ボランティア部。
私は中学一年の頃、ボランティア部に入っていた。
活動は、手話を勉強したり施設でお祭りのお手伝いをしたり。
中でも思い出深い記憶があるのは、障がい者施設でお祭りのお手伝いをした時のことだ。
祭り後に、施設の中庭で私達ボランティア部が集まり、介護士さんの話を聞いていた。
介護士の方は当時40代ぐらいの男性2人。
何か真剣なおももちで、私達にいろいろ教えてくれていた。
その話の最中ずっと、介護士の方の子どもの、小学校低学年くらいの小さな女の子がずっとお父さんにベタベタ甘えていた。
「ねぇ~おとうさ~ん。つまんな~い。」と言いながら、お父さんの肩に手を置いたりしているが、そのお父さんは私達に何かを語ることに熱を帯びなかなか終わらない。
だから子どももしつこく甘えていた。
そうこうしているうちに、その子どもは、「おとーさーん。」と言いながら地面に落ちている枯れ枝で、お父さんのすね毛をなぞり始め。
お父さんは「これ、やめなさい。」と言い、娘は仕方なく枯れ枝ですね毛をなぞることをやめる。
しかし娘の訴えは続く。
「ねぇ~おとうさ~ん!」と、お父さんのかぶっていたツバ付きの帽子を思いっきり外した。
「!?」
私達は思わず吹き出しそうになる口を必死にふさぐ。
必死に笑いをこらえる。
すね毛をなぞっていたあたりから、笑いをこらえていたためもうこらえることは無理で大爆笑してしまった。
帽子を取ってみたら、頭がハゲていたのだ。
まさかハゲているなんて思いもしなかったし、中学生という若さもありハゲ頭に敏感に反応してしまったのだった。
当の本人、介護士の男性はなぜ私達が大爆笑しているのか全くわからない様子で、「どうしたの?」と言うのだ。
それがまた笑いを誘う。
彼が何を話していたのかひとつも記憶にないが、覚えているのは娘と父親のコミュニケーションとあの日の夕焼けの色だけなのであった。