陸奥のしのぶもぢずりたれゆえに 乱れそめにしわれならなくに


河原左大臣




わびぬれば今はたおなじ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ


元良親王






今来むといひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな


素性法師






名にし負はば逢う坂山のさねかずら 人に知られで来るよしもがな


三条右大臣




誰をかも知る人にせむ高砂の 松も昔の友ならなくに


 


藤原興風




人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香に匂ひける


紀貫之




浅茅生の小野の篠原忍ぶれど あまりてなどか人の恋しき


参議等




忍ぶれど色に出でにけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで


 


平兼盛




恋すてふわが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか


壬生忠見


 


逢ひ見てののちの心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり


権中納言敦忠


 






逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし


中納言朝忠




かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを


 


藤原実方朝臣


 




嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は いかに久しきものとかは知る


右大将道綱母






今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならでいふよしもがな


 


左京大夫道雅