよ?それなりに」

アルコールの力を借りていつもより少し饒舌なアタシは
さっきまでの緊張とか嘘みたいに口が開く。
自分でも驚くほどに、自然に。

「言ってたほど飲んでねかったべ。つか、眠そうたけど」

クスクスと小さく肩を揺らして笑う彼を見て
以前どちらが強いのか勝負しようって話をしてたのを思い出した。
その時のアタシはこんなにこの人のこと好きになるなんて
想像もしてなかったのに。こんなの予定外過ぎる。




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