「潰瘍性大腸炎・経験談」
折々に自分の病気について書いていますと
質問も頂くようになります。
私は医師ではありませんので治療方法について
どうこう言う立場にはありませんが体験について
お伝えすることは出来ると思います。
私の体にはこの図の小腸以外の「全ての腸」がありません。
既に最後の大きなOPから約10年が経過しようとしています。
徒に恐れることなく、病気と共に。
OPをして下さった名医は兵庫医大病院 池内浩基教授
(最後のOPを池内先生にして頂くのに半年待ちました)
池内先生に2回、それ以前に2回、合計4回OPしています。
これは私の経験でこの病気の方が私と同じ経緯をたどる訳ではありません。

以下、過去の私のブログの記事を転載致します。
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私はかなり長い期間(10年以上)、寛解期と再燃を繰り返してきました。
その後、内科的治療は全てやりました。
・・・潰瘍性大腸炎の内科治療は絶食や食事療法で大腸を安静にして、5ASA製剤かステロイド剤を中心に炎症を抑える治療が基本です。 

5-ASA製剤(サラゾピリン・ペンタサ)
副腎皮質ステロイド剤(プレドニン・ステロネマ・パルス療法)
白血球(顆粒球)除去療法(LCAP・GCAP)
免疫抑制剤(イムラン・ロイケリン・シクロスポリン)
漢方薬(紫苓湯・大建中湯・紫胡桂枝湯・広島観音クリニック)
ATM療法(抗菌剤多剤併用療法)

しかし、残念ながら

1.下痢 便回数が1日6回以上  
 2.あきらかな血便  
 3.熱が37.5℃以上  
 4.脈拍が1分間に90回以上  
 5.ヘモグロビンが10g/dl以下  
 6.血液沈降速度BSRが30mm/hr以上
このうち1・2があって、3~6の項目のうち二つが該当すれば重症。1~6に一つも該当しなければ軽症。重症と軽症の間が中等症。重症より悪いと劇症です。

この状態が改善せず穿孔が起こり(強い炎症のために腸に穴が開く)手術をなんども繰り返す結果となりました。

また腸管以外にも多くの合併症が起こりました。
アフタ性口内炎:口内炎の事です。 
虹彩炎(ぶどう膜炎):黒目に炎症が出る。最悪の場合は失明。 
壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう):皮膚潰瘍。皮膚が脱落して膿が溜まり、穴があく。
結節性紅斑(けっせつせいこうはん):赤い斑点が下肢にでる。関節痛や発熱も。
関節痛:関節に炎症が出る。ステロイドの副作用の場合も。 
その他:小水疱皮疹、膵炎、肝機能障害(脂肪肝・胆管周囲炎・肝硬変)、血栓性静脈炎、側頭動脈炎、脳血栓、肺血栓、脳梗塞、甲状腺腫瘍、尿路結石など。
また、治療薬のプレドニン(プレドニゾロン)の長期、大量の使用により、精神障害も起こり何年も苦しむことになりました。
(合併症においては現在も改善されていない)


潰瘍性大腸炎の内科治療は市や区の総合病院程度でも十分に診察可能ですが、なるべく潰瘍性大腸炎の診察経験の豊富な医師にかかる事が重要です。基本的な治療はサラゾピリン・ペンタサ・ステロイドで行うのですが、これらはどこの病院でも処方可能です。白血球除去療法は人工透析ができる病院であれば技術的には治療可能です。ATM療法などの治験中の治療は一部の病院でしかできません。
潰瘍性大腸炎の外科手術は非常に難易度が高いので、命に関わる緊急手術以外は専門外科病院(三重大病院・兵庫医大病院・横浜市民病院)で手術を受けるのが良いでしょう

私は病気が悪化しても外科手術を受けるタイミングが悪く大変苦しみました。
しかし、施術頂いたDrの腕が素晴らしく、術後については症状は大幅に改善されています。
体力がかなり低下してOPを受けたため、
直腸粘膜切除・回腸嚢肛門吻合術(IAA)
このOPを三期(手術を三度に分けて受ける、結果OPだけでも10ヶ月以上要する)で受けました。
現在は状態の良い方はほぼ一期で終えられているようです。

この病気の方の全ての方に手術が必要だとは思いませんし、お医者様の意見に従うのが大切です。

しかし、手術を恐れるあまり時期を逃して私のような余分な苦しみを味わうことは避けていただきたいと思います。

以下、私の手術をしてくださった兵庫医大病院 池内浩基先生の文章です。
ご参考になさってください。



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潰瘍性大腸炎手術国内初の1,000症例達成

外科教授 池内浩基Dr

潰瘍性大腸炎(以下UC)症例は欧米に比べて本邦では少ない疾患でした。しかし、本邦での患者数は右肩上がりの
増加傾向を示し、すでに8万人を超えたと推定されています。UCの治療の原則はまず内科的治療であり、薬物療法と
2000年に保険適応となった血球成分除去療法が行われます。血球成分除去療法は故下山孝教授のグループが中心となり
開発された治療法です。しかし、多くの症例は再燃緩解を繰り返し、最終的に手術が必要になる症例が多く存在するの
も事実です。UCの外科的治療は大腸全摘術ですが、肛門を温存しつつ大腸を全摘する、大腸全摘、J型回腸嚢肛門吻合
術(以下IPAA)は宇都宮譲二名誉教授が考案された世界の標準術式であり、当科ではこのIPAAの術式改良に山村武
平病院長、現三重大学楠正人教授を中心として、取り組んできました。
当初は3期分割手術(3回に分けて手術する方法)が主流であり、そのため治療期間は合計10ヶ月前後必要でしたが、
現在では症例によっては1期的な手術(入院期間約3週間のみ)が可能な症例も多くなってきました。術式の改良に伴
い、手術時間の短縮、在院日数の短縮が可能となり図1に示したように症例数は増加し、昨年は年間の手術症例数が99
例となっています。
遠方からの紹介患者さんも多く、図2に示すように東日本の一部の県を除くほぼ全国からの患者さんが紹介されてい
ます。当院では現在、消化器内科も松本譽之教授を中心に、炎症性腸疾患(以下IBD)の専門医が多く在籍し、消化器
外科にも我々のIBDグループがあります。内科も外科もIBDの専門医のいる病院は全国的にも非常に珍しく、IBDの駆
け込み寺的な役割を果たしてきました。現在、IBDセンター化構想がありますが、内科も外科も組織横断的に専門医の
いるIBDセンターとして更なる飛躍ができればと考えています。
(関連新聞記事を巻末に掲載)
図1 潰瘍性大腸炎手術症例の年次推移
図2 兵庫医科大学病院への潰瘍性大腸炎手術
紹介患者の分布
・兵庫医科大学病院TOPICS・
学校法人兵庫医科大学広報No.192(3月発行)
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